デジタル教科書を巡って~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

(現在のデジタル教科書の議論は、前時代のレガシーで的外れです)

 

2022/06/22の読売新聞に、「デジタル教科書使った授業、中学生ら4割で『目の疲れ』…『昼間に眠く感じる』も4割」と出ていました。

 

調べると、文部科学省「学習者用デジタル教科書普及促進事業」によりすべての公立小中学校に1~2教科の「学習者用デジタル教科書+教材」が配備されているようです。

 

ところで、「目の疲れ」以前に、現在のデジタル教科書を調べてみたところ、欠陥商品だと思いました。

 

文部科学省のHPには、「紙の教科書と同一内容をデジタル化」と意味不明なことが書かれています。

 

こうしてしまったら、デジタル化のメリットは出ません。

 

デジタル教科書のメリットは、インタラクティブであること、生徒1人1人の理解度をリアルタイムで、教員と生徒が確認できることです。

 

Project Jupyter、カーン・アカデミー、Moodle等を使ったことのある人であれば、このメリットは、直ぐに理解できるはずです。

 

例えば、算数の教科書に、計算問題がのっていれば、生徒は、デジタル教科書に答えを書き込んで、計算結果を教科書に、採点してもらうことができます。教師は、全生徒が、計算結果を書き込む時間、間違えた生徒を個別に確認でき、講義の速度を調整できます。計算結果を間違えた生徒は、再度、数字の違う問題を解きなおすことができます。これはMoodleであれば、乱数発生で、問題作成機能がついていますが、電子教科書に実装することは容易ですし、Moodleのように、ネットワークを通じて、問題を電子教科書に送信することもできます。生徒は、間違えた問題を重点的に復習できます。教科書での問題タイプ別の正答率のデータを用いてワークブックの問題を、生徒1人1人に合わせて、自動作成することもできます。こうすれば、優しすぎず、難しすぎない練習問題を解くことができます。なので、こうしたインタラクティブな機能は、当然実装されていると考えました。

 

試しに、東京書籍のHPを見て、電子教科書の内容を箇条書きにメモすると以下です。



(1)一括管理

(2)拡大

(3)リンク

(4)ペンツールでメモ

(5)文字の大きさを変える

(6)行間、配色を変える

(7)読み上げ機能(機械音声のみ)自然音声は教材扱いで除外

(8)ふりがな、分かち書き

(9)デジタルコンテンツ(動画)



ここには、インタラクティブな機能はありません。

 

電子教科書の検討員会のメンバーは、Project Jupyter、カーン・アカデミー、Moodle等を使ったことがないように思われます。

 

電子教科書の作成には、当然、大手ベンダーが関与していると思われます。大手ベンダーは、顧客を囲い込む「ベンダーロックイン」しか、考えていないのかも知れません。実際に、インタラクティブなデジタル教科書になると、米国のIT企業に勝てないので、避けている可能性もあります。

 

最近、政府は、米国のIT企業は、日本企業と合弁でなければ、参入を認めないような発言をしていますので、日本の大手ベンダーには、競争力がないことを自覚しているのかもしれません。

 

データサイエンティストは、理想的な電子教科書は、状況によって異なると考えます。画一的な教科書を作れば、必ず失敗します。

 

電子教科書の検討員会は、事前に電子教科書のあり方を検討してはいけません。これは、データサイエンスでは、不可能問題を解くことになるからです。

 

電子教科書は、自由に裁量して構わないが、電子教科書を使ったアウトカムズについて、電子教科書の検討員会が、評価して、提言する方法が、データサイエンスでは、正しいアプローチになります。この部分は、自然科学では、エビデンスに基づいた検証はできるが、検証なしに、正解に達することができないことに対応しています。

 

こう書くと、信じられない人も多いと思いますが、データサイエンスは、今までの慣習で行われてきた間違った方法を否定します。今までの慣習で行われてきた方法は、統計学上の誤りを抱えているので、それを続けても、正解に達することはありません。

 

それは、日本の技術力をおとし、経済を潰す方法でもあります。



引用文献



デジタル教科書使った授業、中学生ら4割で「目の疲れ」…「昼間に眠く感じる」も4割 2022/06/22 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/77e938082bbba7c4fc34f7d53ab7604542aa713f

 

学習者用デジタル教科書について 文部科学省

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407731.htm

 

東京書籍のデジタル教科書・教材ラインナップ 

https://www.tokyo-shoseki.co.jp/ict/dkyokasho_el/#modal