ベイズ統計と宮内庁長官発言

宮内庁の西村長官が「天皇陛下がオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大に繋がらないかご懸念されていると拝察する」と述べたことが波紋を呼んでいます。

しかし、統計学的にみて、無茶苦茶な我田引水の発言が、あちらこちらで、出され、マスコミも、無批判で、反論を報道しています。

いったい、この人たちには、統計学の科学的知識がまったくないのでしょうか。

ベイズ統計学で今回の状況を記載すれば、次になります。


  • 事前確率

天皇陛下が、オリンピックの開催に賛成している確率は、0.5である 。(注1)

  • データ(情報)の追加

宮内庁の西村長官が「天皇陛下がオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大に繋がらないかご懸念されていると拝察する」と述べたこと。

  • 事後確率

天皇陛下が、オリンピックの開催に賛成している確率は、0.5より小さい。


つまり、宮内庁の西村長官の発言によって、新たな追加情報が生じて、ベイズ更新がなされて、天皇陛下が、オリンピックの開催に賛成している確率が下がった状態になっています。

やっきになって、「長官本人の見解」と言っているのは、ベイス更新を認めているわけで、全く反論にはなりません。

現状では、開催に賛成している確率は50%を切っていることになります。

簡単に言えば、今後、天皇陛下が、オリンピックの開催に賛成しているという根拠のある追加情報が得られて、ベイズ更新が再度なされなければ、開催に賛成している事後確率に変化はありません。

ここまで、ひどいと、日本は、データサイエンスの後進国です。

注1:

事前情報がない場合には、0.5が妥当です。しかし、ベイズ統計では、事前確率は主観確率なので、0.5に各段の意味はありません。0.3でも、0.7でも、かまいません。問題は、更新によって、生じた確率の変化です。