お断り:以下の原稿は、書いた後で、1週間くらい、お蔵入りにしていた原稿です。
「結局、個別競技も政治判断で、強行されて、(回避対策をしていないので、ほぼ、確実に)事故が起これば、保健所に投げるつもりと思われます」と書いたのですが、ウガンダ選手団で、既に、その状態になっていますので、思い直して掲載することにします。
22日の日刊スポーツの記事の要点は以下で、19日入国に対して、濃厚接触者の判断は3日後です。丸川珠代五輪相は、早期の濃厚接触者認定は不要と言ったようです。現時点で、選手の数は少ないですが、この時点で混乱しています。つまり、ワクチン接種と同じようプロトコルを明確に決めて、準備していないため、混乱しています。しかし、今は、オーバーロードでも、大惨事ではありません。
事故の発生確率は、選手数と観客数に伴い増えるので、事故が起こってから対応する現在のプロトコルでは、今後、確実にオーバーロードになります。
以下は、日刊スポーツの引用です。
6月19日に、成田空港に到着したウガンダの選手団の陰性だった残りの8人は、濃厚接触者にあたるか判断されないまま、事前合宿を行う大阪・泉佐野市に専用バスで移動したが、市は当面の練習自粛を要請していた。泉佐野保健所が、22日に、濃厚接触者であることが特定された。
丸川珠代五輪相(50)が22日、閣議後の会見で、来日した東京五輪のウガンダ代表選手団から新型コロナウイルス陽性者が1人出たが、空港で濃厚接触者認定することなく、残りの8人が事前キャンプ地に入ったことについて、問題ないとの認識を示した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c1a08dc50f5fef0cda3b22f2a7b17d6797bbd353?tokyo2020
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丸川五輪相、陽性者出たウガンダ選手団への対応に問題なしとの認識 日刊スポーツ 2021/06/22
https://news.yahoo.co.jp/articles/04fe92f6d95c4d4340d13765c3df1187f2548faf?tokyo2020
ここから、本文です。
ワクチン接種で、特に、大規模会場では、接種枠が埋まらないトラブルが続いています。接種券があれば、接種したい人がいるわけですから、これは、接種券の配布の失敗でもあります。
ここでのロジスティックは、ワクチン、医療従事者、患者(被接種者)、接種券の配布と使用だけですから、非常に簡単です。また、患者が、発熱した場合の対応は、延期すれば良いだけなので、これも単純です。とはいえ、問診用紙は2枚しか郵送されていませんので、発熱時の扱いは、不明です。おそらく、接種予定日に会場にいって、発熱がある場合には、摂取が延期になり、再度、予約が必要になり、その時に、追加の問診用紙が配布されると思われます。予約番号で取った予約は、キャンセル扱いになりもう一度予約できるようになると思われますが、このような、例外処理に関する情報は、郵送された予約券の説明では、全く提供されていません。
また、ワクチン接種の予約システムは、前近代的なものでした。被接種者は、「都合の良い時間を設定し、次に、対応できる医療機関のうちから、距離の近いものを選択する」ことが、標準的なプロトコルです。ところが、予約システムは、医療機関を選ぶと、その利用期間の接種可能なカレンダーが表示され、そのカレンダーの中で予約します。例えば、19日の14時から15時の接種人数が6人なら、医療機関で予約すると6人が5人に変更されます。そして、0人の医療機関以外で、予約するシステムです。つまり、一覧、集計表示機能はなく、ひたすら順番に医療機関毎のデータにあたる必要があります。
この前近代的な、予約システムは、通常の電話予約システムを、そのままIT化したものです。高齢者の就業率は、低いですが、中年者は働いていますので、マッチングシステムの欠陥の問題が、これから多発するでしょう。
大規模会場の接種枠が埋まらない問題は、接種希望者と接種者枠のマッチングシステムが機能していないことを意味します。大規模接種会場が埋められないことは、観測値です。観測値から、問題の原因を分析して排除していかなければ、問題のある事態は、改善しません。
「問診票を消えるボールペンで書いているのでやめて欲しい」という記事もありました。問診票は、スキャンして保存すれば良いだけです。紙で保存しても、検索することは容易ではありません。デジタル化するのであれば、スキャンして、イメージデータを文字コードに変換する必要があります。問診票を紙で書く理由もわかりません。デジタル化されていないデータは、死蔵データになってしまいます。
接種券は郵送、接種証明も手書きです。デジタル接種証明はこれから作るというありえないロードマップです。接種時に、デジタルデータが作られていたのでしょうか。電子接種券であれば、枠が空いていれば、1分以内に、接種券を自動発送できます。
マイナンバーには、メールアドレスが付いていませんので、利用者がアクセスしなければ、国から、個別宛の情報発信もできません。接種ミスがあった場合も、電話でしか連絡ができません。接種データがデジタル化されていても、郵送で、連絡が来るはずです。
さて、以上は、ワクチン接種のロジスティック問題でした。
次に、このロジスティックが、オリンピックでも適用されると考えます。
当たり前ですが、オリンピックの方が、処理するデータの多様性が圧倒的に、複雑です。言葉の問題もあり、トラブルも、多発するはずです。また、ワクチン接種のように、延期できませんので、「中止するか、強行するか」の判断を迫られます。これに関する最低限のルールを事前に決めないことは、クレージーですが、問題は、全て、先送りする現状を見ていると、希望的な予測はしにくいです。ワクチンの接種という単純な問題をクリアできない現状の処理能力で、オリンピックになれば、完全にオーバーロードになります。
新聞によれば、法律を改正して、コロナウイルスのような場合には、保健所に権限を集中させる法案を作っているそうです。これを、オリンピックに間に合わせるわけではないと思いますが、考え方は、今後も、保健所中心でしょう。
しかし、保健所は、現状でも、オーバーワークです。しかも、紙とファックスのシステムでは、実質、状況判断できる情報がリアルタイムで把握できません。つまり、IT化の問題は、「予算をつける」、「法律を作る」という方法論では、解決できません。おそらく、「規制を緩和する」、「情報を公開する」、「プライバシーに関する効果のあるプロトコルを作る」ことが、効果的な問題解決です。ところが、これをすると、許認可の利権が、消滅してしまうので進みません。オリンピックも巨大な利権ですから、現状では、ロジスティックの改善より、利権が優先していると思われます。つまり、事故を回避する努力をしていませんので、事故が多発することは避けられないと思われます。
保健所優先と言いながら、オリンピックを「中止するか、強行するか」の判断は、医療関係者にゆだねられているわけではありません。政治判断と言っていますが、理解できる説明はないので、実体は利権判断なんだろうと思っている人が大半でしょう。オリンピック全体を政治判断で開催しておいて、個別の競技を「中止するか、強行するか」の判断だけを保健所ができるとは思えません。結局、個別競技も政治判断で、強行されて、(回避対策を徹底していないので、ほぼ、確実に)事故が起これば、保健所に投げるつもりと思われます。こうなるとどこかの途上国と同じ状況が発生します。日本は、既に、途上国ですから、心配する方がどうかしていると言われれば、それまでですが。
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