コロナ対策と集団思考の罠

緊急事態宣言が、蔓延防止等重点措置に変わりましたが、実のところ、要請内容のなにが違うのかよくわかりません。法的な強制力は、緊急事態宣言の方が強いとか、対象地域を、国が決めるか、都道府県知事か決めるかは、コロナウイルスには、関係しません。対象エリアが同じ、であれば、どちらが決めようが、ウイルス対策としては同じ効果しかありません。飲食店の営業や、最大グループの許可人数も頻繁に変えるで、違いは、ほとんど理解できなくなっています。

平野美紀氏によると、飲食店のコロナ対策は、オーストラリアでは、次のようになっています。


カフェなどの店舗は、入店時にQRコードを読み取って、入店者情報と日時を記録、当局のデータベースに送信する仕組みも運用している。

豪NSW州のお店のコロナ対策。入口に店舗面積に応じた最大来客数(一度に何人入店何か)を掲示。入店前にQRコードで来店者情報を入力。退店時にボタンを押すとその人が何分その店に滞在したか記録し、感染者が出た際の経路追跡に利用。州民でアプリを入れていればその都度入力不要。どの州も同じような仕組み。

(感染者がでれば;筆者注)記録に残っている「接触者」となる人には、当局から連絡がいっているはずだ。


さて、この記事を読んで、考えてしまいました。

日本の政府は、COCOAでもつまずいていて、とても、このレベルのアプリを作ることはできません。

それには、いろいろな意見があるとは思います。

しかし、QRコードのアプリを作ること自体は、決して絶望的に難しいわけではありません。

COCOAは3億円はらっても、ピンハネしたので、末端にいったお金は1億円くらいと思われます。

QRコードのアプリで儲ける必要がなく、ボランティアに実費を払うのであれば、1億円くらいあれば、かなり動けるはずです。1億円は、普通の個人にとっては大金ですが、お年玉に1億円配布するかたもいますし、クラウドファンディングで寄付を募れば、不可能という金額ではありません。

つまり、政府に頼らず、ボランティアが、QRコードのアプリを作ることは可能であったはずです。Go Toイートや、Go Toトラベルに間に合うように、QRコードのアプリを作っていれば、感染の拡大はかなり、抑えられたと思います。また、QRコードのアプリは、レストラン、ホテル、デパートなどで共通で使えます。1日も早く、営業再開ができれば、こうした業種の方は寄付をしても、元がとれたはずです。

もちろん、こうした業界の方が、QRコードのアプリの作りかたに詳しい訳ではありません。しかし、情報関連の専門家や専門学会もあります。こうしたところから、QRコードのアプリをつくりませんかという提案があってもよかったと思われます。

つまり、こうして考えると、政府任せにせずに、QRコードのアプリを作る行動を起こしましょうという提案が(筆者も含めて、)だれも、できなかった理由は謎です。

もちろん、QRコードアプリには、個人情報が含まれます。しかし、個人情報は次の点で、取り扱いが可能です。

第1に、QRコードアプリを使いたくない人は、その店やホテルで、消費行動をしないという選択の自由があります。

第2に、一企業では難しくとも、民間でも、非営利団体を作って、セキュリティは確保できます。

結局、どうして、QRコードアプリを作りましょうという呼びかけがおこらなかったは謎であると同時に、意思決定上の欠陥問題といえそうです。

謎(原因)は、すぐに特定できる訳ではありませんが、意思決定上の欠陥問題を説明できる仮説の一つは、集団思考(グループシンク)による欠陥です。集団思考とは、集団で考えると意思決定が間違っても、それを訂正するメカニズムが機能しない状態を指します。簡単に、言えば意思決定の暴走状態に相当します。

Wikiによれば、集団思考には、次のような兆候が見られるそうです。


欠陥のある決定の兆候

集団思考の兆候を示す上記の3類型のうち、いずれかまたは全てに当てはまると、集団内の合意形成の努力の結果として、欠陥のある決定を下すことが多い。

その兆候とは、

  1. 代替案を充分に精査しない

  2. 目標を充分に精査しない

  3. 採用しようとしている選択肢の危険性を検討しない

  4. いったん否定された代替案は再検討しない

  5. 情報をよく探さない

  6. 手元にある情報の取捨選択に偏向がある

  7. 非常事態に対応する計画を策定できない

といった点である。


これを見ると、QRコードアプリの謎は、集団思考にとらわれて、代替案を考えられなくなっていたためと思われます。

しかも、この集団思考が、日本中の組織に蔓延していたと考えないと、謎は説明できません。

これは、ある意味では、コロナ以上に、恐ろしい状態かもしれません。

また、日本中が、集団思考状態であれば、オリンピックの開催決定も、集団思考である可能性も高くなります。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%86%E5%9B%A3%E6%80%9D%E8%80%83

  • オーストラリアが世界的コロナ禍でも国際スポーツ大会を次々と開催できるのはなぜか?World Voice 2021/05/08 平野美紀

https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/hirano/2021/05/post-18.php

 

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