ワクチン接種データの信頼性(VRSとLEBER)

政府は、ワクチンの接種率を公開しました。しかし、政府は、ワクチンの接種者数を把握しているとは、思えません。というか、ワクチンの接種を開始する前に、接種者数を把握するつもりがあったとは思えません。

2021/07/08のテレビ大阪によれば、次のようになっています。


新型コロナウイルスワクチンの供給量に対する都道府県別の接種率は1位が宮崎県で67.8%、最下位は大阪府で、45.5%にとどまっていることが内閣府のまとめで分かりました。8日、最下位の発表を受け記者団からの質問に対し、大阪市の松井市長は… 「(大阪市)は5月末から7月3日までの個別接種の数を(VRSに)打ち込んでいない」 と個別接種の数は含まれていないと、反論しました。


このシステムについては、2021/06/04のNHKが次のように伝えています。


「VRS」と呼ばれるこのシステムは接種券に印刷された18桁の数字を専用のタブレット端末で読み取ると、誰が、いつ、どこでどのワクチンを接種したかその場で登録できます。

国は自治体や医療機関に対し専用端末の配布を進めていて、接種の状況を全国規模で素早く把握できるとしています。

しかし、大阪府内の政令指定都市中核市合わせて9つの自治体に取材したところ、大阪市吹田市高槻市の3市でシステムの利用が進んでいないことが分かりました。

このうち、吹田市では集団接種と個別接種ともに接種の記録が一切、登録されていないということです。

(中略)

加藤官房長官は、午後の記者会見で「ワクチン接種記録システム、VRSについては、高齢者接種の開始に合わせ運用をスタートし、きのうまでの累計で750万件以上の接種記録の入力がなされている。このシステムは予防接種台帳を兼ねることも可能であり、予診票の情報を予防接種台帳に入力する作業が不要となるなど、自治体における事務の効率化にもつながると考えている」と述べました。


2021/03/02のケーターWatchによれば、次のようになっています。


 政府は、2月26日付で、ワクチン接種記録システムのデータ入力支援業務に関して、NTTドコモおよびNTTコミュニケーションズ(NTT Com)と随意契約を締結した。

 新型コロナウイルスのワクチン接種では、接種したことを記録するシステムが運用される。そのデータの入力でタブレットを用いることになる。ドコモがタブレットの準備と通信回線の提供、端末管理を担う。ドコモと政府の契約金額は37億180万8000円。

 NTT Comはキッティング、配送・回収、ヘルプテスクの運営と故障対応、プロジェクト管理を担う。こちらの契約金額は10億9978万円。


なお、この記事には、この契約は、河野太郎内閣府特命担当大臣(行革担当、ワクチン担当)と平井卓也デジタル改革担当大臣のお墨付きであると述べられています。

2021/04/06のケータイWatchには、アプリの使い方の説明があります。


 この契約では、約4万1000台のタブレットを調達し、全国各地の接種会場へ配ることになっている。タブレットには、シンプルな操作にまとめられた“読取アプリ”がインストールされている。

 アプリは、タブレットのカメラを使い、接種券に記されたOCRラインという16桁の番号を読み取る。番号の読みとりは、タブレットと予診票の間を数cmほど離す必要はあるが、数秒(平均で2~3秒とのこと)でOCRラインを読み取る。

 読み取ると、画面には、接種した人の名前などが表示され、その場で簡単な確認をして登録ボタンを押すと記録が終わる。

 ITに詳しくない人でも、数タップで、ワクチンを接種した人の情報を取り込める仕組みに仕上げられている。

 ちなみにタブレットは1会場につき1台の配備が想定されている。これは数秒で記録が済むためで、10のラインでワクチン接種を進めたとしても十分さばけるのだという。

(中略)

 接種する人には、あらかじめ健康状態を記す予診票と、ワクチン接種に必要な「接種券」が自治体から送られることになる。接種券に記されたOCRラインがあれば、接種を記録していくことはできるが、手入力では接種から記録完了まで2~3カ月かかる。だが、もしデータ入力前に天災などが起きて、予診票が失われてしまうと、「接種した」ことがわからなくなってしまう。そのため、接種したその場で記録できることが求められた。

(中略)

 また今回のワクチン接種記録システムと直接的な関わりはないが、予約システムも自治体によって異なる。

 予診票あるいは予約システムが自治体ごとに違うという状況の根底には、通常のワクチン接種が基本的に「自治体のお仕事」として運営されてきたことがある。全てを標準化・共通化せずともよかった、という格好だ。


これを見ると、問診票をデジタルデータ化するつもりは最初からなかったこと、予約システムと接種システムのリンクを考えていなかったこと、副反応のサポートをしてデータを集める被接種者レベルのアプリと医療関係者用のアプリのデータとのリンクも考えていなかったことがわかります。つまり、全くシステム設計のイロハが間違っていることがわかります。

システム設計の基本は、全てのデータをデジタル化して、データをどのキーにしてリンクするかにつきます。

大阪府が使えないと言っているので、このシステムのβテストはまともに行われていません。関係者だけが形式的に、βテストもどきをしてだけと思われます。

このアプリで、37+11=48億円も使っています。これって、スマホがあれば、Googleレンズ+1ページのアプリで済むと思われます。

COCOAと同じくらい????です。

COCOAと同じようなアプリは海外にもあります。

オーストラリアの「COVIDSafeアプリのイ ンストールと登録」では、なんと、日本語の説明資料までついています。

ワクチン接種についても、オーストラリアでは、CVASがあります。

おそらく、COCOAのときと同じように、海外のシステムは、全く見ていないようにおもわれます。

さて、次の問題は、デジタル接種証明です。

2021/07/12のImpress Watchは次のように伝えています。


■ 手続き

 6月25日および7月9日には、厚生労働省から各自治体に向けた発行手続の説明会が実施済み。そこで開示された資料によれば、まず7月13日~16日に発行テストが実施される。

 発行時の手続としては、接種済証や予診票の写しなどを持参することになる。その後、ワクチン接種記録システム(VRS)を参照する。VRSでの照会は、接種券番号、マイナンバー、あるいは氏名・生年月日などを用いることが想定されている。証明書には、氏名やワクチンの種類、接種日、発行機関などが示される。

■ デジタル化も検討

 6月25日の説明会では、ワクチンパスポートのデジタル化として今後、2次元コードの発行、あるいはデジタル証明書アプリ(接種証明書の2次元コードを読み取るアプリ)との連携が並行して検討される方針が示されている。


最初からデジタルベースのシステムにして、こなかったので、窓口で紙を見せるらしいです。これは、感染リスクの拡大です。

また、今後、デジタル化を検討する方法もありえません。これは、システム設計の間違いです。システムは、デジタルベースで設計し、必要ならば、紙も使えるようにすることが基本です。

おそらく、デジタル化で、随契の会社は、追加料金を要求するのでしょう。

海外の「COVID Certificate」システムをチェックしているとは思えません。

2021/07/11の産経新聞によれば、次のようになっているらしいです。


加藤氏は「あくまでも海外渡航用だ」と述べ、国内での運用については慎重な考えを示した。


これって、国内で、使うなという意味と思われます。

筆者は、政府が、コロナ対策に責任をもつのであれば、全ての利用可能はデータをデジタルで収集すべきであると考えています。少なくとも、作業として、全リストを作った上で、プライバシーの上で制限が必要であれば、その部分を除外することが基本であると考えます。この作業の時点で、データIDとデータベースのリンクをするキー項目がきまります。個別のシステムは、メインのデータベースのサブシステムとして、設計することが基本です。

これができれば、次のステップでは、個別のアプリは、他のアプリと通信できます。

そう考えると、他のアプリと通信できない単独のアプリを作ることは、データ入力を2重に要求されますので、避けるべきです。しかしながら、「VRS」がここまでひどいと、個別アプリでも、仕方がない気もしてきました。それから、確認しておきますが、ワクチンが、足りなくなったり、配布が偏在しているのは、VRSの欠陥です。VRS は、総合ワクチン管理システムの一部として設計される必要があったのに、Googleレンズもどきにレベルダウンしてしまったことが、混乱の原因です。

つくば市は、2021/07/06から、LEBER for Businessの「デジタルワクチン手帳」を導入しています。これは、本来であれば、「VRS」の一部に含まれるべきアプリでしたが、VRSは副反応はサポートせず、厚生労働省の窓口に電話で問い合わせという非人道的な処理になっています。窓口担当者が医療や、コロナウイルスの専門家である可能性はゼロです。こうした場合には、AIの電子応答の方が、ずっとましです。

「デジタルワクチン手帳」は3か月は無料ですが、その後は有料になります。

しかし、税金を無駄に使われるよりは、応援した方が、有効なお金の使い方と思われます。

最後に、「デジタルワクチン手帳」の説明をつけておきます。


LEBER for Business(リーバー・フォー・ビジネス)」をつくば市が全国の自治体で初めて導入します。「デジタルワクチン手帳」は、アプリをダウンロードした市民が、新型コロナワクチン接種後の副反応などについての医療相談やワクチン接種記録をデジタルで管理できるものです。 1回目の接種後にアプリに接種日時やワクチンの製品番号等を登録すると、24時間後や2日後などの、決まったタイミングでモニタリングの通知が来ます。そこで不調があった場合などに問合せをすると、自動アドバイスや医師による医療相談を受けることができます。 さらに2回目接種のお知らせが通知されるので、接種予約を忘れることを防ぐことができます。 登録すると市民は3カ月間無料で利用できるため、市民が安心してワクチン接種ができる環境を整えることができるとともに、地域医療を支える医療従事者の皆様の負担が軽減されることが期待できます。

<デジタルワクチン手帳の詳細> ・接種したワクチンの記録が可能(接種した場所・接種日時・ワクチンのメーカー、接種記録書の写真、次回の予約などを記録できます。) ・ワクチン接種後、24時間後、2日後などの接種後に定期チェック通知が自動で届き、接種後の様子を記録することが可能 ・定期チェックで「副反応の症状」を選択すると、症状に応じた対処法を自動でアドバイス ・次回接種予定を登録することで、予定日が近づいたらプッシュ通知でお知らせ

■医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」について 24時間365⽇スマホで医師に相談ができるアプリです。現在300⼈以上の医師が登録されており、外出⾃粛等により病院 やクリニックに⾏きにくい⽅もアプリを通じて医師に気軽に相談することができます。⼀般向け医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」に加えて、教育機関に毎⽇の検温結果と体調、出⽋席の報告ができる「LEBER for School」(6カ国語対応)、企業向けに検温・体調報告とストレスチェックを組み合わせられる「LEBER for Business」(6カ国語対応)も全国で導⼊拡⼤中です。


 

  • 「新型コロナ」ワクチン接種記録でタブレット活用、政府がドコモ/NTT Comと契約 2021/03/02 ケータイ Watch

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1309526.html

  • 新型コロナ「ワクチン接種」はどう記録されるのか――小林大臣補佐官に聞く 2021/04/06 ケータイ Watch

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1316922.html

  • ワクチン接種率 大阪は全国「最下位」…松井市長は反論 2021/07/08 テレビ大阪

https://news.yahoo.co.jp/articles/4e1f2d72470a54c9add41d6003ae3900d6c5782a

  • ワクチン接種記録システム“VRS” 大阪市などで利用進まず 2021/06/04 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210604/k10013067121000.html

  • 政府が新型コロナワクチンの「接種証明書」7月26日から発行へ、アプリ連携は検討 2021/07/12 Impress Watch

https://news.yahoo.co.jp/articles/abc2a63433a88306023c0ea898b4f8380149cb10

  • ワクチン証明書26日から受付開始  加藤長官 2021/07/11 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/dab7ba7f3a7a9af796df0347eac819f0e5879fea

  • つくば市が、新型コロナワクチンの副反応の不安軽減に、医師に直接医療相談ができるアプリ「リーバー」を希望する市民に向けて無料導入  2021/07/08 リーバー

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000114.000033619.html

  • Request a COVID Certificate (Israel)

https://corona.health.gov.il/en/green-pass/

  • COVIDSafeアプリのイ ンストールと登録 (User guide to download the COVIDSafe app)

https://www.health.gov.au/resources/publications/covidsafeapurinoi-nsutorutodeng-lu-user-guide-to-download-the-covidsafe-app

  • Privacy notice for vaccination providers using the COVID-19 Vaccine Administration System (CVAS)

https://www.health.gov.au/using-our-websites/privacy/privacy-notice-cvas

 

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