コロナ対策をどこで、間違えたか~コロナウイルスのデータサイエンス(230)

8月6日の感染者数は、4515人で、前週の1.38倍ですから、3日続いて、1.3、1.3、1.38と低い増加率に抑えられています。

2021/08/05のFNNによると、「東京都の新型コロナウイルスの1日の感染者数が5,000人を超えたことについて、菅首相は5日午後5時すぎ、『必要な医療を受けられるよう、医療提供体制をしっかりと確保したい』と述べたそうですが、感染の急拡大に対応して、これから対応するのであれば、間に合いませんから、この発言は、「準備不足で、間に合いませんでした」という意味になります。

2020/07/29のSEVENTIE TWOで 三浦彰氏は、7月19日に五輪のトップスポンサーであるトヨタ自動車が、五輪関連のTVCMを日本で放映しないことを発表した結果、電通の株価は前日の4000円前後が、翌7月20日には終値3755円まで急落し、この3755円を底にして、3900円台まで一気に戻した。回復の原因は、日銀や政府系資金が電通株を盛大に買い支えたため」としています。

つまり、電通のための株価操作があった、電通のためのオリンピックである訳です。

さらに、三浦彰氏は、オリンピックは、「パンとサーカス」であるとして、「五輪後の総選挙では、山下会長が予想した金メダル30個が実現できるかどうかが、自民・公明の政権与党の命運を握るとさえ言われている」といっています。

一方、現在起こっている感染拡大に対しては、病床と医療従事者の確保をしないと、医療崩壊が必須で、時間的には、ほぼアウトになっています。

2021/08/06のニューズウィークで、 加谷珪一氏は、「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本『失敗の本質』」として、コロナ対策が、太平洋戦争と同じタイプの失敗であったとしています。

失敗を失敗でないとする「ご飯論法」の議論をしても、死者が増えるだけで不毛です。ここでは、失敗であってと認めて、どうして、失敗が回避できなかったかを考えるべきです。

たとえば、理研は、スパコンの富岳をつかって、「国立競技場に1万人の観客が入った場合、『間隔を空けて着席し』『マスクを着用していれば』、4時間観戦していても新型コロナの新規感染者数は0に近いという」をいうシミュレーションをしています。その結果については、批判が出たのですが、スパコンを使うことのできる人の知的レベルは、けっして低くはありません。その能力を、コロナウイルスで死者を減らすことに、どうして使えなかったのでしょうか。

あるいは、すっかり有名人になった政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長もベスト・アンド・ブライテストの一人でしょう。どうして、病床を増やす、コロナ対応可能な医療従事者を増やすといった、中国や米国で行われていた対策に誘導することができなかったのでしょうか。

同じような疑問は、医師会、学術会議、社会科学の名だたる研究者にも言えます。

特に、社会科学を専門としている研究者で、「パンとサーカス」を知らない人はいないと思いますから、如何にして、「パンとサーカス」を回避して、コロナ対策を進めるべきかという発言がないことは異常に思われます。

菅義偉首相は、平和記念式典でまともな挨拶ができなかったようですが、これに限りませんが、発言を批判しても、コロナ病床が増える訳ではありません。

2021/08/06の 読売新聞のように、首相を発言を調整不足とする立場は、コロナ対策を無視しています。調整しても、コロナ対策が進まなければ、意味がありません。

コロナ対策にならない発言を取り上げることは、時間の浪費にしかなりません。

「失敗の本質」が繰り返されたと言わざるをえません。

社会心理学者のアーヴィング・ジャニス(Irving Janis) は、集団の意思決定が失敗する「集団思考」の条件と特徴を分析しています。これは、かなり限定された、事例研究に基づくので、拡張する場合には、注意が必要です。しかし、その後、ハリスらが『科学技術者の倫理』で、集団思考の例を、倫理的問題として取り上げてから、現在では、一般的に使用されています。また、歴史人口学者のエマニュエル・トッドも、拡張した意味で、「集団思考」を使っています。

集団思考に陥る意思決定の特徴は以下です。

  1. 対案をちゃんと検討しない

  2. 目的をちゃんと検討しない

  3. リスクを検討できない

  4. 当初否定された選択肢の再評価ができない

  5. 情報をきちんとあつめない

  6. 手元の情報を処理する際にバイアスがかかる

  7. もしもの時のプランを立て損なう

これらは、観察も可能ですので、問題があるかが、チェックできます。コロナ対策では、当てはまる特徴が多く、「集団思考」が、ベスト・アンド・ブライテストが問題解決できなかった原因と思われます。

コロナ対策は、「集団思考」の一端です。地方再生、人口減少など、多くの課題で、同じ間違いが繰り返されている可能性が高いと思われます。

間違えたところに、戻って、出直す必要があると思われます。

 

 

 

  • 【速報】菅首相「必要な医療体制を確保している」 東京の新規感染者 初の5000人超え 2021/08/05 FNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/9a226c23c13a99e8083ec6b91eae7d17d7e7af01

  • 太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」 2021/08/06 加谷珪一 ニューズウィーク

https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/08/post-152.php

  • 療養方針、迷走3日…政府またも調整不足を露呈 2021/08/06 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/5715a9ebf5e256176ea04ccd15a60acd0773be3b

  • スパコン「富岳」の五輪“感染”シミュが炎上したワケ 2021/07/23 IT media

https://news.yahoo.co.jp/articles/873397a3aaa0943cb78a82abe7afe60ae2a549a4

  • パンとサーカス」の日本では金メダル30個がポイント。株価は8月9日に大転換か!? 2020/07/29 三浦彰 SEVENTIE TWO

https://www.seventietwo.com/ja/business/Olympics-TOYOTA

https://nagoya.repo.nii.ac.jp/records/7639#.YQzJK0BUu70

 

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