Google X-Labの時代

2010年のGoogle X-Lab以降、イノベーションの常識は、新しいeraに入っています。

 

Google X(グーグルX)(Lab)は、2010年に設立されました。

Google X(グーグルX、現在は単にX)は、今日ではAlphabet(アルファベット)、かつてはグーグル・コンタクト・レンズ)の子会社であり、機密施設において、次世代技術の開発を担当しています。場所はベイエリアのどこかというだけで、公表されていません。

筆者は、2010年は、Google-Xが出てきた時に、時代が変わったと考えています。

科学法則は、基本的には、次の形式で書けます。

If X Then Y

つまり、条件Xが成立すれば、命題Yが正しくなります。

万有引力の法則は、引力が働かない条件はないので、常にXは成立して、Yのニュートンの法則が当てはまります。

しかし、現在では、ほとんど常に当てはまるような美味しい法則は、ほぼ、調べつくされたと考えられています。

一方、条件Xの計測は、非常に困難です。プラシーボのように、医師にもらった薬であれば、効くはずだと信じれば、見かけの症状が改善したりします。そこで、ランダム化試験を行い、こうしたバイアスを排除すれば、正確な判定ができます。データサイエンスの出番でもあります。とはいえ、その場合の効果は小さいのが普通です。現在は、特効薬は見つかりにくくなっています。

「If X Then Y」の公式があって、それに従って、行動するのが合理的であると考えられた時代があります。

科学的な知見に従えば、失敗をせずに、物事を進めることができるという考え方です。

いまだに、多くの学会はこの考えにとらわれていると感じます。

これに、真向から異を唱えたのが、アマゾンです。リンドレーによれば、べゾスの考えは簡単です。

「試してみれば、多くは失敗して、怪我をする。しかし、試してみなければ、命がなくなる」

これは、Xは計測不能であるということだと思います。IT関係では、5年前にダメだったアイデアが5年後に金の生る木になることはざらにあります。技術革新が速いので、Xを読み切れないのです。だからと言って、出遅れれば、その時点でアウトになります。ひたすら、試して、ダメだったら早期に撤退する。これを繰り返すしか方法はありません。

Googleが、アマゾンと同じチャレンジ多用、失敗多用に切りかえたのは、Google Xからであるといわれています。

人によっては、Google Xがなければ、今頃、Googleは、なくなっていただろうといいます。

この点で、2010年に時代は、変わったと思います。

生残る企業は、チャレンジ大好き、失敗はあって当たり前という企業だけになりました。

現在のIT経営者は、デジタル庁や子ども庁をつくって、失敗したくない既存の組織に手を入れることはしません。

失敗なしに成功するようなことはあり得ないからです。

ある組織が、過去の成果にとらわれたり、失敗したくないそぶりをみせれば、その時点で、相手にしないことが現在、IT経営の基本ルールです。

残念ながら、この常識は、広く、共有されていません。

 

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