共通の問題を整理する(2)

「共通の問題を整理する」では、コロナ、オリンピック以外にも通する問題を取り上げるつもりです。とはいえ、コロナとオリンピックの関連に関する話題を一旦整理しておきます。西村カリンの判定条件で、根拠のない希望的憶測発言が多い、というか、エビデンスに基づく発言が皆無に近いということが指摘されています。この場合には、将来、エビデンスが見つかれば、希望的憶測発言が正しくなる可能性はゼロではありません。しかし、発言内容によっては、理論的にエビデンスが存在しない詭弁もあります。このような場合には、マスコミは、この発言は、詭弁であるというコメントをつけるべきです。ついていないのであれば、マスコミには、科学的なリテラシーが欠けていることがわかります。

「西村カリンの判定条件」と「ご飯論法」 2021/07/21

不可能問題

不可能問題とは、ないことの証明です。UFOが存在しないことは、証明できません。今まで、UFOが見つかっていないことが、UFOがないことの証明にはなりません。同様に、オリンピックが、コロナウイルスの拡大に影響しなかったことは証明できません。分析すれば、他の要因より、影響が相対的に、小さかったという評価はできる可能性がありますが、影響しなかったことは証明できません。何人かの大臣が、「オリンピックは、コロナウイルスの拡大に影響しなかった」と発言し、さらに、JOCの幹部は、「大臣が言っているから、これ以上、信頼できることはない」と言っています。これでは、大臣は宗教の教祖と同じです。これは、むちゃくちゃです。科学より、宗教で政治を進めるべきだという発言です。 オリンピック関連のコロナウイルスの感染データは公開されていませんし、データを隠蔽した疑惑も出ています。「東京五輪の期間中に報道発表から故意に致命的な新型コロナ変異種の発表を外した」といわれています。こうした行動は、オリンピックが、コロナウイルスの感染拡大に影響していると考えなければ、あり得ません。この状態でも、教祖様が、言った発言であれば、信者である日本国民は、信頼すべきであると言ってるようです。これは、限りなく、ダークな世界です。 昔から、プロ野球や競馬の記事が載っているスポーツ新聞には、根強い人気があります。スポーツ新聞は、記事を書いている人も、読んでいる人も、客観的で、根拠のある記事が書いてあることを期待しはいません。面白いことが第1だと考えています。スポーツ新聞は、面白くするために、良い意味で、いい加減なことが書いてあります。スポーツ新聞がいい加減でも、問題がないのは、面白くはないが、しっかりした根拠のある情報が欲しければ、別の新聞を読めば良いからです。ところが、オリンピックになって、日本中の新聞がスポーツ新聞になってしまいました。

オリンピックの期間中は、テレビもオリンピックにハッキングされ、定時に、ニュースも見られませんでした。

官僚制の失敗

経済学では、市場メカニズムがうまく機能しない場合を、市場の失敗、政府の介入が効率性を失わせる場合を政府の失敗といって、共に、避けるべきものとされます。

同じ、文脈で考えれば、「官僚制の失敗」もあると思います。

官僚制の失敗とは簡単に言えば「減点主義の評価システム+アリバイ作り」です。

何か新しいことを試みて、失敗すると減点になります。一方、問題が起こっても、アリバイ作りをすれば減点になりません。こうなると、出世するために、できるだけ、新しいチャレンジを避けて、アリバイル作りに専念します。こうした世界で10年以上生活すると、集団思考に汚染されて、問題解決のできない廃人になってしまいます。

アリバイ作りとは、「共通の問題を整理する(1)」で、説明したように「問題の解決をせずに、先送りして、努力しているということを見せるための行動(演出)をすることです」。

共通の問題を整理する(1) 2021/08/11

ある説明が、アリバイ作りか、否かは、「東京都のコロナ対策の評価方法~コロナウイルスのデータサイエンス(228)」で述べましたように「課題解決にどれだけ本腰を入れてきたかは、投入した人、お金、お金によって得られたもの、をみれば、わかります」。

東京都のコロナ対策の評価方法~コロナウイルスのデータサイエンス(228) 2021/08/06

さて、これは、官僚制の失敗なのですが、大臣の発言をみていると、「ワクチン・パスポートは国内では当面は使わない」、「デジタル・ワクチン・パスポートは今後検討する」、「〇〇は、今後検討する」といったアリバイ作り発言ばかりです。ということは、大臣は、自分の言葉では、何も言わずに、官僚の作った原稿を読み上げているだけではないかと思われます。

日本の科学技術のレベルが落ちています。そのことは、別途、論じたいと思いますが、官僚制の失敗は、科学技術予算にも、しみ込んでいます。競争的資金を獲得した場合に、成果が出ないと問題視されます。博士課程で、外国人の国費留学生をとっも、課程を終了して博士がとれないと、指導教官が責任をとらされます。革新的な研究の成功率は10%未満です。チャレンジしないと、企業はつぶれます。GoogleGoogleのX-Labのチャレンジで復活した話はよく知られています。

Google X-Labの時代 2021/06/10

現在の科学技術予算は、官僚制の失敗の上に乗っています。このまま科学技術予算を増やしても、効果は期待できません。ここ30年、科学予算では、経常研究費を減らして、競争的資金を増やしましたが、成果は乏しいです。その原因は、官僚制の失敗にあると思われます。DARPAなどは、かなり、斬新な研究にも予算を付けますが、日本では、競争的資金は、成果が確実にでる旧帝大を中心とした大型の研究チームに集中しています。大型チームの研究は、おのずと、失敗の少ない改良型になります。こうした競争的資金をベンチャーな課題に配分できないのであれば、競争的資金を増やすよりも、用途が自由な経常経費を増やす方が、技術革新につながります。

 

  • 東京五輪】菅政権が「最凶ラムダ株」上陸の発表を期間中に“隠蔽” 米メディアが猛追及 2021/08/10 東スポ

https://news.yahoo.co.jp/articles/e3196154049d23f2460bfc5792a3c8eafa5aeb84

  • Tokyo Deliberately Left Deadly New COVID Variant Out of Press Briefings During Olympics 2021/08/10 Daily Best

https://www.thedailybeast.com/tokyo-deliberately-left-deadly-new-lambda-covid-variant-out-of-press-briefings-during-olympics

 

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