11月第2週の東京都の感染者数のまとめと第3波~コロナウィルスのデータサイエンス(153)

11月第2週の東京都の感染者数のまとめ

11月第2週も終わるので、今週の11月14日までの感染者データをまとめておきます。

Google Transitデータも更新しました。

図1に見るように、東京都の感染者数、経路不明感染者数共に増加しています。

図1から、8月7日頃に入ってトレンドが変化して、感染者数が減少しています。この前後のGoogle Transitデータを見ると、7月10日頃から、行動制限率の増加(ここでは、上に変化してマイナスが減ること)が止まり、緩やな減少に転じています。そして、感染者数の拡大の速度が緩やかになります。8月に入ると、感感染者数の増加が止まります。この頃に対応したGoogle Transitデータは、行動制限率が急激に減少していますが、これは、7月23日からの4連休に対応しています。そのあと、8月に入って再度、行動制限率が低下している部分がありますが、これはお盆の連休に対応しています。このあとの連休は、9月26日からの4連休があり、2週間後の部分でも行動制限がやはり低下しています。つまり、連休は出歩かないので、感染者数が減少する傾向があります。

なぜ、8月の上旬に感染者数のピークがきて、その後減少した理由はよくわかりません。もうだいぶ時間がたっていますから、どなたかが解析結果を示していただけると良いのですが、今のところ、それに類する解析結果はしりません。他の都道府県をみると、大阪府は、8月初旬にピークになる東京都と同じようなパターンを示していますが、北海道は全く違っています。

コロナウィルスの第3波は、東京都、北海道、大阪府では発生しています。日本全体で判断しても平均値には代表値としての意味がないので、それは置いておくことにします。

なお、感染の拡大の傾向は都市または都道府県によってことなります。このことは、感染拡大のメカニズムが、都市によってことなることを示唆しています。そうすると、都市ごとに別々の対策を考えるべきということになります。

今回は、増加の原因を考えてみます。

さて、問題点は、次の点に絞られると思います。

  • 今後の感染の拡大はどうなるか。できれば予測値が欲しい。

  • 今後の感染拡大を抑えるには、何をする必要があるか、何をしてはいけないか。例えば、Go Toトラベルは中断すべきか。

ところで、Go Toトラベルをを続ける続けないというわけの分からない議論が行われています。わけが分からないというのは、東京都についてみれば、既に、感染の拡大と減少のデータがあります。その変化が何によって引き起こされたと仮定すると変化が説明できるかが、上記の問題点に対する答えになります。実際のデータがありますので、弱いエビデンスはとれます。ここで、弱いエビデンスというのは、相関のことです。

ここで、配慮する点は、介入という考えたです。統計的因果モデルでは、複数の原因が絡んで、結果が現れます。実験で仮説を検証する場合には、一つの説明変数だけを変化させて、結果の変化を調べます。しかし、実社会では、分析対象とする説明変数以外を固定することはせきません。この問題に対する解決法で知られている方法は、RCT(ランダム化試験)ですが、これは非常にコストがかかります。今世紀に入ってパールが提案した方法は、次善の策とも、現実的な解決策ともいえる介入を使う方法です。仮に、全ての説明変数が変動していても、その変化速度が無視できるほど小さければ、結果は、介入によって大きく変化した1つの説明変数の影響を強く受けるので、因果が検証できるという考え方です。この場合には、対象とする説明変数だけに短時間で大きな変化が与えられていつことが前提になります。

さて、Go Toは典型的な介入事例になります。Go Toの介入時期は以下です。

  • 7月22日から東京都を除くGo Toトラベルを実施。

  • 10月1日から東京都のGo Toトラベルを実施。

  • 10月1日からGo To イートを実施。

  • 10月9日から東京都民上乗せ割引支援「もっと楽しもう!TokyoTokyo」を実施。

図1を見ると東京都の感染者数が連続して増加に転じたのは、10月21日頃からです。

10月1日にGo ToトラベルとGo To イートを始めましたから、これは典型的な介入の例です。この介入の効果が感染者数に出るのは、10月14日から21日の間です。ここで時間遅れの2週間以外に、1週間の期間を考えのは、多くの人は週単位で生活のリズムを作っていますレスポンスに1週間程度の幅ができると思われるからです。

東京都の今回の増加は10月21日から始まっていますので、これは、Go ToトラベルとGo To イートが原因になっていることがわかります。もちろん、感染の拡大には、気温が下がったことも影響していますし、他の要因の影響しています。しかし、例えば、気温が影響しているとしても、そのことは、10月21日が今回の感染拡大のスタートになっていることを説明できません。気温の影響であれば、別の時期でもよい訳です。一方、Go ToトラベルとGo To イートが原因であれば、この時期に影響が出なければ、影響は非常に小さいと考えられます。したがって、この変化は、Go ToトラベルとGo To イートが原因である可能性が非常に高くなります。これが、介入を使って、因果関係を調べる基本的なアイデアです。

図2は大阪府の感染者数の推移です。大阪府でも同じように、10月21日頃から、今回の感染者数の増加が始まっています。大阪府のGo Toトラベルは東京都よりも前に始まっています。ですから、10月21日からの増加の原因となる介入は、Go To イートだけです。

以上から、10月21日から始まる今回の感染差数の増加(第3波)の原因が、Go To イートであることは明白です

11月11日に、Go Toイートで全国11店舗の従業員15人が感染したと発表がありました。

11月13日 には、「Go Toトラベル」利用者に新型コロナ138人感染確認されたと報告がありました。

しかし、これらは全数調査ではないので、各段の意味はありません。

加藤勝信官房長官は10日の記者会見で、政府が飲食業を支援する「Go To イート」事業の利用者に、新型コロナウイルスの感染者が確認されているか問われ、「昨日(9日)までに、感染者が出た旨の報告はないと聞いている」と答えています。しかし、これは、感染者がいないことの証明にはなりません。これは生態学等で、悪魔の証明と呼ばれるケースで、全数調査をしない限り、感染者がないとか、感染者がすくないという証明にはなりません。これらのデータよりは、感染者数のデータを介入の結果として解釈する方がずっと正確な推定になります。

 

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図1 東京都の感染者数の推移(左軸:人、感染者数、経路不明感染者数、右軸:%、Google Transitデータ)

 

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図2 大阪府の感染者数の推移(左軸:人、感染者数、右軸:%、Google Transitデータ)

 

  • NHK特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

  • 都内の最新感染動向

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2020.11.14>11-12version.