11月12日の東京都の感染者数は、393人でしたので、昨日の記事の「第3波と判断できる」を訂正する必要はなさそうです。連載のコロナウィルスとビッグデータ疫学(3)の記事は既に書いてありますが、計算論的思考のあまりの欠如に驚いて、今回の記事を優先することにします。
Go To イートのアルゴリズム
まずは、Go Toイートの問題です。どの条件の時に、Go Toイートを適用するかは、計算論的思考では、アルゴリズムの問題になります。また、コンピュータはアルゴリズムを実現するプログラムを自動実行する機械ですから、アルゴリズムを作るときには、停止条件を設定しておくことが原則です。Go Toイートは税金を使った国の補助事業ですから、特定の企業に各段の便宜を図ることは望ましくありません。この点では、Go Toイートのポイントを管理するIDは、特定の企業の出す会員番号のIDではなく、マイナンバーのIDをつかうか、メールアドアレスを使うべきです。こうすれば、複数の予約サイトの共通してポイントをためることができます。
しかしながら、現在の方法は、予約サイト独自の会員IDに丸投げになっています。実は、このことは、WEBの説明をみてもどこにも書いてないので、最初は理解できませんでした。予約サイトのIDに丸投げすれば、簡単ですが、税金の使い方としては、談合と同じです。特定の企業以外が排除されています。また、予約サイトの会員になるには、個人情報を登録しなければなりませんが、国が率先して、特定の企業に個人情報を提供するように、促すことには、大きな問題があります。しかし、現在の方法では、そうなっていて、マイナンバーカードが全く有効に使われていません。この状況で、マイナンバーカードを使えと言っても、誰も使わないことは明らかです。
IT企業で、他の企業に個人情報の提供を促すようなシステムを作成したり、停止条件のないアルゴリズムを作れば、よく理解されて、気づかないミスでバグがあったという扱いになりますし、意図的に行ったとすれば、ほぼ、首になると思われます。つまり、Go Toイートをデザインした人には、計算論的思考ができていなかったことになります。
とくに、コロナィルスの感染者数の拡大に伴う停止条件が組み込まれていないことは、自動運転の自動車では、ブレーキに相当するアルゴリズムは組み込まれていないことになります。ブレーキのない自動車を作れば、それは忘れていたにしても、犯罪です。ですから、停止条件のないプログラムをつくれば、IT企業では首になっても致し方ないのです。
第3波の問題
コロナウィルスの拡大は、クラスター単位で進みます。このブログで、申し上げているように、感染のリスクは、正規分布をしませんので、平均値には、代表値としての適切な性格はありません。このことは、第3波の発生についても平均値では議論できないことを意味します。北海道は増加がずっと続いていますから、第3波に入っているでしょう。東京都と大阪府も第3波に入っている可能性は高いです。一方、日本全体で見た場合には、何ともいえません。つまり、平均値では論じられません。北海道や、東京都でも、地区ごとに感染者数の増加特性は大きく異なります。平均値をもとに、地域一律で対策をすることには、合理性が全くありません。一つの都道府県毎に、更には、都道府県の中の、区や市、町ごとに、専門家会議を開いて、第3波か判断するのは馬鹿げています。このような場合には、計算論的思考を使うしかありません。問題は、検討単位をどのサイズにして、どのような条件になったらどうするかという「if-thenルール」、つまり、アルゴリズムを事前に定めたおいて、それに従って判断するしかありません。
補足しますと、正確に言えば、アルゴリスムとデータになります。たとえば、営業時間を変える、定員充足率の制限をもうける、業種はデータになります。いつ、各業種に制約をかけるかの手順がアルゴリズムになります。春には、どの業種にクラスターが発生しやすいかのデータがありませんでしたので、大事をとって、多めに閉鎖をしています。現在は、規制の種類、条件、業種のデータが蓄えられているはずです。この条件を細かくすれば、経済的なダメージを最少化できます。しがって、アルゴリズムが機能すれば、第3波の定義云々には各段の意味はありません。
確かに、今回は、半年のノウハウを部分部分で使って、営業を継続する業種を仕分けするなどが聞こえてきますが、全体として、何を基準に、いつ、どうするのかがわかりません。つまり、公開されたアルゴリズムになっていないのです。これは、ビジネスをする方にとっては計画が立てられないので、よろしくありません。
振り返ると、春の判定条件は、非常事態宣言がまずあって、それに合うように、条件を逆算して設定しています。この方法には、合理性がありません。春には、時間がなかったので、致し方ない面もありましたが、それから現在までには、ずいぶん時間があって、コロナウイルスに関するデータも集まっています。したがって、コロナウイルス対策のアルゴリズムを組むことは可能でした。ただし、アルゴリズムには事態が発生する前に対策を練っておくことになりますので、通常の行政の仕事の進め方からすれば、フライングになることはしっています。
しかし、過去の行政の課題対応は、少子化にしても、年金問題にしても、問題をひたすら先送りして、解決を難しくしてきました。コロナウイルスの第3波対応でも、同じ間違いが繰り返されているように思われます。