カメラのコモディティ化とカメラメーカー

ニコンが赤字で、コロナの影響もあって、どうなるかわからない状況のようです。最近は、カメラメーカーはソニーの一人勝ちのようです。

5年くらい前までは、キャノンとニコンが双璧でした。多くの評論は、次の点を無条件に上げています。

  • スマホが売れることで、カメラの市場が奪われた。

  • カメラメーカーはフルサイズのミラーレスしか生き残らない。

オリンパスもそうでしたが、ニコンは、社員をへらし、国内生産をやめて海外生産のみにシフトして、少ない売り上げでも黒字になる体質をつくる再建計画をたてています。

しかし、これは、逆にみると、今までは、年功序列で、社員に払わなければならない給与総額が決まっている。これと利益率から、必要な販売量を決めていたように思われてなりません。カメラでは、ニコンとキャノンは、独自マウントで、例えば、キャノンのカメラを買えば、キャノンのレンズしか使えないという独占販売をしてきました。その結果、レンズを売れば利益率が高いというビジネスモデルを作ってきました。つまり、普及機ではカメラの価格を抑えて、顧客の囲いこみをして、利益は、高級機とレンズでだすという構造です。

現在では、マウント仕様が公開されているのは、マイクロフォーサーズとLマウントで、複数の会社がこれらのマウントのカメラとレンズを作っています。また、カメラ製造は1社ですが、マウント仕様が公開されているものに、ソニーのEマウントとフジフィルムのXマウントがあります。マウントが公開されていないのは、ニコンとキャノンが大きいところで、古いビジネスモデルから抜けていないと思います。

マウント仕様が公開されたのが一番長いのは、マイクロフォーサーズとEマウントです。マイクロフォーサーズは、カメラ、レンズとも複数のメーカーが提供するので、独占が崩れ、価格競争になってしまい、利益が出にくい構造になりました。オリンパスをみれば、カメラの売上台数のシェアはほどほどあるのに利益がでません。多くの評論は、センサーサイズが小さく、カメラとレンズの価格が安いので利益がでないと分析していますが、カメラとレンズの価格が安いのは独占ではなく競争が働いているためと思います。カメラは、レンタルで借りることが少なく、実際の性能は、消費者にはわからないので、ブランドイメージが販売につながる特殊な商品です。ブランドイメージが良く、販売台数が多ければ、量産効果によって、相対的に安い価格を設定でき、さらに、ブランド力が強くなるという独占になりやすい構造をもっています。フィルムカメラ時代は、カメラの主体はレンズの性能でしたので、レンズさえ作れれば、良いカメラが作れた時代もありました。また、レンズの設計は名人芸でした。現在は、レンズの設計は、コンピュータが行い、新しい素材が入っていますので、名人芸ではありません。また、デジカメでは、センサー、ソフト、ファームウェアなどレンズ以外の技術が多数作りこまれています。しかも、これらの技術を全て内製できているメーカーはほとんどありません。スマホのカメラが急速に改善した理由もここにあり、100%外製でもカメラが作れ、技術を内製するメリットはなくなっています。つまり、独占市場が崩れ、製品はコモデティ化し、薄利多売になっています。

ソニーが売れていることは、キャノンとニコンのブランド力が通用しなくなったことで、そのことをニコンが理解できていないようにも思われます。

フルサイズセンサーのカメラも急速に価格が下がってきていて、ソニーのフルサイズセンサーのカメラの価格を見ていれば、コモデティ化が進んでいます。現時点では、フルサイズのカメラとレンズは利益が出ていますが、マイクロフォーサーズのように、利益率が小さくなるのは時間の問題と思われます。

デジカメのダイナミックレンジは既に、印画紙を越えていますから、良いカメラを売るには、良いディスプレイが必要ですが、カメラメーカーの頭の中には、印画紙しかないように思われます。

2013年頃に、デジカメにGPSが掲載さえたことがありますが、結局、GPSがコストがかかるということで、スマホの位置情報に、切り替えられてしまいました。今から考えると、あのころが分岐点であったと思います。スマホのメーカーは、クラウド上に膨大な写真を共有して、どのような写真が好まれているか、どのような機能が求められているかを、リアルタイムで収集し、製品開発に応用しています。カメラメーカーは、まったくこうしたデータをもっていません。バッテリーのサイズはスマホよりデジカメが大きくできるので、GPSや標高センサーを使うことは容易です。この部分は利益がでなくとも、次の製品開発に必須のデータであるとして、全機種につけることができたはずです。実際、スマホは全機種についています。しかし、差別化と短期的な利益に目が行って、戦略を見誤っています。

コモデティ化した製品は、センサーサイズが大きくなっても価格が下がって利益が出なくなります。パソコンはスマホでは、高速のCPU、GPUを使うと、処理が早くなって快適にはなりますが、動画編集でもしない限りは、普及品でも問題はありません。フルサイズセンサーの生産技術が改善していますので、価格低下が進んでいて、静止画であれば、コモデティになってしまうのは、時間の問題と思われます。