課題発見力

(課題発見力を考えます)

 

1)解決のプロセス

 

ジョブには、達成すべき目的が必ずあります。

 

103万円の壁問題はまだ、紛糾しています。

 

税調や財務省の達成すべき目的は、税率を上げることでしょうか。

 

ジョブ型雇用の社会では、このような質問がでることはありません。

 

ジョブを定義する時に、達成すべき目的が明示されているからです。

 

財政のバランスは、歳入と歳出の差し引きで決まります。

 

2023年11月、ドイツ連邦憲法裁判所が予算政策の一部を違憲としました。その結果、手元に残ったコロナ対策資金を社会政策や気候変動対策に回すことができなくなり、予算が600億ユーロ不足になりました。

 

日本では、適正な歳出の制御をするメカニズムがありません。官僚は、補助金を受け取っている関連企業に天下りします。つまり、官僚は、利害関係者であり、歳出を削減するインセンティブはありません。

 

裁判官の人事の多くは、法務省の官僚が行っているため、裁判所も利害関係者であり、ドイツ連邦憲法裁判所のような判決がでることはありません。

 

103万円の壁問題はまだ、紛糾していますが、公務員の給与のアップが決まりました。

 

物価があがっているので、公務員の給与が上がることには問題はありません。

 

しかし、年功型の公務員の給与体系には問題があります。公務員の給与体系は、ポストについていて、仕事をしても、しなくても給与が支払われます。その結果、公務員は、仕事をすることよりも、ポストの獲得を優先します。デジタル庁、こども家庭庁など、ポストが増え、人件費が拡大する一方で、問題は解決しません。デジタル庁は、マイナンバーカード問題すら解決できません。こども家庭庁は、少子化を止められません。それは、個別の官僚の怠慢ではなく、怠慢を推奨する人事システムになっているからです。

 

人事システムを変えない限り、どの問題も解決できないと思われます。

 

人事システムを変えることは、問題解決のプロセスの分析になります。

 

2)問題の発見

「人事システムを変えない限り、どの問題も解決できない」は、問題の発見の例のように思われます。

 

日本語のウィキペディアの「問題解決」には、次のように書かれています。

問題解決

 

問題の発見問題の形成を含む大きな問題処理のうちの一部分をなす。

 

ある日本企業は、次のような主旨のことを言っています。

問題の発見力は、普段の仕事において役立つだけでなく、キャリアアップでも「自分には何が足りず、何をすればよいのか」を明確にできる重要なスキルです。

中央教育審議会は、次のように書いています。

いかに社会が変化しようとも、自分で課題を見つけて、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を「生きる力」と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた。

<< 引用文献

 今後における教育の在り方の基本的な方向 中央教育審議会

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/960701e.htm

>>

 

中教審が、「自分で課題を見つけて」という用語を使ったため、「問題の発見力」より、「課題発見力」がよく使われます。

 

3)問題解決のスキル

 

英語版ウィキペディアの「問題解決(Problem_solving)」には、「問題の発見」の概念はありません。

 

「Category:Problem_solving_skills」にも、「問題の発見」に関連するキーワードはありません。

 

つまり、英語圏には、「問題の発見」という概念がないことになります。

 

「問題解決(Problem_solving)」には、次のように書かれています。

問題の最終目標が何であるか、どのようなルールを適用できるかを理解する能力が、問題解決の鍵となります。問題によっては、抽象的な思考や創造的な解決策を考え出すことが必要になる場合があります。

 

つまり、議論と検討すべき対象は、「問題の最終目標」と「適用できるルール」になります。

 

103万円問題が、先に進まない原因は、「問題の最終目標」と「適用できるルール」を検討しないためであることがわかります。

 

4)「問題の発見」がない理由

 

それでは、なぜ、英語圏には、「問題の発見」がないのでしょうか。

 

それは、「問題の発見」が、封印されているためと思われます。

 

ジョブ型雇用では、ジョブには、解決すべき目的があります。

 

ここで、問題があれば、「問題の最終目標」と「適用できるルール」を検討すれば良いことになります。

 

「解決すべき目的の定義」があいまいな場合には、「問題の最終目標」を検討します。

 

「適用できるルール」には、例えば、DXやAIを使うべきかといった内容が含まれます。

 

ジョブ型雇用では、部下は、上司に対して、「問題の最終目標」と「適用できるルール」について、確認し、問題があれば、改善を求めます。

 

上司が、適切な「適用できるルール」を準備できなくて、生産性が上がらない場合には、その責任は、部下ではなく、上司にあります。

 

給与は、能力払いであり、出来高払いではありません。

 

このようなジョブ型雇用で、「問題の発見」をすれば、「問題の最終目標」に関係がないサボタージュになるので、クビになります。

 

つまり、中央教育審議会は、年功型雇用が未来永劫続くという前提で、カリキュラムを作っています。

 

中央教育審議会のカリキュラムで、「問題の発見」を学べば、企業がジョブ型雇用になった場合には、レイオフされます。

 

筆者は、レイオフされることは、「生きる力」ではないと考えます。

 

なお、アブダクションをつかって、結果から、原因を推定する推論は、「原因の探索」であって、「問題の発見」でないことに注意すべきです。

 

例えば、「人事システムを変えない限り、どの問題も解決できない」は、「問題の発見」ではなく、「原因の探索」の推論になります。