統一IT化が終わっている自治体があることを知っていますか

自治体のデジタル化では、普通は、部門ごとに別々のシステムを作って、同じようなアプリが、縦割りに存在します。

次のステップとしては、部門間を横断的に共通に使えるアプリを作ることが求められます。このときに、最初に障害になるのが、共通のコードやプロトコルを使うことです。部門ごとに、別々のコードやプロトコルを使っている場合には、それを統一しないと、連携のとれるシステムがつくれません。逆に、連携のとれていないシステムを連携のとれるシステムに変更するためには、標準化案に適合していない部門は、コードやプロトコルを変える必要があります。たとえば、B部門がコードやプロトコルを変える場合には、情報化担当のA部門がB部門に変更要請をするわけです。しかし、組織上はA部門とB部門は対等ですから、B部門が、うちの部門では今のシステムで問題がないのに、なんでA部門の言うことをきかねばならないのかという反論がでます。コードやプロトコルをかえて新しいシステムに入れ替えるには、手間がかかりますし、場合によっては、新しいバグが発生して、システムが一時的にうまく動作しない可能性もあります。なので、B部門はA部門に対して、標準化したいというご提案の趣旨は分かるけれど、手間と費用がかかるので、次のシステム入れ替えの時期まで待ってほしいと返事をします。こういったことがおこると、共通のコードやプロトコルの導入は非常にゆっくりしかすすみません。

デジタル庁を作りたいという趣旨では、こうした問題に対して、各省庁の上になる機関を設置したいという説明をしています。しかし、庁では、省に付属する機関の位置づけになります。つまり、例示の情報担当のA部門と、それ以外のB部門の間の力関係の問題を抱えています。まあ、それを政治的に何とかするつもりではあると思いますが。

ところで、自治体の情報化の研究を行っている研究者の間では、長い間、部門間の調整は難しく、全自治体統一システム化はどこから、手を付けるべきかが分からない、難しい問題であると考えられてきました。ところが、ある時に、県レベルで、統一システム化が終わっている事例が見つかります。なお、ここでは、コードとプロトコルの統一だけで、スマホアプリには対応していません。しかし、統一化が済んでいればあとは、技術的な課題だけになります。このとき分かったことは、システムの統一化のカギは防災にあったということです。防災対策が遅れると人の命が失われます。このような条件が明示されれば、部門間をまたいで、大きな協力が得られるのです。

振り返って、今回のコロナウィルスをかんがえれば、これも災害のひとつです。厚生労働省が、デジタル先進で、パンデミック対策に、他省庁の協力を仰ぐという構図であれば、今頃は、省庁横断の共通システムが動いていたはずです。

筆者には人名救助という殺し文句なしに、システムの統一化は困難だと思うのですが、デジタル庁に秘策はあるのでしょうか。