教育の科学と「何を教えるべきか」 (6)

(10)デジタル庁をめぐる議論

 

10-1)基本的な間違い

 

マイナンバーカードを巡ってデジタル庁の役割に疑問がついています。

 

マイナンバーとひも付けて国や自治体からの給付金の振込先とする「公金受取口座」を巡って、本人以外の家族名義で登録した可能性が高いケースが約13万件に上っていたことが、総点検で確認されています。

 

6月7日、デジタル庁が公金受取口座の総点検結果を発表しました。根本課題としては、「漢字氏名とカナ氏名の照合ができないこと」を挙げています。

 

金融機関の口座名義は、氏名フリガナです。

マイナンバーカードは、漢字氏名です。

 

デジタル庁は、氏名とフリガナを自動的に変換することはできないため、マイナンバーカードと、金融機関の口座をを自動的に照合することはできないといいます。



対策として河野太郎デジタル大臣は、年内を目処にAIなどを用いた「漢字氏名とカナ氏名とを照合可能な検知モデル」を開発し、目視確認と組み合わせるとのこと。また法改正により氏名のフリガナが公証されることに併せてシステム改修を行い、自動照合を実現することも発表しました

 

しかし、これは、基本的な間違を犯しています。

 

理論的に、マイナンバーカードと金融機関の口座は照合できないという点を無視しています。

 

一昔前には、銀行口座を作る際にには、身分証書は不要でした。銀行は、預金してくれれば、問題はなかったのです。ですから、金融機関のIDは、金融機関名ー支店番号ー口座番号だけです。氏名フリガナは便宜上使っているにすぎません。

 

政府が身分確認をするように求めますので、取り扱い金額の大きな場合には、身分証明書の提示を求めることがありますが、この場合もIDが、「金融機関名ー支店番号ー口座番号」であることには変わりはありません。

 

この照合手続きは、「金融機関名ー支店番号ー口座番号」のIDに対して、氏名フリガナまたは、漢字氏名です。逆順は、IDを使わないので照合できません。

 

マイナンバーカードのIDは、番号です。漢字氏名ではありません。

 

戸籍には、漢字指名が登録されていますが、漢字には、異字が非常に多くあります。

 

「渡辺」、「渡部」、「渡邊」、「渡邉」はすべて「わたなべ」と読みますが、漢字が違います。この4つは、パソコンに登録されていますが、登録されていない漢字の異字を戸籍に使っている人もいます。つまり、マイナンバーカードの漢字氏名もIDではありません。

 

IDではないもの同士を照合しても、対応は保証できません。

 

つまり、「漢字氏名とカナ氏名の照合ができること」は、「金融機関名ー支店番号ー口座番号」のIDと、マイナンバーカードのIDが一致していことの保証にはなりません。



本人以外の家族名義で登録した可能性が高いケースが約13万件ということは、このことを示しています。

 

セキュリティの基本は、本人確認です。

 

Gmail等は、複数のユーザー名で登録できますので、IDにはなりません。そこで、スマホの電話番号とひもつけています。この場合には、コールでひて通じるスマホの電話番号が、実質のIDになっています。

 

スマホを紛失したり、番号を変えれば、変更手続きをしないと、IDは、無効になります。

 

健康保険証のIDは、毎年保険証が送られてくること、医療機関で、毎月チェックしています。これも非常に不合理です。

 

マイナンバーカードは専用の読み取り機を必要とします。これは、カードのチップを読んでいるのであって、クラウド上のデータと照合されていないためです。つまり、マイナンバーカードを健康保険証にしても、健康保険証の更新データは、別の手段で確認する必要があります。

 

マイナンバーカードに、紐つけられている健康保険証のデータは、レセプト(支払い)データだけですので、治療をうける上では役にたちません。お薬り手帳が不要になるだけです。

 

まとめますと、IDとセキュリティは、原則として、保証されない仕組みになっています。

 

政府は、アップルストアを、オープンにする要求をだしていますが、このレベルでは相手にされないと思われます。

 

考えられるアップルの対応は、Winodwsと同じように、アップルストアを経由して、ソフトウエアをインストールする場合とその他のサイトのソフトウェアを使う場合で、サポートに差をつけることと思われます。

 

10-2)ジョブになっていない問題

 

デジタル庁は何をする組織か不明です。

 

マイナンバーカードは、総務省のプロジェクトです。これは1つのジョブです。

 

デジタル庁が、公金受取口座の総点検をしたことは、総務省の下請けになっていることを意味します。

 

総務省のジョブと、デジタル庁のジョブが分離されていないことを意味します。



マイナンバーカードのID設計は、基本的に間違っていますので、デジタル庁は、総務省に、マイナンバーカードのID設計をやり直すこと、新しいID設計が出来るまで、マインナンバーカードの事業は凍結することを要求すればよかっただけだと考えられます。

 

デジタル庁は、ID設計のガイドラインをつくることが仕事であって、マイナンバーカードのソフトウェアを作ることは、総務省の仕事ですから、介入すべきではありません。

 

この問題には、デジタル庁を作った時に、ジョブの制度設計をしなかったツケがきています。

 

10-3)デジタル庁の人員

 

河野氏は日本の人口1億2500万人にサービスを提供できる職員は800人しかおらず、河野氏の政府機関は「絶望的に人員が不足している」と不満を漏らしています。

 

しかし、デジタル庁の職員には、基本的なID設計ができる人がいません。

 

この状態では人数を増やしても効果はゼロです。

 

この問題は、デジタル庁の職員を年功型雇用で、能力に関係なく、数を揃えたためにおこっています。給与も業界水準にはなっていません。

 

ジョブ型雇用であれば、年収5000万円くらいの人材を2年程度のジョブ型雇用で、200人くらい揃えれば、おつりがきたはずです。人材は、世界中から公募する必要がありますので、デジタル庁の公用語は英語になります。

 

各省庁がデジタル庁に提出する書類は全て、英語しか受け付けなくすればよいことになります。

 

デジタル庁は、デジタル化のガイドランを作ればよいわけです、これには、50人程度で足りると思います。エストニアのような電子政府で実績のある人を呼んでくればよいと思います。

 

残りの150人くらいは、日本のシステムの問題分析をすればよいと思います。

 

これは、問題点を指摘して、その結果を公開して、期限を決めて、各省庁に改善を求めます。

 

今回、検討している教育の効果については、エビデンスを計測しなければ、DXはスタートにつけませんので、DX以前の指摘からスタートすることになります。

 

この方向で進めば、2年程度にで、DXの問題点の所在が、はっきりするはずです。

 

現在のデジタル庁は、マイナンバーカードでは、総務省の肩代わりをして、バックログ対策をしています。もとのシステムの設計が間違っていますので、この方法は、無限に人手を消費してしまいます。

 

河野氏はエラーがあってもマイナンバーカードを進めるべきだと発言していますが、今回のエラーは、ID設計の間違いですので、許容できるエラーではありません。基本的には、エラーが無限に繰り返されます。

 

このまま進めば、必ず、大事故が起こります。



約13万件が誤登録であったのではなく、正しい登録をIDの照合で確認できるようになっていない点が問題です。

 

つまり、基本が間違っています。

 

参考文献



独占記事:岸田文雄首相、かつては平和主義だった日本に世界舞台でより積極的な役割を与える

Exclusive: Prime Minister Fumio Kishida Is Giving a Once Pacifist Japan a More Assertive Role on the Global Stage 2023/05/09 Time Charlie Campbell  Tokyo

https://time.com/6278122/fumio-kishida-japan-prime-minister-interview-g7/



「マイナ口座」登録問題、デジタル庁の説明を河野太郎氏が謝罪…SNSでは「平気で嘘をつく」と疑念沸騰 2023/06/06 smart FLASH

https://smart-flash.jp/sociopolitics/238625/



アップルに「アプリストア」開放義務づけへ、政府が新たな巨大IT規制…他社参入促す 023/06/02 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/ea1d6891ec5e77cce82f7de889090e8d95f9f536