前回は、企業レベルで、比較をしてみました。
ユニクロの株価は既に高く、みずほ銀行の株価は低迷していますから、ユニクロの株価は買いやすくはありません。
ユニクロは、将来、H&Mや、Google等に勝てないかもしれません。しかし、挑戦しなければ、最初から負けです。
今回は、国レベルで、DXの比較をしてみます
1)タイプA:
最初のタイプは、日本です。
デジタル庁は、2021/09/01に、設置されています。
ウィキペディアから要点をまとめます。読み流してください。
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デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房と共に助け、その行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることを目的として内閣に設置される。国家行政組織法の適用外で、事項はデジタル庁設置法に規定されている。
デジタル化の速やかな推進を目的に、その障害となっている府省間の縦割りを打破すべく、各府省に対する司令塔として、予算を含めた企画立案と統括・監理の強い権限、さらに、勧告等を含めた総合調整の役割を与える計画である 。
対象業務
デジタル庁が、予算要求や調達を直接担うのは政府機関(国の行政機関)の情報システムに限られるが、情報システムの統括・監理などとしては、政府機関の情報システムだけでなく、地方公共団体、更に広く公共サービスに関する情報システムを対象業務とすることが想定されている。すなわち、各地方自治体が、それぞれの条例に基づいて別々にシステムを構築していることでデータ連携などが阻害されている現状に対し、法律・条例によってシステムを縛るのではなく、システムをデザインしてからそれにあわせて法律・条例を作るべき、自治の独立性とシステム・データの独立性を分けて考えるべきとの指摘がされている。
ここには司法分野の情報システムも含まれており、2020年(令和2年)7月17日に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」も、裁判手続等のIT化として、司法府における自律的判断を尊重するとの前提を明記した上で、民事訴訟における主張証拠のオンライン提出などを可能な限り早期に実現すべき課題とするほか、刑事分野についても、捜査・公判のデジタル化方策の検討を開始するとしており、国全体のデジタル化を進める上で、独立性に配慮しながら、司法府とも協調・連携していく姿勢を明らかにしている(デジタル化の先進事例とされるイギリスのDirectgov(英語版)も、司法関連情報を包含したワン・ストップ・サービスのポータルサイトとなっている)。
また、地方公共団体情報システム機構を総務省と共管し、マイナンバーカードの発行・運営体制の抜本的強化を行うことも、その業務とされている。
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ポイントは、ロードマップが何も決まっていないということです。
2)タイプB:
比較対象は、ウクライナのDXです。
柴田裕史氏の2本の記事の一部を要約します。
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ソ連が崩壊した1991年以降、核兵器やロケット製造技術などはソ連の後継国としてロシアへ移管され、優秀な理系エンジニア達は国として以下に外貨を稼ぐかを模索した結果、「IT大国」が目指されました。1990年代にウクライナではITアウトソーシング企業が雨後の筍のように誕生し、西欧や北米のシステム開発を請け負ってIT産業は急成長しました。シリコンバレーとは10倍以上あったとされる賃金差を追い風にウクライナIT業界は成長を続けます。ウクライナは2004年のオレンジ革命、2014年のユーロマイダン革命などで自国通貨と産業が弱くなりましたが、IT産業はスローダウンすることなしに発展を続けてきました。
ウクライナ発のユニコーン企業は、Gitlab、GrammarlyそしてAmazonに買収されたRingなどが有名です。他にもオンライン語学学習アプリのPreply、リアルタイムのAIによる顔すげ替えアプリのReface、留守中のペット監視カメラアプリのPetcube、AIを利用した画像編集アプリ・ソフトのSkylumなどユニコーン企業候補が続々現れています。これらの企業の殆どが資金調達やマーケティングの為、アメリカに登記していますが、中身は殆どウクライナ人です。
他業界より高給で英語力や世界に通用する技術や経験を積めるIT業界はウクライナの若者に大人気です。毎年2万の理系卒業生がIT業界に向かいます。人口4500万人のうち20万人がIT技術者と言われています。
ウクライナには日本企業のみならず韓国のサムソン電子、中国のファーウェイ、ドイツのシーメンス、アメリカのボーイング、WIX、Snapchat、Amazon、Vemeo、Microsoft等数えきれない程の企業が進出し開発センターを置いています。英語を解し、世界的に一般的に普及している開発メソッド、アジャイル開発のマインドセットを持っており、独創的で自発的なエンジニアの多さが主に欧米企業との開発プロジェクトで非常に好まれる要因です。
2019年5月に就任したゼレンスキー・ウクライナ政権は「State in Smartphone(スマホの中の国家)」戦略を立てます。ゼレンスキー大統領は、ミハイロ・フォードロフ氏(当時28歳)の指揮の下で、IT業界出身の起業家、エンジニア、実業家などを積極的に新設したデジタル・トランスフォーメーション省の中枢に起用し国家システムを次々に電子化していきました。フォードロフ氏は自ら起業したソーシャルメディア・マーケティング企業の創業者兼社長でゼレンスキー大統領の選挙戦を強烈にサポートし当選に導いたことで政権に参画しました。ITを駆使し技術に精通する若き才能を積極的に登用するのがゼレンスキー政権の特徴です。ほかにも大統領のデジタルアドバイザーにIT企業テンプレート・モンスターの創業者であるダビッド・アラハミヤ氏を登用するなど革新的な人事を打ち出しています。
「スマホの中の国家」の骨子は以下です:
①eBabyサービス:出生時の行政への登録作業9つをオンラインで全て15分で終わらせることが出来るサービスを整備
②ID-14サービス:ウクライナの若者の成人時に税金登録、ID登録をする時のサービスをオンラインで出来るよう一元化
③trembita(トレンビータ)と呼ばれる安全に行政管理データをやり取りしたり管理したりするシステムを構築
④Diia(ディーア)と呼ばれる公共サービスのポータルアプリを構築。このDiia上で上記のeBabyサービスや個人事業主の登録・変更、失業給付金の申請、年金受給の発行申請など17を超えるサービスが利用可能
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3)まとめ
日本のデジタル庁とウクライナのデジタル・トランスフォーメーション省の違いは、あまりにも明白です。
デジタル庁のトップには、一時期、伊藤穰一氏(55歳)が、噂されていたこともありますが、結局、石倉 洋子氏(72歳)がついています。
ミハイロ・フォードロフ氏(現在30歳)は、唐 鳳氏(オードリー・タン、40歳)より一回り若いです。ミハイロ・フォードロフ氏も、オードリー・タン氏も、自らロードマップを作って、率先してDXをすすめています。
このタイプの人材は、デジタル庁にいないように見えます。
2年前の2021/01/19に、東洋経済に、リチャード・カッツ氏が、書いた記事の一部を要約します。
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EUでは、ICTの使い方を知らない中小企業を支援するために、2016年にデジタル化の専門家を中小企業に訪問させる「Digital Innovation Hubs(デジタル・イノベーション・ハブ )」を介して中小企業を訓練する試験的プログラムを開始し、2021年から2027年までに、2000社を対象に92億ユーロ(1兆1600億円)の予算を設定している。
経済産業省は、「戦略的CIO育成支援事業」と呼ばれる、中小企業向けの安価なコンサルティングプログラムを独自に運営している。このプログラムでは、ICTの専門家を、1日あたり1万7600円という安い費用で、6カ月から1年派遣して中小企業を支援している(2016年時点)。その規模はICTの専門家育成だけでなく、中小企業向けコンサルティング全体で2000億円とEUに大きく見劣りする。また、2015年〜2019年の間、中小企業のわずか329社しかこのプログラムを利用していない。 菅首相がデジタル化推進を政策に掲げたことを受け、経済産業省は来年度予算の概算要求で、CIO育成支援経費だけでなく企業のデジタル化全般を支援する費用として、390億円(3億7500万ドル)を計上した。これは2020年度予算の2倍規模だが、成立するかどうかは未定だ。この要求額は、EUの支援プログラムの一部であるコンサルティングの年間予算1650億円(16億ドル)に遠く及ばない。(筆者注:2021年度(令和3年度)一般会計当初予算におけるデジタル庁所管歳出予算は、368億663万8千円) 日本におけるデジタル化推進の最大の障害の1つは、ICT人材の大幅な不足にある。2020年の不足人数は約30万人と見込まれている。2030年までに、日本は144万人のICT人材を必要とするが、推定では85万6000人しか確保できず、41%も不足する。日本で働く外国人のICT人材を拡充する努力を重ねる必要がある。 それ以外の取り組みとして、大企業には、ICT人材が豊富な国に研究・生産施設を移転させるというオプションがあるが、中小企業にはそのような余裕はない。日本の成長は引き続き低迷し、実質個人所得はじり貧状態が続くことは避けられない。 —---------------------------------
ウクライナの2020年現在の一人あたりGDPは、3741ドルで、世界第118位です。 ベトナム、インドネシアと同じレベルです。 図1は、ウクライナの過去の一人当たりGDPの推移です。 図2は、ウクライナの将来の一人当たりGDPの予測です。 為替レートが変わらなければ、100000フリバニャが4000ドルなので、2025年には、7000ドルにはなるでしょう。これは、10年たたずに所得が倍増する速度です。 筆者は、2年前に、ウクライナのバレエ団のくるみ割り人形を見たことがあります。 クリスマスシーズンのくるみ割り人形は、世界中のバレeー団の稼ぎ頭です。つまり、ウクライナのバレエ団は、出稼ぎにきていた訳です。 図2の実績は、5年で所得が倍増しています。 日本の一人当たりGDPは、既に、香港、シンガポール以下ですが、今のままで行くと、韓国と台湾に抜かれるのは、必須です。あと10年くらいすると、日本のバレエ団が、ウクライナに出稼ぎに行く日も遠くないと思います。
表1 2020年の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング(世界経済のネタ帳)
114位 インドネシア 3,921.62 115位 モンゴル 3,916.09 116位 ミクロネシア 3,892.27 117位 エルサルバドル 3,798.83 118位 ウクライナ 3,741.06 119位 スリランカ 3,681.55 120位 エジプト 3,600.84 121位 エスワティニ 3,532.55 122位 ベトナム 3,522.51
2020年の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング 世界経済のネタ帳
https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html
- デジタル庁 wiki
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E5%BA%81
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/shibata/2021/01/it.php
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/shibata/2020/12/post.php