15)政府は政策の効果を理解しているか
まず、政策の効果の具体例を考えて、その後、次節で、理論的な背景を考えます。
大阪万博の予想リターン:
政府は、東京オリンピックは、経済効果があるという説明でしたが、実際には、赤字になりました。
この赤字は、運営費用ですが、波及効果で、その赤字が補填されているのかは不明です。
政府の言っている波及効果とは、イベントを開催しやすくするための適当な試算にみえます。
大阪万博の予想リターンは、次の式で計算できます。
大阪万博が黒字になる確率をp、黒字の時の利益をp2と仮定します。
大阪万博が赤字になる確率を1-p、黒字の時の利益をpm2と仮定します。
これから、期待値Eは次のように計算できます。
E = p * p2 + (1-p) * pm2
大阪万博の費用はふくれあがりました。
費用が変化した場合を#で表わします。
大阪万博が黒字になる確率をp#、黒字の時の利益をp2#と仮定します。
大阪万博が赤字になる確率を(1-p#)、黒字の時の利益をpm2#と仮定します。
これから、期待値E#は次のように計算できます。
E# = p# * p2# + (1-p#) * pm2#
E# >=0 であれば、大阪万博には、収益が期待できます。
E#<0 であれば、大阪万博は、赤字と予測できます。
E#<0 であれば、大阪万博は、中止すべきです。
要するに、期待値の計算結果を公表すれば、問題は明確になります。
確率を数式で表わして、数値を計算すれば、意思決定は、科学的に行なうことができます。
数式をつかって、コンピュータで数値を計算すれば、客観的な意思決定ができます。
大阪万博の例で言えば、最初のp、p2、pm2は、曖昧です。
しかし、とりあえず、それらしい数字を入れておきます。
次に、大阪万博の費用はふくれあがりました。
この時の確率の更新計算には、曖昧さは少なくなります。
初期値が曖昧でも、更新計算を繰り返せば、初期値の影響が弱まり、客観的な意思決定に近づきます。
リベラルアーツには、数学や数字、確率はありません。
しかし、数式や確率を含まない表現は、ユニークではありません。
推論の途中で、対象のオブジェクトが変化してしまいます。
エンジニアの視点でいえば、マルクスが資本主義の問題点を指摘したというような権威主義が眉唾であると判断します。
経済現象は、確率と微分方程式で記述できます。
確率と微分方程式を使わないで行なった推論は、確率と微分方程式を使った推論に遥かに劣ります。
飛行機は、数値風洞をつかって設計します。これは計算科学のツールです。
筆者は、マルクス主義のようなイデオロギーを使い、計算科学のツールを使わないで、設計された飛行機には、乗りたくありません。
そのような飛行機は、墜落する可能性が高いからです。
一方、大阪万博の設計には、確率ツールを使っていません。
これは、飛行機に例えれば、大阪万博は墜落する(赤字になる)可能性が高いことを意味しています。
経済政策も、企業経営も、データサイエンスと計算科学のツールを使わないで設計すれば、飛行機の墜落に相当する政策の失敗が起こる確率は、高くなります。
エンジニアのミームでは、データサイエンスと計算科学のツールを使わない設計は、あり得ません。