日本の片道列車が止まらない

戦争が何度でも起こる訳

太平洋戦争は経済力のあまりに違う相手との戦争でしたので、勝ち目のない戦いでした。

ベトナム戦争も、社会主義のための戦争をおこない、ベトナムは戦争には勝ちますが、結局は、資本主義的な経済を導入して、貧富の差の大きな社会になります。出国ビザの取得に、90ドルかかるので、そのお金が払えない人は密出国をして、その途中でトレーラーの中で窒息して死亡した例もあります。

言葉が、論理的にものを考えたり、情報を伝えるツールであるとすれば、こうした事象は何かの間違いであって、普通には起こりえないと判断されます。

しかし、最近の言語に関する知見は、こうした啓蒙主義的な理想を打ち砕いてしまいました。進化から見ると、言葉の最大の役割はグループを作って集団行動を可能にすることにあるようです。想像されるように、これは、戦争を有利にする機能でもあります。

戦争のような事象は、何かの間違いであって、普通には起こりえないことではなく、言葉の本来の機能である集団行動をとることによって、戦争は頻発するのです。

日本経済は片道列車

日本経済は、高齢化、少子化、財政負担増が続いていて、現在は、片道列車の状態です。どこかで、この列車が崖に墜落することは必須ですが、それがいつ起こるかはまだ、分からない状態です。

この状況は、勝ち目のない戦争に突入していった、1940年頃にそっくりです。

前回の戦争のときにと同様に、今回も、論理的に、考えれば、ここまで不条理な選択をすることはあり得ません。

しかし、言葉は、論理的に情報操作をするツールではないのです。論理的な情報操作に言葉を使う方法を習得したものだけが、言葉を使って、論理的な情報操作ができます。これは、数式をあつかうことと基本的には同一レベルの教育を必要とします。

このような教育を受けた人間が有権者過半数を超えていれば、民主主義は機能しますが、その条件が満たされないと民衆主義は機能しません(注1)。その点では、エマニュアル・トッドは既に、民主主義が死んでいるといいます。

だからといって、片道列車は進んでいきますので、あきらめるわけにいきません。

しかし、一個人には何ができるのでしょうか。

執着するしかない

野口悠紀雄先生の、ダイヤモンドのアベノミクス評価の記事が、9月3日現在では、公開記事になっていて、だれでも読むことができます。この記事は、アベノミクスの評価としては、最も的を得ていると思います。

野口先生は、前回のバブルの前に、バブルが来ると警鐘をならした方です。野口先生はあとになって、そのころのことを振り返って、記事(or論文)を出して、バブルが崩壊するまでの間は、まったく、無視された状態であったといっています。つまり、ひどい変わり者という評価をうけていたというのです。

野口先生のダイヤモンドの記事はほとんどが非公開です(注2)。一方、現代ビジネスの記事は、公開されています。この現在ビジネスの記事を読むと、野口先生の鬼気迫る記事に圧倒されてしまいます。それは、コロナの感染者の情報が未だにファックスで処理されているといったコロナの現場の問題を取り上げているからです。

筆者は、半年くらい前に、コロナウィルスのデータサイエンスには、デジタルデータの公開が必須であり、欧米に比べて、日本は絶望的に遅れていると申し上げました。その時には、2か月くらいすれば、状況は改善するだろうと思っていました。しかし、3か月たっても、4か月たっても、一向に状況が改善されないので、記事にすることにつかれてしまい、最近では全く話題にしていません。

これは、筆者の怠慢かもしれませんが、大家である野口先生が、ファックス処理問題の記事を最近も書かれているその執拗さにはまったく頭があがりません。野口先生は、前回のバブルの時に、孤立無援ですごされた方ですから、現在の列車がとまらないときの身の振り方を最もよく知っている方とおもわれます。

結局、残された選択肢は長いものにまかれず、ひたすら執着するしかないのかもしれません。

孤立無援の正解

投資家のジム・ロジャーズとジョージ・ソロスには共通点があります。2人とも大学で哲学を修めています。ジム・ロジャーズは、哲学は、歴史学と並んで、投資に役に立つといいます。ジョージ・ソロスは、カール・ポパーの下で学んでいたようです。ポパーもまた、孤立を恐れなかった人です。ソロスは英国政府と張り合って勝っていますから、これもまた、孤立無援には強い人です。その点では、哲学が役に立ったのでしょう。

野口先生は、ドン・キホーテのように勝ち目のない戦いに執着していますが、ロジャーズの片道列車に対する正解は、「日本を出るべき」(列車を降りるべき)というものです。これは、政治学では足による投票と呼ばれる行動に相当します。ロジャーズは、「沈みかけている船に乗ってはいけない」とも言います。

実際に若い優秀なエンジニアは日本企業には就職しないでしょうから、日本に執着するのは年寄りだけなのかもしれません。

 

 

注1:トッドのいう民衆主義が死んでいる状態と、衆愚制は同じではないと思われますが、ここでは、その違いには、深入りしないことにします。

注2:登録をすれば、1か月に5本程度の非公開記事は無料で読めるので、野口先生の記事だけを読むのであれば、無料で購読できます。

 

https://diamond.jp/articles/-/247535

https://gendai.ismedia.jp/list/author/noguchiyukio