日本企業の株を購入する理由が見つからない~株式の勉強(1)

年末から、年始に、現代ビジネスに、野口 悠紀雄氏が、投稿している記事を並べてみると、そもそも、日本企業に期待することが、間違いのような気がしてきます。

TSMCは、アリゾナ州に月産2万枚の5nmの工場を建設しますが、熊本には、月産4.5万枚の28~22nmの工場を建設します。

つまり、熊本工場は、1世代前のICなのですが、現在の日本の企業は、技術力が低下して、このレベルのIC工場を作ることができないともいわれています。

一方では、新聞では、過去に成功した老人の経験談が、恐ろしい程の数、掲載されています。

その中には、IC関連の電気技術者の経験談もあります。しかし、過去の成功では、現在のICはつくれません。経験談は技術史であって、技術ではありません。

今世紀に入って、ITや、データサイエンスの進歩によって、10年すると、エコシステムが、変わってしまい10年前の成功体験は、使えない知識になります。

2021/12/12の現代ビジネスに、野口 悠紀雄氏が、書いている記事の一部を要約引用します。


OECDのデータによると、2020年における年間平均賃金は、日本が38515ドル。韓国が41960ドルで、韓国は日本より豊かです。

スイスの国際経営開発研究所のランキングでは、2021年の順位は、韓国が23位で、日本は31位だ。「デジタル技術」では、韓国8位、日本が27位です。

国連が発表した電子政府ランキングでは、2020年で、韓国は世界第2位で、日本は14位です。

時価総額の世界トップ100位までに入る企業は、韓国は、サムスンが14位、日本は、トヨタ自動車が、36位です。時価総額サムスンが4799億ドルで、トヨタの2444億ドルの倍近い(2021年6月末現在)。

これまで1人当たりGDP増加傾向が将来も続けば、20年後には、日本の4万1143ドルに対し、韓国は8万0894ドルとなり、ほぼ倍になり、人口が半分の韓国のGDPは、日本と同じになる。

経済発展の源泉の大学を、イギリスの高等教育評価機関QS(Quacquarelli Symonds)のランキングの世界のトップ100位に入る校数で見ると、大学全般では、日本5校に対して韓国6校で、韓国の人口あたり校数は日本の2倍以上である。工学部は、日本4校に対して、韓国は7校.人口あたり校数は、韓国が日本の3倍程度である。コンピュータサイエンスでは、日本は1校で、韓国が3校.人口当たり校数は、韓国が日本の6倍である。


2021/12/19の現代ビジネスに、野口 悠紀雄氏が、書いている記事の一部を要約引用します。


従業員1人あたりの時価総額は、サムスンは132万ドルで、トヨタの67万ドルの倍近いる。時価総額は、企業の将来を表わす指標なので、サムスンのほうが将来性があるということになる。

1人あたりの売上高はトヨタが80万ドル、サムスンが71万ドルで、トヨタの方が多い。しかし、売上のうちの付加価値の比率は、トヨタの15.2%に対して、サムスンは34.9%と倍以上である。

自動車産業は、これからEVになり、自動運転になり、情報化する。その中でトヨタがどのような位置を占めるかはわからないが、スマホをつくっているサムスンの方が、情報に近い位置にいる。


2022/01/09の現代ビジネスに、野口 悠紀雄氏が、書いている記事の一部を要約引用します。


日本株価の年末終値は、32年前の水準を取り戻しましたが、アメリカ企業の時価総額合計は、この間に12倍になっています。

アメリカ企業の時価総額は、1989年の3.382兆ドルから、2020年の40.72兆ドルまで、12倍に増加しました。これに対して、日本企業の時価総額は、1989年の4.26兆ドルから、2020年の6.72兆ドルまで、1.58培の増加に止まっています。

GAMMA企業の株式時価総額合計は以下です。 アップル:2.91兆ドル、マイクロソフト:2.53兆ドル、グーグル(アルファベット)1.92兆ドル、アマゾン:1.69兆ドル、メタ:0.54兆ドル。

これらを合計すると、9.59兆ドルになります。1ドル=115円で換算すれば1102兆円です。これだけで、日本企業の株式時価総額合計額の1.5倍程度になります。そして、2021年7月でのアメリカ国内株の合計50.2兆ドルの5分の1程度になり、きわめて大きな比重です。

GAMMA企業の従業員数は、124万人です(2019年)。これはアメリカの雇用者(約1億3200万人)の0.94%程度でしかありませんが、それらの人々がこれだけの価値を生み出しています。

GAMMAに相当する企業は、日本にはありません。世界をみても、中国だけです。アメリカと日本を比較すること自体には、もはや意味はありません。


日本の企業のトップは、オーナー社長を除けば、60前後以上の年齢です。この場合、技術を離れて10年以上たっていますので、技術に基づく経営判断はできません。

簡単に言えば、ウーブン・プラネットのジェームス・カフナー氏のように、スピードをもって、技術に基づく経営判断ができません。

また、技術大学のレベルをみても、日本国内に、競争力のある技術者は、ほぼ皆無で、数少ない、トップは、GAMMA等に流れています。

この状態で、日本企業は、DXが進まないと言うので、ともかく、IT技術者の数を埋めています。

しかし、GAMMA企業の従業員数は0.94%程度でしかありません。この中でも、実働部隊になっているのは、10%あればよいところでしょう。

つまり、全雇用者の内で、使える0.1%を採用することができないと生き残れません。

こう考えると、日本企業の株式を持っていることがリスクであるという判断もあながち、間違いとはいえません。

  • TSMC熊本工場」建設を喜ぶのが大間違いである理由 2021/12/17 JBPress 湯之上 隆

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67983

  • 日本は20年後に経済規模で韓国に追い抜かれる-その残念な理由とは 2021/12/12 現代ビジネス 野口 悠紀雄

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90140?imp=0

  • アップルの年収は7400万円超!? 米企業の強烈な稼ぐ力とその源泉 2021/12/19 現代ビジネス 野口 悠紀雄

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90147?imp=0

  • 日本の株価が32年前の水準に戻る間に、米企業の時価総額は12倍に 2022/01/09 現代ビジネス 野口 悠紀雄

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/91122?imp=0