社会主義労働経済はいつ終わるのか~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

 

(変わらない日本問題の解決は、労働市場の形成です。ビジョナリストが、2割を越えれば,

変化が加速します)

 

2022/05/29の日経新聞の第1面には、「新しい資本主義」の政府原案が載っていました。

 

しかし、それよりも大きなトップの見出しは「IT人材難 低賃金が拍車」というタイトルで、IT人材の求人倍率は10倍だが、低賃金でなり手がいないことが載っていました。

 

2022/05/28の日経新聞の第7面には、米国のアップルが最低時給を22ドル(2800円)に上げたと出ていました。労働市場があれば、アップルが普通です。東京都の最低時給は1041円にすぎません。

トラックの運転手も人手不足らしいですが、最低時給は上がっていないようです。

 

2022/05/29の読売新聞によると、「文部科学省は、小中高生向けの起業家精神教育の推進に向けた関連予算を、2023年度予算案の概算要求に盛り込みたい考え」らしいです。

 

「新しい資本主義」の政府原案には、ジョブ型雇用の実現は載っていませんでした。

 

2022/05/19のNewsweekで、藤野英人は、東大生が、大企業にいかず、起業する例が増えているといっています。

 

2022/05/29の東洋経済で、野口 悠紀雄氏は、「経営者も本来は専門的な職業だ。したがって専門的な訓練を受け、それを活用して、1つの組織に固定されることなく、様々な企業の経営を経験することができる。経営者も本来はジョブ型であるべきだ」といっています。

 

筆者は、株式会社の主な株主に、海外のファンドが入った時点で、現在の経団連のような転職経験がなく、年功型でポストを上がってきた人が、企業の幹部に昇格できる確率はゼロになると考えています。

 

この前提で考えれば、起業するよりも、大企業に就職する方が、よほど、ハイリスクになります。

 

ジョブ型雇用が実現すれば、「小中高生向けの起業家精神教育の推進に向けた関連予算」は、全く不要です。

 

しかし、「IT人材難 低賃金が拍車」も、「新しい資本主義」も、「IT技術や新技術開発を頑張ってね。社会主義労働経済で、安く雇ってあげるから」と暗にいっているような気がしてなりません。

 

国家公務員を数年で退職する人も割合は増えているようです。大企業は統計がないと思いますが、若年層が、数年で逃げ出せば、年功型雇用は崩壊します。

 

ジョブ型であれば、新しい技術が出てきて、労働生産性が2倍になれば、たとえば、4人レイオフして、新しい技術ができる人を2人雇えばいい訳です。その時、時給を2倍にすれば、賃金のパフォーマンスは同じです。労働配分率が一定であれば、こうします。それでも、ソフトウェアには、学習効果がありますので、時間がたてば、労働生産性は2倍を越えていきます。つまり、DXに伴い、賃金は急上昇するはずです。

 

年功型雇用であれば、レイオフできませんし、社内の敵を作ることは、昇格の生涯になりますので、政府から、補助金をもらうことに専念することになります。最近の政府の予算は、ばら撒き補助金が増大していますので、ぶるさがっている企業も多いと思われます。しかし、これを続けると、企業の技術レベルが劣化して、国際競争力はなくなります。

 

「IT人材難 低賃金が拍車」の記事も、レイオフしてまで、本気で、DXを進めるつもりがないから、こうなっていると思います。DXが特に遅れているのは、中小企業です。生産ラインのような機械化の場合には、中小企業が、大企業より生産性が低いことがやむをえない面もあります。しかし、DXでは、スケールメリットはありませんので、中小企業は、DXを進めたくないだけです。DXが遅れていると、補助金のご褒美がもらえますので、それは、合理的な判断になります。

 

さて、今回のテーマは、「社会主義労働経済はいつ終わるのか」でした。

 

筆者は、それは、企業と労働者がビジョンを描けるようになった時であると考えます。

 

起業はひとつのビジョンです。大企業を退職する起業家は、大企業に残った場合と起業した場合のリスクとリターンを検討します。これは、科学理論または、データサイエンスの思考です。ヒストリアンでは、考えられません。

 

パラダイムシフトが起こる時点は、新しいパラダイムの人間の割合が2から3割を越えた時点であるといわれます。ビジョナリストとヒストリアンの割合が、この限界点を越えれば、システムの入れ替えが、加速すると考えます。





引用文献

起業家精神」教育、小中高で強化…新興企業育成「5か年計画」に明記へ 2022/05/29 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/521fca5c2c78732c6e9ba1456295cb59ce396594



年功序列はもう限界、ジョブ型雇用は日本経済再生の突破口になるか  2022/05/22 現代ビジネス 野口 悠紀雄

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/95391



日本の未来が「おいしい」理由は2000年代のアメリカを見れば分かる 2022/05/19 Newsweek 藤野英人

https://www.newsweekjapan.jp/fujino/2022/05/2000.php