アオリ補正の実例と課題
建築撮影の基本は見上げた角度で、周囲を広く撮影することです。
アオリ補正しなくてよいアングルが得られるのであれば、そちらを優先すべきです。
今回は、アオリ補正の例を示して、効果を確認します。
以下の写真は全て、左が元の画像で、右がアオリ補正をした画像です。
写真1の左は、建物の縦の線が上に行くと狭くなっているので、アオリ補正の効果が期待できる画像です。
しかし、アオリ補正をかけた右の画像をみると、左手前と上の部分がトリミングすると大きく欠けてしまいます。アオリ補正を前提に撮影するのであれば、トリミングできるように、対象物の周辺の余白を大きめに取っておくことが必要です。
写真2の左の画像は給水塔で、アオリが気になるほどではないので、通常は、このままでよいと思われます。試しにアオリ補正をかけた画像が写真2の右です。画像の下側の幅が狭くなっていて、思ったよりアオリ補正の余地があったことがわかります。写真2の左と右の画像を比べると、確かに、右の方が締った画像に見えます。
写真3では、同じ画像に、アオリ(垂直)だけなく、垂直と水平のフルの補正をかけてみました。右の画像の余白が大きく画像はかなり小さくなっています。長方形にトリミングすると元の画像の面積の3分の2くらいになりそうです、写真3の左の画像は、水平垂直のずれが、気になるほど大きいとは思われません。このずれが大きい時に、水位垂直の補正をかけると、補正後のトリミングした画像の面積は小さくなりすぎることが多いのです。つまり補正しないと気になるほど水平垂直のズレが見られる画像では、水平垂直のフルのパースペクティブ補正は画像が劣化するのでつかえません。これが、アオリ補正以外の補正は、ほとんど使わないといった理由です。
写真4の左の画像はアオリ補正をかけるほどのヒヅミはないと思われ、通常はこのまま使います。しかし、試しにアオリ補正をかけた画像が右側です。黒い余白をみるとアオリ補正によって、画像が左に回転したような補正がかけられています。右の画像で問題になるのは、道路の左の白い四角柱です。左の画像では、四角柱の底面が正方形に見えますが、左の画像では、底面の四角形の頂点は90度ではなくひし形のように見えます。これは、画像が回転するような補正がかかったためにおこる副作用です。アオリ補正をかけた後で、黒い周辺の余白が、画像を回転させた向きにできている場合には、四角柱の角度がつぶれている可能性があります。この場合には、アオリ補正をかけるか、かけないかは相対的に判断すべきです。
写真5の右の画像は、上に行くと垂直線の間隔が狭くなっているだけでなく、建物を斜めから撮影しています。こうした場合には、写真5の右の画像に見るように、アオリ補正による画像の劣化が著しいため、アオリ補正は実用的ではありまあせん。
写真6の左の画像は、もう少し左から撮影すれば、シンメトリックになったと思われるずれを抱えています。写真6の右の画像はアオリ補正をかけたものですが、不自然さがあまり改善されていません。
写真7は、同じ画像に水平垂直のフルのパースペクティブ補正を使った例です。
写真8は、同じ画像にトリミングと回転モジュールのキーストーンをフルで適用した例です。
アオリ補正がうまくいかないときには、これらも試してみる価値があります。