GoogleDataの更新と(104)の訂正(その2)~コロナウィルスのデータサイエンス(106)

GoogleDataが更新されたので、感染者数の推移のデータを更新しておきます。

(104)の陽性率の推定の計算に一部不適切なところがあったので、再度修正しておきます。

その他、最近の動向とその問題点をまとめておきます。

 

三密回避のエビデンスと空気感染

感染者数は、200人超えがつづいたあと、100人台に戻りました。しかし、図1に見るように、感染者数の変化は、検査数の変化に対応しますので、単純に増えたとも言えない部分があります。この問題には、7日平均の感染者数と陽性率を見ていくしかないと思われます、

東京都は7月10日に「接待を伴う飲食店等を対象とした相談・情報提供サービスを開始」しました。

また、本日15日の都のモニタリング会議で、警戒レベルを4段階のうち最も深刻な「感染が拡大していると思われる」に引き上げる予定のようです。

西村再生相は「ガイドライン順守しない接待伴う飲食店、休業要請を検討」するといっています。

いずれにしても、強制力はありませんし、対象の絞り込みをしていくとすれば、あと1週間くらいはかかるのではないでしょうか。22日のGoToまでに、間に合うか、否かのスピードと感じられます。

一方で、ガイドラインが「三密回避」に基づいているという大きな問題がありますが、これが無視されています。

研究者がWHOにクレームをつけて、現在は、コロナウィルスは空気感染もありうるとみなされています。細かなウィルスを含んだ飛沫が空気中を浮遊するようです。

「三密回避」は接触回避ですので、空気感染がありうるとすれば、「三密回避」ではだめだということになります。空気中に浮遊するウィルスを抑えるので、おそらく、次の点がポイントではないかと考えています。

  • フェースシールドは効果がないので、マスクを使うべきです。中でも、防塵マスクの形態で、フィルターを変えると更に効果があると思われます。

  • エアコンや換気の能力がリスクに大きくむすびつきますので、その点で、施設ごとのリスク評価をすべきです。東京都は「接待を伴う飲食店等」という非常にわかりにくい表現を使っていますが、窓が少なくて、換気が悪い施設が問題であって、これに、接触が入れば、確実に感染するという構図になります。逆に言えば、接触がなく、換気のよい普通のレストランの感染リスクは低いと思われます。

今後は、「接待を伴う飲食店等」かつ「ガイドラインを順守しない接待伴う飲食店」の積集合を求めることになりますが、その場合には、ガイドラインが「三密回避」に基づいていれば、積集合が求まらないと思われます。

元に戻れば、この問題は、「三密回避」は効果があるというエビデンスをとっていないために起きたと考えられます。

 

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図1 検査数(右軸:人)と陽性者数(左軸:人)

 

GoToの費用対便益

7月22日からGoToの補助金が動き出します。

一方では、地方の知事は、時期が早すぎると反対している人もいます。

このような問題では、賛成意見、反対意見のバックデータを示すべきですが、水かけ論になっています。

以下では、費用対便益で考えます。

B:便益:観光客の増加に伴う収益増加

C:費用:観光客はコロナウイルスに感染していた場合の収益減少

で、費用と便益を考えます。

B>C または、B/C>1 であれば、GoToは予定通り行うべきです。逆に、

B<C または、B/C<1 であれば、GoToは延期すべきです。

ですから、議論は、想定するBとCの計算に置かれるべきです。

おそらく、Bは以下でよいと思われます。

B=増加人数×単価

問題はCです。人頭辺り(per capta)で考えれば、次になります。

C=増加人数x感染者の含まれる確率x1人当たりの処理対策費用

こうすると、問題は、感染者の含まれる確率になります。

リスクは、陽性率と密集度合いの関数と考えれば、次のようになります。

感染者の含まれる確率=d×陽性率x(増加人数/基準人数)^a

もちろん、これは一案にすぎませんので、より良い代替案があれば、差し替えます。

まとめると、次式になります。

C=増加人数×(増加人数/基準人数)^axd×陽性率×1人当たりの処理対策費用

この方法の問題点は、感染者数の少ない地方では陽性率のデータがばらついて使えないということです。

そこで、厚生労働省により6月17日に公開された新型コロナの抗体保有率で代替することを検討します。

東京都は0.10%で、宮城県は0.03%でした。これから、宮城県の場合には、県内から観光客を受け入れる場合より、東京都から観光客を受け入れるリスク比が0.10/0.03倍高くなります。もちろん、東京都の6月の陽性率は2%くらいで、最近の陽性率は6%くらいですので、リスク比は更に3倍くらい(合わせて約10倍)高くなります。岩手県のように、感染者がない場合には、リスク比は無限大になります。

以上の考察から得られる結論は以下です。

  • GoToを全国一律で行うことには、経済的合理性がや、リスク管理上、メリットが認められません

  • 自治体は、自分たちの想定する費用と便益のパラメータを公開し、費用対便益が最大化するGoToの使い方を提案すべきです

これらは、このブログで繰り返し申しあげている「接触回避より移動制限が有効」という主張に一致しています。ここでも、エビデンスのない「三密回避」だけが一人歩きしている障害が見られます。

(104)の訂正(2)

東京都の検査数のデータの正確な概要は以下でした。


5月7日以降は(1)東京都健康安全研究センター、(2)PCRセンター(地域外来・検査センター)、(3)医療機関での保険適用検査実績により算出。4月10日~5月6日は(3)が含まれず(1)(2)のみ、4月9日以前は(2)(3)が含まれず(1)のみのデータ


これから、前回の4月1日を4月10日に変更しました。

具体的には、

データの開始期間を4月1日から4月10日に変更しました。

次のA,Bを求めます。

A=東京都の4月10日から5月6日の日平均検査数 <= 4月1日を4月10日に変更

B=東京都の5月1日から5月31日の日平均検査数

ここで、4月10日から5月6日のデータにB/Aをかければ、4月10日から5月6日までの修正された陽性率が求まります。

なお、この補正は、陽性率のみに適用していて、図3、図4の検査数には補正をかけていません。

訂正したグラフを掲載しておきます。

なお、前回の解説を図番号と4月1日を10日に修正したものを以下にコピーしておきます。

 


図2はこうして計算した陽性率4と公式の陽性率1を比べたものです。なお、この方法では、移動平均によるスムージングを考慮していないので、5月6日と5月7日の間は不連続になります。

これからみると、現在の陽性率は、前回の非常事態宣言の直前に状態にほぼ一致しています。

図3は、陽性率4について、検査数と陽性率をプロットしたものです。データはAとBに分けてあります。Aは、4月10日から5月6日のデータ、Bは5月7日以降のデータです。連休前が高いという傾向は、今回も同じです。

図4は、同じデータで、順序効果がわかるように、データ間を線でつないだものです。

これをみると、オレンジ色のデータの陽性率は、つぶれたらせんを描いています。陽性率は、2.0%、3%、4.5%、6%と不連続に変化し、ある水準で、数日たつと次の水準に移動します。分子軌道の図をみているような感じがします。

次のステージは、同じ間隔であれば、7.5%、その次が9%くらいになります。

次の次までいくと、青の4月の陽性率のピークと同じレベルになります。ただし、青のデータでは、5%、6%、9%にステージがあるようにもみえます。ひょっとすると、次のステージは、7.5%を飛ばして、9%になるかもしれません。

いずれにしても、陽性率が次のステージに達したときには、対策を講じないといけないと思います。


 

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図2 東京都の陽性率の変化

 

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図3 東京都の陽性率と検査数



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図4 東京都の陽性率と検査数

 

 

東京都の感染者数の推移

GoogleDataの更新に伴い東京都と首都圏の感染者数の推移のグラフを更新しておきます。

首都圏の10万人あたり感染者数のデータは、NHKの特設ページからは消えてしまいました。

以下の図は、各県の感染者数から、筆者が計算したものです。

以下の図も前回と大きく変わりませんので、前回の解説をコピーしておきます。

詳しい軸の説明は(77)にあります。

なお、検査数のデータが、4月10日と、5月7日で不連続になっていることがわかりました。4月10日は増加から減少への転換点、5月7日は大きな減少が終了する時点なので、ある程度は区切ってみたようがよいかもしれません。

 


図5は、首都圏と東京都の10万人あたり感染者数(左軸:人)とGoogleTransit データ(右軸:%)を示したものです。東京都と首都圏のデータの変化の傾向は一致しています。GoogleTransitはもはや指標としては有効ではありません。

図6は、長期的な東京都の感染者数の推移です。検査数のバイアスを受けているので、感染者数を見るときには、その点を注意する必要があります。

4月の上旬と最近の感染者数の増加のパターンは驚くほど似ています。

短期的に検査数が大きく変化しなければ、増加のパターンは、検査数の影響を感染者数ほど強くうけません。ですので、図6は、現在は、4月上旬と同じ感染者数の拡大要因が働いてる可能性を示しています。

図7に、対数軸のグラフを示します。5月下旬から、ほぼ一定の増加率の変化が続いています。


 

 

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図5 首都圏の感染者数の推移



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図6 東京都の感染者数の推移

 

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図7 東京都の感染者数の推移(対数)

 

引用

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93958.php

  • 都内の最新感染動向

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

  • NHK 特設サイト

https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

https://www.google.com/covid19/mobility/ Accessed: <2020.07.14>7-13version.