(政策の評価をエビデンスに求めます)
1)過疎問題の経済学
過疎問題、弱者救済は、経済成長を阻害します。
これは、投入する税金の利用効率が低いためです。
文化的な最低限の生活を保証するためには、分配の原資である経済成長を優先します。税金の投入は、一番効率のよい公共財供給に限定します。民間に補助金をばら撒く余裕があれば、その分、減税をした方が、お金が効率的に回転して経済成長が進みます。
これは、政府のお金の使い方の効率が、民間のお金の使い方より非効率なことが原因です。
民間で供給されない公共財には、軍事、警察、公共事業、義務教育があります。
それ以外の補助金を使えば、経済成長が阻害されます。
経済成長ができれば、税収が増えるので、文化的な最低限の生活を保証するためのお金を増やすことが可能になります。
ただし、このお金は、個人に支払われるもので、業界に支払われるものではありません。
無駄な補助金がなくならない理由は、補助金の利権に伴い、政治家と官僚がキャッシュバックを受けるからです。
無駄な補助金は、お金の効率の悪い分野に投入され、宛先は、個人ではなく業界です。
そのためのカモフラージュ(ウォッシング)が、過疎問題ウォッシングであり、弱者救済ウォッシングです。
無駄な補助金の政策効果は、経済成長を阻害することです。
日本は、失われた30年になりましたので、無駄な補助金の政策効果は、十分に発揮されていることが確認できます。
つまり、ウォッシングをすることが政策の目的ですから、本音が表面化しないように、政策効果の計測を回避しています。
しかし、失われた30年のような大局的な部分に注目すれば、政策の効果が確認できます。
2)政策効果の例
複雑な問題を解く糸口をさがために、簡単な練習問題から始めます。
小谷野敦氏は、「文学研究という不幸」(2010)の中で、「文学は役にたたない。文学部は、文学部の教員のためにある」といいます。簡単にいえば、文学では食べられないという主張です。
一方では、文学部卒業の高学歴ワーキングプアがいます。
文学部の教員は、高学歴の博士が就職できないのは、専門家を活用できない社会に問題があるという発言をします。
しかし、小谷野敦氏の言うように、「文学は役にたたない。文学部は、文学部の教員のためにある」のであれば、文学部卒業の高学歴ワーキングプアは、立派な教育の効果であると言えます。
断わっておきますが、筆者は、小谷野敦氏の言うように、「文学は役にたたない。文学部は、文学部の教員のためにある」とは思っていません。
筆者は、ワープロのソフトを作ったり、生成AIが文章を作成する技術は、文学部の仕事であると考えています。問題は、文学部が、エンジアリングに背を向けている点にあります。
さて、全ての事例を列挙する必要はないでしょう。
これだけのヒントがあれば、読者は、局的な部分に注目すれば、政策の効果を確認するエビデンスを見つけることができるはずです。
3)ウォッシング問題の政策効果の特徴
過疎問題ウォッシングと弱者救済ウォッシングのウォッシングでは、問題は解決しません。
その理由は2つあります。
第1に、過疎問題ウォッシングのようなウォッシングでは、本来の目的が、別のところにあるからです。
第2に、ウォッシングの課題は、解決しない方が望ましいのです。
間違って、ウォッシングの課題が解決してしまえば、代替の課題を探してこなければ、ならなくなります。これは面倒です。
逆に、ウォッシングの課題が解決しなければ、その課題は、解決が困難な重要な課題であるとして、ステータスがあがります。
これから、解決が困難で、長い期間継続して検討されている課題は、ウォッシングの課題である可能性が高いといえます。
ウォッシングの課題以外にも、解決が困難な重要な課題はあります。
解決が困難な重要な課題が、ウォッシングの課題でない場合には、ロードマップがあって、エビデンスを点検しながら、段階的に解決が図られます。
ロケットの開発をイメージすれば、理解できると思います。
エビデンスの点検とロードマップがなく、解決が困難で、長い期間継続して検討されている課題には、過疎問題の他に、非正規雇用問題、年金問題、教育問題、農業問題、環境問題など多数あります。
むしろ、ロードマップが提示されている方が稀です。
ウォッシングの課題の政策効果は、問題が解決しないか、問題が深刻化することで確認できます。
それでは、過疎問題の政策効果は、何で確認できるでしょうか。
過疎問題の政策効果は、過疎問題が深刻化することです。
この点に気付けば、過疎問題の政策効果は、少子化の進展であることが理解できます。
過疎問題は、1970年頃から、50年間、重要な課題であると位置づけられてきました。
そして、過疎問題の政策効果は、顕著な少子化に現れています。
有権者は、少子化を促進する議員を選出してきたことがわかります。
建前は、ウォッシングのためにあります。
分析の対象は、エビデンスに基づく本音にする必要があります。
過疎問題対策は、少子化推進政策ですから、少子化対策をしてきたというエビデンスはありません。
確認できるエビデンスは、少子化問題ウォッシングをつかって、関連業界に補助金を流して、政治献金のキャッシュバックをうけとったということだけです。
少子化問題の原因は、若年層の所得の減少です。
実際に起こったことは、若年層の所得の減少の拡大です。
これが、有権者が選択して、実現した世界です。