(拡張された過疎問題を説明します)
1)過疎問題の本質
地域格差是正のために、都市から地方に、税を使った公共事業を通じて所得移転することをぶちあげたのは、田中角栄氏の「日本列島改造論」でした。
ここには、都市(=強者)と地方(=弱者)の間に、弱者を助けるために、強者に制限を加えるという論理があります。
実際に、農林水産業以外の就業機会のなかった地方では、都市より平均収入が低かったですが、工場が地方に移転するにつれて、1990年代には、サラリーマンと農業の兼業ができる地方の平均収入が都市の平均収入を逆転しています。
弱者を助けるために、強者に制限を加えるという論理は一見すると正義のように見えますが、ここには、弱者のサンプリングバイアスがあります。
利権のキャッシュバック構造ができると、弱者とは、政治資金の投票の提供者に他なりません。
オリジナルの過疎問題の場合、弱者とは、(政治資金の投票の提供者)の過疎の集落でした。
過疎問題が拡張されると、弱者とは、(政治資金の投票の提供者)の企業になります。
弱者の企業とは、産業構造の変化に取り残された古い産業の企業です。
弱者の企業とは、DXの変化に取り残された古い産業の企業です。
弱者の企業とは、女性を活用する変化に取り残された古い産業の企業です。
こうして、拡張された過疎問題は、変わらない日本を作り出します。
現実には、公共事業や補助金のリターンを得られる弱者は、一部になります。
公共事業の場合には、都市部の住民は、リターンをほとんど受けられません。
拡張された過疎問題は、経済成長を犠牲にして、分配を優先します。
この分配は、人権を無視して集団に対して行なわれます。
拡張された過疎問題は、企業の中でも起こります。
黒字部門の利益を赤字部門に移転して、レイオフをしない方法が選択されます。
黒字部門で、努力して利益をあげても、利益は赤字部門に移転されるだけで、給与は上がりません。
ジョブ型雇用をしているという企業でも、大きな利益がでて、ボーナス増額する場合、全社員の一律でリターンします。部門毎の利益に応じて配分される訳ではありません。
リスキリングしてあたらしい技術を身につけても、企業の中に、拡張された過疎問題が蔓延していれば、秩序をみだすので、嫌われるだけです。
お気づきと、思いますが、春闘は、拡大された過疎問題になっています。
2)拡張された過疎問題のサンプリングバイアス
2024年2月7日、群馬県伊勢崎市の公園付近で、12人が犬にかまれてニュースになりました。
これは例外で、一般に、人が犬を噛めばニュースになるが、犬が人を噛んでもニュースにならないと言われます。
ニュースになるためには、非日常のレアなケースであることが必要条件であると考えるわけです。
しかし、データサイエンスでは、サンプルは母集団を代表する必要があります。
サンプルはもっとも日常的で、ありふれたものである必要があります。
仮に、非日常のレアなケースを報道する必要が生じた場合でも、そのケースが、全体のどこに分布しているかを明示する必要があります。
マスコミは、拡張された過疎問題を増幅します。
過疎の村にトンネルが出来たことは、よい政治である印象操作をします。
実際には、トンネルのできない過疎の村が大多数です。
マスコミは、弱者を助ける正義の味方を演出しますが、それは、拡張された過疎問題という利権の政治を増幅することになります。
問題解決では、サンプルの採り方が死命を決します。
人間の脳は、確率分布を扱うことになれていません。
確率分布を扱うことができるためには、統計学の教育が必須です。
平均値の議論は、分布を無視しています。
また、多くの分布は、平均値が代表値になる正規分布ではありません。
この問題に対する簡便法は、分布の中央、下側、上側の3箇所に代表値を設定して検討することです。
拡張された過疎問題は、実現不可な問題を、弱者の一部だけをサンプルして、あたかも実現可能であるかのように、偽装します。
ここでは、エビデンスは観測評価されません。
それは、エビデンスを観測評価すれば、拡張された過疎問題が、破綻していることがわかってしまうからです。
エビデンスのデータの取得と比較が容易になるDXは、拡張された過疎問題の敵なので、DXは阻止されます。
たとえば、エストニアのように、税金をすべて、国民のIDに紐つけたデータから、自動的に計算することは容易です。
しかし、これは、利権に伴う裏金をストップしますので、自動計算を阻止します。
マイナンバーカードのハードウェアに意味はありません。
ポイントはIDによる一元管理です。
IDで、個人情報が管理されていれば、行方不明者のデータは、すぐに照合できます。
人命救助は遥かに容易になったはずです。
3)その他のサンプリングバイアス
拡張された過疎問題以外にもサンプリングバイアスがありますので、補足しておきます。
海外の前例や権威者の主張を引用してくる方法は、政策誘導の常套手段です。
海外の前例や権威者の主張には、右から左に、色々なレンジの内容があります。
そのような場合には、都合のよい前例や権威者の主張をサンプリングして、それが、あたかも、海外では、主流であるように、偽装します。
この偽装を見やぶるのは容易で、分布のある変数を扱っていなければ、偽装です。
サンプリングの偽装は、白書にもあふれています。
全体の9割の事例では政策が失敗であっても、1割の成功事例の中からサンプルをとることで、あたかも政策に効果があるように偽装しています。