推論の正しさ

(推論の正しさを無視した議論は不毛です)

 

1)探究の学習

 

文部科学省は、探究の学習を進めています。

 

その根拠は、海外での前例主義にあると思われます。

 

前例主義は、間違った推論です。

 

有名なシェフのレシピがあっても、筆者は、まともな料理が作れません。

 

材料、調理器具、ノウハウの水準が違いすぎますので、前例(レシピ)を真似しても、成功しません。

 

探究の学習では推論(探究)をします。

 

文部科学省の資料には、推論のパターンが載っています。

 

しかし、正しい推論と間違った推論を区別する方法はのっていません。

 

ダメな推論もあります。

 

よく知られている例題には、永久機関を作るための推論があります。

 

TINA(There is no alternatives)」を無視した経済政策も、永久機関を作るための推論に似ています。

 

これらの推論は、成功しない(不可能である)ことが、証明されています。

 

そこまでひどくない例に、お金持ちになるために、宝くじを購入するという推論もあります。

 

いずれにしても、推論の正しさを無視した探究の学習は成功しません。

 

2)政策の推論

 

2024年1月30日に、第213回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説が行なわれました。一部を引用します。

日本経済の色々な場面で「新たな力」が動き出しています。

 

政権を担って二年四か月。三十年間続いたコストカット経済から脱却し、社会課題解決に新たな官民連携で取り組むことで、賃上げと投資がけん引する「新しい資本主義」を実現し、日本を大きく動かしていきます。

 

三十年ぶりの水準となった賃上げ、設備投資、株価。日本経済が新たなステージに移行する明るい兆しが随所に出てきています。

 

今、我々は、長い間、日本経済に染み付いたデフレから完全脱却し、熱量溢(あふ)れる新たな成長型経済に移行していくチャンスを手にしています。

<< 引用文献

第213回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説 2024年1月30日

https://www.jimin.jp/news/policy/207491.html

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岸田内閣総理大臣は、<賃上げと投資がけん引する「新しい資本主義」を実現>したといいます。

 

一方、野口悠紀雄氏は、日本は、産業構造の転換に失敗して、東証プライム時価総額は米IT企業たった2社分にすぎないといいます。

 

<< 引用文献

東証プライム時価総額は米IT企業たった2社分、「バブル後最高値更新」の空虚 2024/02/01 東洋経済 野口悠紀雄

https://diamond.jp/articles/-/338168

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つまり、野口悠紀雄氏は、「新しい資本主義」(産業構造の転換)は実現していないと断じています。

 

この2つの推論は矛盾しますので、どちらかが間違った推論をしていることになります。

 

岸田内閣総理大臣は、<三十年ぶりの水準となった賃上げ>といいますが、実質賃金は目減りしています。

 

2024年の春闘について、加谷 珪一氏は、2024年の春闘の目標ベースアップには、定期昇給がふくまれているので、目標値を100%達成しても、実質賃金が目減りするといいます。

 

<< 引用文献

メディアが報じる「賃上げ」の誤った数字の見方…「ベア」に拘らないと、意味がない 2024/01/31 現代ビジネス 加谷 珪一

https://gendai.media/articles/-/123629

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この2つの推論も矛盾しますので、どちらかが間違った推論をしていることになります。



3)正しい推論の条件

 

正しい推論を教育で学習しないことは大きな問題であると思われます。

 

たてまえの議論だけで済むのであれば、政治主導は、利権誘導になります。

 

東京・千代田区で「区議会のドン」と呼ばれる大物が、2024年1月24日、議会事務局長まで務めた千代田区元幹部とともに官製談合防止法違反容疑で逮捕されました。

 

<< 引用文献

談合で「千代田区議会のドン」逮捕の背景に透ける「東京再開発利権と裏ガネ」 2024/02/10 現代ビジネス 伊藤 博敏

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正しい推論には、2つの条件があります。

 

第1は、推論のプロセスが正しいことです。

 

第2は、推論の結果の是非が判定できることです。

 

岸田内閣総理大臣施政方針演説は、この2つの条件を満たしていません。

 

その場合には、全ての議論は停止してしまいます。

 

原因は、教育の失敗にあるのでしょうか。