(自動車の検査不正防止には科学が必要です)
1)問題解決のアプローチ
問題解決のアプローチに疑問があります。
検査のエラーや検査の落第、検査不正は必ずあります。
検査不正が問題ではありません。
問題は、検査不正の発生確率が減少しないことです。
検査の目的は、品質の改善にあるはずです。
検査に合格することが目的になれば、不正が起こります。
これはディベートでも同じです。
ディベートの勝ち負けが、ディベートの目的になれば、ディベートは不毛になります。
ディベートの目的は、推論の改善にあるはずです。
自動車の検査不正が出てきた時に、検査のエラーや検査の落第、検査不正の発生確率の推移が問題にされることはありません。
これは、目的と手段を間違えています。
羽田空港の航空機の事故でも、異常接近の発生確率の推移のデータはでてきませんでした。
接触事故は、ゼロにはなりませんが、異常接近の発生確率のデータを収集して、その推移を見ながら、改善策を進めるしか方法がないと思います。
この考察が正しければ、原子炉の安全性には、疑問が付きます。
2)科学の不在
日経クロステックに、不正が続く理由についての佐藤社長に対するインタビューが載っています。
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Q:トヨタグループで認証不正が起こるのはなぜか。他社と何が違うのか。
佐藤社長:まずは組織的な問題があると思う。今回共通するのは、認証制度というものに対する組織的な手当て、例えば、開発部署と認証業務を遂行する部署が同一部署内にあり、けん制力が効かずに不正に走ってしまったというような背景が共通してある。そうした組織上の課題に手を打ててこなかったというのが、大きな要因の1つとしてあると思う。
さらに、技術の高度化が非常に速く進み、業務の負荷が高まっている中で、足元でしっかりと正しい仕事をすることの大切さに関して、バランスを崩していったところがあると思う。
今回起きていることはあってはならないことだ。従って、1回立ち止まってしっかりと反省し、問題に向き合って、改めて前に進んでいく。これが今、トヨタグループとして進めていかなければならないことだと思う。そこに我々も一緒に汗をかいていく。
Q:トヨタ自動車がグループ企業に対してプレッシャーを与えているのではないか。
佐藤社長:これはトヨタ自動車のプレッシャーというよりも、自動車の開発が100年に1度の変革期にあり、従来の仕事のプロセスややり方が通用しない時代に入っている(ことの影響が大きい)。こうした中、新しい取り組みを行い、新たな技術をどんどん開発していかなければならない。商品力の強化や、安全・安心(の価値)を高めていくための技術開発が進んでいる。
不確実なところに挑戦しているので、これはトヨタ自動車のプレッシャーという前に、そもそも自動車産業が抱えている課題だと思う。この難しさにどう向き合っていくのか、失敗に対してどう柔軟性を持つのか。そうしたところの心理的安全性を、もう少し担保した開発の仕組みづくりが全般に必要なのだろうと思っている。
Q:日野自動車とダイハツ工業、豊田自動織機の3社の不正は共通する部分があるか。それとも個別の問題か。
佐藤社長:共通する部分と個別の部分とそれぞれ存在しており、一言で回答するのは難しい状態だ。根っこにある共通する部分は、認証制度に対する理解と順守に対する意識(の低さ)だと思う。その部分は個別の案件によらず全体を見て取り組んでいく必要がある。
不正が起きた背景にある要因はそれぞれ異なっているため、1つひとつ丁寧に向き合っていく必要がある。豊田自動織機でいえば、事業部ごとの連携のあり方やパワーバランス、コミュニケーションの質などにしっかりと向き合っていかなければならない。ダイハツ工業でいえば、クルマづくりに対してもう一度あり方を見直していく必要がある。ケースごとに違う部分もあるというのが私の理解だ。
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<< 引用文献
なぜトヨタグループで不正が続くのか?佐藤社長に集中した質問 2024/01/30 日経クロステック 近岡 裕
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08846/
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この推論は、帰納法で、行われています。
つまり、デザイン思考ではありません。
デザイン思考で考えれば、不正の原因は明確です。
ジョブディスクリプションがあれば、検査員の不正が発覚すれば、検査員は、裁判で、責任を追求されます。アメリカの場合、裁判に負ければ、破産は確実です。
つまり、検査員には、破産のリスクを負ってまで、不正をする動機はありません。
こう考えれば、不正の原因は、ジョブディスクリプションの欠陥問題に過ぎません。
つまり、年功型雇用で、ジョブディスクリプションと責任の所在を不明確にしておけば、不正が再発するリスクが高いと推論できます。
裁判をさけて、行政指導で、責任をあいまいにすれば、不正は繰り返されます。
あまりに簡単ですが、これが、因果モデルによる科学的な思考法です。