0)少子化促進政策の話
防衛費と少子化対策の財源がないといっていた政府が、突然、財源の話を脇において、減税すると言い出しました。
しかし、実質所得は、円ではなく、円の実質実効為替レートで評価する必要があります。
野口悠紀雄氏の指摘では、以下になります。
2023年8⽉の実質実効為替レート73.19は、データが存在する最も古い時点である1970年5⽉の実質実効為替レート75.02より低く、1970年代の固定為替レートの時代よりも、購買⼒が低くなっています。
1995年4⽉には実質実効為替レートは、193.97(ドル円レートが1ドル=79.75円)でした。
2011年10⽉の実質実効為替レートは、135.86(ドル円レートが史上最⾼値の1ドル=75.74円)でした。
これが、⼤規模⾦融緩和の結果、2023年8⽉には、実質実効為替レートが、73.19になっています。
つまり、円安によって、円の手取りに変化がなくても、実質所得は、10年で半減しています。
政府の所得減税と給付金では、所得倍増して実質実効為替レートをカバーできるようにはなりません。
所得減税と給付金には、効果がないことがわかります。
専門家の分析によれば少子化の原因は、若年層の所得が減少して、婚姻率が下がったことです。
つまり、若年層の所得を回復させないで、減少させる政策は、少子化促進政策であると言えます。
政策のお題目に、少子化対策というカモフラージュがかかっていても、中身が、少子化促進政策であれば、少子化促進政策になります。
羊の皮をかぶったオオカミは、羊ではなく、オオカミです。
婚姻率が下がって、ここまで、少子化が進んだということは、今まで、政府が、少子化促進政策を進めてきた結果です。
その少子化促進政策のコアは、⼤規模⾦融緩和と円安政策であったと思われます。
少子化(結果)が問題であれば、結果を生ずる原因(⼤規模⾦融緩和と円安政策)を特定して、原因を取り除く必要があります。
これが、因果モデルによる科学的な推論の方法です。
政府は、円安を放置して、効果の全くない所得減税と給付金で、問題の原因を胡麻化す計画のようです。
そう考えると、所得減税と給付金は、少子化促進政策を、続けますという意思表示になります。
日商は、インフレに対応して、賃金をあげることは難しいといいます。
理由は、インフレ分を価格に転嫁できないからであるという説明です。
しかし、インフレに対応した賃金上昇が出来なければ、実質所得は減ります。
つまり、日商は、今後も継続して、少子化促進政策を続けますといっていることになります。
日商が、少子化促進政策になっているということを、確信して、発言しているのか、少子化促進政策になっているということを理解できなくて、発言しているのか、そのどちらかは、わかりません。
しかし、どちらの場合でも、少子化問題に対する無理解と無責任があるように思われます。
こうした、おかしなことが起こる原因は、少子化の因果モデルを考えて、原因を取り除くという科学的な推論が行われないことにあります。
少子化は止まっていませんので、今まで、少子化促進政策を続けてきたという事実を認めて、原因を特定しなけば、問題解決はできません。
引用文献
所得減税と給付金セットで検討へ 物価高対策の目玉として首相が指示 2023/10/20 朝日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/aba29b6cdf3509372651f63ad30fb207d3eaf470
1970年代より低くなった日本人の購買力、日銀は長期金利引き上げで円安阻止を 2023/10/19 東洋経済 野口悠紀雄
https://diamond.jp/articles/-/330842
賃上げ5%「中小では難しい」 日商会頭、価格転嫁進まず
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6478991