8)レンズの設計費用
カメラがデジタルになって、レンズの性能が劇的に改善されました。
これには、ディスプレイで等倍に拡大して見ることが可能になったこと、レンズがコンピュータで設計できるようになったこと、特殊レンズの価格がさがったこと、デジタル補正ができるようになったことが関係しています。
コストのかかるヘリコイドを使わず全て電子化してパーツを減らせば、材料費はしれています。
フィルム時代のように、派手に色収差が出るレンズは減っています。
この変化の結果、レンズのコストの主要な部分は、レンズの設計費用が占めるようになります。
メーカーは、レンズの価格差で、コーティングの種類を変えたり、レンズの筒の素材を変えたりして高級感を演出しています。
ウェブの記事は、販売促進広告のようなものばかりになり、新しいレンズの性能がよくなったようにかきますが、画角とF値と大きさ(重量)を決めれば、最適なレンズの種類はほぼ一つになってしまいます。
設計費用が同じであれば、レンズの価格は、予想販売本数や、ブランドイメージに依存します。
これは、性能を直接反映していないので、高価なレンズほど、大きさが大きく、F値が明るい設定になります。
レンズの設計コストは非常に大きいので、ゼロからレンズを設計するのではなく、古いレンズの設計を使いまわします。防滴仕様にしたり、AFモーターを改善したり、レンズの素材を改良する(入れ替える)方法は、設計コストがかからないので好まれる方法です。
さて、ミラーレスでは、レンズの軽量化が図られました。
パナソニックは、もっとも極端に、小型化軽量化に走りました。
レンズが、小型で、軽い場合は、一般論では、入門用の性能のよくないレンズになります。
パナソニックも、MFTで大きくて重いレンズを高級レンズに分類しています。
「高価なレンズほど、大きさが大きく、F値が明るい」という神話を作っています。
しかし、「高価なレンズほど、大きさが大きく、F値が明るい」という神話が生きていれば、MFTの価値はないことになります。
何故ならば、MFTのレンズは、APS-Cやフルサイズに比べれば、大きさが小さいからです。
レンズの原価が、設計費用できまる場合、フルサイズ用の「大きさが大きく、F値が明るい」レンズには、高い価格をつけても売れるので、原価率が低くなり、利益率が上がります。
MFT用のレンズは、利益率が低くなります。
MFTのレンズが、フルサイズのレンズの数倍も多く売れれば、その差は取り返せますが、実際の販売本数は、フルサイズの方が多くなっています。
これは、ビジネスモデルとしては破綻しています。
OMDSの最近のレンズは、10万円以上するPROレンズが主体になっています。
これは、安価なレンズでは利益が出にくいことをしめしています。
OMDSは、PRO、PREMIUM、無印のランクをやめて、PROとその他の2ランクにしています。
OMDSのPROレンズの価格は、フルサイズのサイドパーティのレンズの価格と変わりません。
同じ、支出であれば、MFTでなく、フルサイズでよいという判断が働きます。
レンズの設計コストは、レンズの大きさには、左右されませんので、これは、難しいビジネスモデルです。
カメラにつけるレンズは、1本なので、安価で、よいレンズを出しても沢山売れる訳ではありません。
サイドパーティが、MFT用のレンズを作りたがらないのは、このコスト構造のためと思われます。
今のところ、中華レンズのように、セット販売以外には、解決策を思いつきません。