サハリン2を巡って~2030年のヒストリアンとビジョナリスト

2022/02/24に、ロシアのウクライナ侵攻が始まりました。

 

2022/02/27に、2021/12に就任したばかりのドイツのオラル・ショルツ首相は、国防費を国内総生産GDP)比で2%以上へと大幅に引き上げると確約し、ドイツがウクライナに武器を直接供与する方針を示します。これで、メルケル前首相がレールを引いたロシア宥和政策は、終わります。

 

2022/03/25には、ドイツの経済相が、1か月で、可能な範囲で、エネルギーのロシア依存度を下げたことを報告しています。

 

しかし、同じころ、日本は、サハリン2からは撤退しないと述べています。



2022/04/08の読売新聞によると「東京ガスの内田高史社長は読売新聞のインタビューに応じ、ロシア極東のプロジェクト『サハリン2』からの液化天然ガス(LNG)について、『(輸入が)止まったら、(都市ガスの)供給支障を起こす』と述べ、安定供給のため、今後も調達を続ける考えを示しました。(中略) 東京ガスとサハリン2との契約は2031年まで残っています。調達を取りやめた場合でも代金を支払う契約になっているといい、『仮にそうなった場合は、国がどうするか考える必要がある』との見解を示しました」

 

2022/04/08の産経新聞によると、「ウクライナ紛争をめぐり、欧州委員会は、5日にロシア産石炭の輸入禁止を提案しています。欧州連合(EU)加盟国は7日、ロシアに対する追加制裁で合意し、ロシア産石炭の輸入禁止を決めました。EU議長国フランスが発表した。制裁は8日にもEU官報で公布し、発動します」

 

2022/04/08のロイターによると、「日本政府は主要7カ国(G7)と足並みをそろえ、ウクライナに侵攻したロシアからの石炭輸入を削減する方針を決めました。すぐに代替を確保するのは難しいことから段階的に減らし、最終的には輸入しないことを目指します。

萩生田光一経済産業相は8日の閣議後会見で『代替国を見つけながら輸入を段階的に減らしていく。最終的には輸入しない方向を目指していきたい』と明言しました」

 

EUが、4月8日に、追加制裁を発動していますが、日本は、4月8日に、方針を発表しただけです。

 

他の国が対処方針を発表して、対処方針がヒストリーになった時点で、コピーして採用することは、ヒストリアンでもできますが、他の国に先駆けて、対処方針を検討することはビジョナリストでなければできません。

 

東京ガスの内田高史社長の「仮にそうなった場合は、国がどうするか考える必要がある」という発言は、ヒストリアンの発言です。ビジョナリストは、「仮にそうなった場合を考えて、国がどうするかを決めておきます」

 

ヒストリアンは、問題を先送りするので、問題は解決不可能になります。

 

ビジョンを持って検討するにはそれなりの時間がかかります。

 

2022/02/27のショルツ首相の発言をうけて、ビジョンの検討をしていれば、「代替国を見つけながら輸入を段階的に減らしていく」という発言にはなりません。直ぐに可能な代替国の検討は、終わっているはずです。2022/03/25のドイツの経済相の発言は、1か月の間に、代替国や代替手段を検討して、エネルギー転換をした結果を示しています。

 

繰り返しになりますが、ここで言いたいことは、ロシアの宥和政策の切り替えが上手いか否かではありません。

 

ヒストリアンがメジャーになって、ビジョナリストがいなくなると、問題を解決できる能力が失われてしまうという事実です。この状態が、普遍化すれば、少子化等他の問題も解決できる訳がないと言えます。





ドイツ、ロシア産エネルギーへの依存度が大幅低下=経済相 2022/03/25 ロイター

https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-germany-energy-idJPKCN2LM0YO

 

EU、ロシア石炭禁輸で合意 2022/04/08 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/8166e9ab3709b208daa4f9335190e0fa227c4605

 

日本政府、ロシアからの石炭輸入削減へ G7と足並み 2022/04/08 ロイター

https://jp.reuters.com/article/jp-ru-coal-sanctions-idJPKCN2M005N

 

サハリン2調達、継続意向…東京ガス・内田社長「輸入停止なら都市ガス供給に支障」 2022/04/08 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220408-OYT1T50036/