1.5 ヒストリーの再構築~2030年のヒストリアンとビジョナリスト(新05)

2022年2月に、ロシアとウクライナ戦争が始まりました。

 

歴史の時計の針を戻せるのであれば、どこかで、戦争を回避できる方向に、転換すべきだったと考えられます。もちろん、時計の針を戻すことはできませんが、このように、クリティカルに考えて、ヒストリーを再構築する努力をすれば、同じような状況になった時に、今度は、戦争を回避できるかもしれません。

 

ヒストリーは、必然で、回避できないという決定論よりは、ヒストリーの再構築を行うべきです。再構築されたヒストリーは、事実ではなく、ビジョンを反映したものになります。

 

こうしたヒストリーの再構築は、太平洋戦争の戦史では、よく行われますが、それ以外の場合にも有効と思われます。

 

例えば、日本の失われた30年についても、アメリカでは、ベンチャーが育っていますので、ベンチャーを育てればよいと結論づける方法は、アメリカの産業史をコピーしたヒストリアンの発想です。ヒストリーの再構築をするのであれば、日本が、アメリカのようにならなかったのは、過去30年のどこかで道を間違えたからだと考えます。そして、その分岐点を明確にして、問題点を取り除けば、少なくとも、同じ間違いを繰り返すことはないと考えます。これが、ビジョナリストの発想です。



2022年3月の経団連の「スタートアップ庁」を作れという提言は、ヒストリアンの発想になっていて、当事者たちには、過去に道を間違えたという認識はありません。

 

「女性・ダイバーシティ・高学歴」については、過去に、どこかで道を間違えて、アメリカのようにはなっていません。ですから、ヒストリーの再構築を行うことが有効です。「ユニコーン」のような成功事例のヒストリーを集めてきて、それがあれば良いというのは簡単です。一方、ビジョンを持って、ヒストリーを再構築することは、膨大な手間と時間がかかります。しかし、それに、耐えて、ビジョンを構築することなしに、失われた30年からの脱却はありえません。

 

太平洋戦争の時には、日本は、アメリカに比べて、航空機の数が圧倒的に少なく、それが、敗因になっています。アメリカには航空機が多数あったので、戦争に勝てました。しかし、日本も、航空機をもっと作るべきだったというロジックはナンセンスです。

 

この航空機をユニコーンに置き換えてみれば、「スタートアップ庁」は、飛行機工場を作るべきと言っていることになります。

 

ヒストリーの再構築ができない場合には、日本が、再び戦争に巻き込まれるリスクが高くなります。

 

ヒストリーの再構築を避けるヒストリアンが、如何に、有害かがわかると思います。