1965年11月から1975年4月のベトナム戦争の時代は、イデオロギーの時代でした。
1968年5月には、パリで5月革命が起こり、キューバ革命のチェ・ゲバラと文化大革命の毛沢東が運動のイコンとして掲げられます。背景にはフランス革命からロシア革命、キューバ革命、文化大革命へと至る「革命の歴史」があり、それを高度経済成長に湧くパリの学生が導き、各国の学生運動に熱をふりまき、より拍車をかけます。
世界の若者は、学生運動によってお互いの理念、思想、哲学を共有し、政治運動を行い、カウンターカルチャーやヒッピー文化が流行ります。革命を提唱する左翼は、進歩的と見なされていました。
ところが10年もしないうちに流れが変わります。
1980年代後半からソビエト連邦でゴルバチョフによってグラスノスチ(情報公開)とペレストロイカ(再革命)が始まり、1991年のソ連解体へと繋がります。
1986年のベトナム共産党第6回党大会でドイモイが提唱され、市場経済が導入されます。
1992年1月から2月に鄧小平が、南巡講話で、社会主義市場経済を提唱します。
豊かになるには、市場経済を受け入れて、労働生産性をあげることが必要で、社会主義では、豊かになれませんので、革命は、貧困への道だと思われるようになります。
薔薇色と思われていた社会主義の実態も明らかになります。
毛沢東は、大躍進で2000万人以上を餓死させていますし、文化大革命の推定死者数も数十万人から2,000万人と言われています。
スターリンは、1932年から1933年にかけてウクライナ人が住んでいた各地域でホロドモールと呼ばれる人工的な大飢饉を引き起こし、餓死者・犠牲者は、数百万人から1450万人とも言われています。
10年も経たないうちに、市場経済を受け入れるのであれば、どうして、ベトナム戦争で、多数の死者を出してまで、社会主義のために戦ったのか、わからなくなります。
こうして市場経済が、中心の世界が出来上がります。
しかし、2022年にウクライナで起こったことは、世界は、市場経済だけではなく、イデオロギーでも動いているという事実です。
社会主義国が市場経済に移行した場合、ベトナムや中国では、共産党の支配は続き、様子を見ながら、少しずつ市場経済に移行しています。ベトナムで、株式市場が出来たのは、今世紀に入ってからです。つまり、ソフトランディングしています。
一方、ロシアは、共産党が崩壊してしまい、アメリカのコンサルタントによるハードランディングをすすめた結果、ハイパーインフレになってしまいます。このため、ロシアでは、市場経済には、悪い思い出しか持っていない人も多くいます。プーチン氏は、こうした人たちを支持層にして、反市場経済的なカラーを出して大統領になります
1980年代に、市場経済が志向された時には、世界のパワーバランスは、安定していました。1991年のソ連解体で、新しいパワーバランスが追求された訳です。1991年には、米国1強のように思われていましたが、2010年には、そうではないことがわかっています。
米国1強の前提で進めた湾岸戦争、アフガニスタンは、安定した政権を生み出すことに失敗しています。
1991年のソ連解体直後に、次の20年で、米国の軍事パワーで勝てない戦争があると思った人は少ないと思います。
湾岸戦争の多国籍軍による砂漠の嵐作戦(Operation Desert Storm)決行は1991年1月17日〜 1991年2月28日までです。13か月で終わっています。
2001年に米国が、アフガニスタン紛争に介入した時には、米国は、短期間で、勝てると予想していたはずです。しかし、紛争からの撤退は、2021年でした。
時代は、一巡して、また、イデオロギーの時代になっています。
2021/12/25で、社会主義国家・ソビエト連邦(ソ連)が崩壊して30年になりました。
最後に、2021/12/23 FNNプライムのゴルバチョフ氏へのインタビューを引用しておきます。
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ーー現在のロシアとアメリカ・ヨーロッパの関係は「冷戦以降、最悪」とも言われるが、かつて「冷戦の終結」を宣言した立場として、どのような思いで見ているのか。また、これからの国際社会でロシアのあるべき立ち位置をどう考えるのか。
ゴルバチョフ氏:
装飾することなく正直に言うと、今日の世界は、世界の主要な大国が深刻かつ実質的に制御されていない軍事政治的対立に直面している。以前作られたすべてのフレームは壊れているか、はたまた緩んでいるか、いずれにしても脅威にさらされている。これが続くと災害(戦争、内戦、経済危機、政治危機)につながる可能性がある。
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【全文】ソ連崩壊から30年「ロシアの将来を作るのは1つしかない、それは“民主主義”だ」病院で暮らすゴルバチョフ氏 ペレストロイカを語る 2021/12/23 FNNプライム
https://www.fnn.jp/articles/-/289502