政治的判断の科学的正当性(3)

科学的アプローチ

総裁候補は、政策公約を提示します。

「こうなったらいい」という話(公約)は、誰でもできます。

宝くじに当たるように、お金を配る政策が過去にも行われています。コロナの時にも、10万円をくばったり、GOTOで、キャッシュバックしたりしています。ふるさと納税もキャッシュバックです。しかし、その財源は、税金です。公共経済学では、キャッシュバックするくらいなら、減税する方が合理的であるとして、キャッシュバックは禁じ手です。もちろん、収入が少なくて、生活に困る人もいます。憲法は、「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利を保障しています。社会保障によって、所得の再配分の必要性が決められています。社会保障のレベルと、方法は、時代により見直す必要があります。例えば、将来は、ベーシックインカムを使うのもひとつの選択です。

金融緩和で、お金を簡単に借りられるようにすれば、景気が上向くというのは、ひとつの仮説にすぎません。仮説は検証する必要があります。ものやサービスを生産するために、欠けている要素が資金であれば、この方法で、経済は上向くでしょう。これは、発展途上国には、当てはまるパターンですが、日本のような先進国にはあてはまりません。

ものをつくっても売れないこともあります。たとえば、労働生産性が低く、同じ性能なのに、競合企業より、高い価格設しかできなければ、売れません。独占利潤が上がれば、競争優位になりますが、そのためには、他社が持っていないような技術、マネできないような技術をもっていなければ、ダメです。

日本経済は、1990年ころまでは、安い人件費に支えられて、価格競争力がありました。しかし、その価格競争力の源泉は、安くて、質の良い大量生産向けの労働力であったので、時間の問題で、新興国に、勝てなくなると予想されました。つまり、独占利潤を生むような独創的な先端技術を生みだす、技術開発や、独創性を育てる教育が必要であると考えられました。科学技術基本法ができて、科学技術予算は増えました。ゆとり教育で、詰込みをしないように教科書を薄くしました。1学級の生徒数を減らしました。これは、相対的に教員数を増やすことになりますから、一人当たりの教育費の公的負担を増やしたことになります。

その結果は、ビジネスにつながるような技術開発にむずびつかず、失われた20年になった訳です。

技術開発が思ったようにできなかったことが、考えられる停滞の原因のひとつです。技術革新を受け入れられないような、組織の存在が考えられる原因でしょう。特に、事務処理のDXについては、既存技術の活用がほとんどですから、技術開発の影響はないででしょう。

いずれにしても、仮説と検証で、原因を探して、原因を取り除く、科学的アプローチが必要です。

利益誘導で、関連分野に補助金をばらまくと、鎖国状態であれば、補助金をもらった企業は生き延びますが、労働生産性が上がらないので、海外との競争力がなく、経済は発展しません。

つまり、今までの、補助金をバラまくという方法は、問題解決どころが、問題を先送りにして、経済を停滞させる効果しかありません。ポイントは、労働生産性の向上または、独占利潤の2つのいずれかの達成になります。

公約には、科学的な根拠が必須ですが、その点は、あいまいな、バラマキと思われる公約も多くあります。

 

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