これは、今までのソフトごとに異なったプリセットと比べれば、大きな進歩です。
ただし、lutファイルには、V-log と呼ばれる動画用のパラメータもあって、静止画用と動画用のパラメータの互換性については、今一つはっきりしません。動画用のパラメータも3d lutで読み込めることが多くあります。
もっといえば、ベースカーブの規格も、統一されていません。最近では、RAWファイルにベースカーブのデータを添付している場合もあるようですが、全てではないようです。
LPレコードの場合、イコライザーカーブ(EQカーブ)は、 一般的には1954年以降は全てRIAAカーブに統一されていると言われています。これ以前は、規格はバラバラでした。SPレコードでは、回転数もバラバラでした。
デジタル写真の場合には、規格の統一という面では、SPレコード時代に相当している気がします。ただし、聴覚のダイナミックレンジは狭いので、CD規格にぼぼ収まるといわれています。
一方、アンセル・アダムスのゾーンシステムは、印画紙のダイナミックレンジに、原風景のダイナミックレンジをどうして押し込めるかという問題の解決法ですから、端から、忠実再生は考えていません。
darktableのシーン参照ワークフローも、ゾーンシステムのアイデアを引いていて、フュージョンを考えるとベースカーブに合理性はないと考えています。つまり、写真の現像においては、客観的な再生基準はありません。
3d lutのパラメータはソフトの違いを乗り越えて読み込めますが、同じパラメータを異なったソフトや、異なったカメラに読み込んだ場合に、全く同じことが起こるとは保証されていません。そもそも、ディスプレイの性質も、かなりばらついていますので、目で確認できる部分は限定的です。
とはいえ、読み込んで使えることは魅力です。特に、シーン参照ワークフローで、スタイルファイルが全滅に近いので、選択肢が広がることは歓迎できます。
問題は、スタイルファイルとプリセットは、darktableで作れますが、3d lutファイルは、darktableでは作れないことです。この問題は、実は多くのソフトで共通の問題でした。
2020年にPhotoshopは、カラールックアップテーブルを3d lut(3DL)で書き出せるようになりました。
以下が、その部分の説明です。
カラールックアップテーブルを書き出しするための使用可能な形式を 1 つ以上選択します。
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3DL
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CUBE
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CSP
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ICC プロファイル
Fuji Film Simulation Profilesのdarktable用のスタイルファイルも、カラールックアップテーブルを使っていました。つまり、次の3つは、お互いに関連しています。
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カラールックアップテーブル
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3d lut
さて、Photoshopで、3DLファイルを作ることができるようになったので、公開された3d lutファイルが、出てきているはずですが、まだ少ないです。「Photoshop の3D LUT配布します!」は、今のところ、確認できた唯一のものです。
それから、動画用の3d lutとして、「35 Free LUTs for Color Grading Videos」をあげておきます。
使用例は、下記に示しますが、その前に、実のところ3d lutは、使えるかをまとめておきます。
問題は、3d lutを使ったときに、画像がどのように変化するかを事前にどこまで予測できるかです。
darktableの3d lutモジュールは、同じフォルダに入っているパラメータであれば、マウスの中央ボタンを動かすことで、順に、3d lutを適用した結果を見ることができます。とはいえ、編集には、先にイメージがないと効率が極端に悪化しますので、3d lutを使う前に、結果が予測ができることが前提です。そうなるとカラーでは、フィルムシミュレーションが主体になります。これは、HaldCLUT(RT)とFuji Film Simulation Profilesがあればほぼ十分です。これ以外のカラー処理は、夕焼けなど、バランスの崩れた配色にする場合だけです。また、風景写真の場合には、正しい色が存在しないといっても、配色の自由度が極端に高いのは空だけです。
モノクロ写真を作らなければ、3d lutの価値はインスタンスを増やさない限りは、あまり大きくはならないのではないでしょうか。
以下の写真は、左が3d lutなし、右が、3d lutありです。
写真1、2、3が、「Photoshop の3D LUT配布します!」の3d lutです。
写真4は、「35 Free LUTs for Color Grading Videos」のContrailです。
4枚の写真ともに、それなりの効果が出ていますが、フィルムシミュレーションをやめて、使うほどの魅力があるとは感じられません。
写真5は、「35 Free LUTs for Color Grading Videos」のReeve38です。ここでは、3d lutだけでなく、カラーバランスなどほかのモジュールも総動員しています。編集画像は、HDR風で、元の画像より、インパクトはありますが、不自然です。
写真6は、Fuji Film Simulation ProfilesのAsteaを適用したものです。この場合には、3d lutを適用するだけでなく、カラーバランスの効果を弱めています。3d lutとカラーバランスの効果は重複する部分があり、最初に、カラーバランスで、画像を適宜調整したあとで、3d lutをかけると、効果が強すぎて不自然になることがあります。ここでは、フイルムシミュレーションなので、不自然であると気づくわけで、「Photoshop の3D LUT配布します!」や、「35 Free LUTs for Color Grading Videos」では、判断基準がなく、難しいところです。
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Photoshop カラールックアップテーブルの書き出し 2020/06/26
https://helpx.adobe.com/jp/photoshop/using/export-color-lookup-tables.html
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Photoshop の3D LUT配布します! 2020/03/10
https://note.com/sinoddl/n/nb0b413b34a21
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35 Free LUTs for Color Grading Videos
https://www.rocketstock.com/free-after-effects-templates/35-free-luts-for-color-grading-videos/
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