darktable4.4では、プリセットが改善されています。
プリセットとは、モジュールのパラメータの値です。
今回は、プリセットを理解する前提として、スタイルファイルの説明をします。
1)履歴とパイプライン
darktableでは、編集作業は、モジュール毎の編集を積み重ねて行います。
モジュールを呼び出して、編集を行うと、その操作は、履歴に追加されます。
つまり、darktableのすべての編集操作は、「モジュール名+パラメータの値」で記載されます。
この「モジュール名+パラメータの値」は、順番にXMPファイルに記載されます。
簡単に言えば、darktableのRAW画像編集とは、画像を見ながら、画像編集のスクリプトを作成する作業です。
画僧編集のスクリプトを履歴に記載する方法を、そのまま画僧編集に使うと、次の2点の問題点が生じます。
(P1)編集順序によって編集結果が変わってしまう。
(P2)無駄な編集が残ってしまう。
(P1)には、画像処理による情報の桁落ちが影響しています。これを避けるために、モジュールの実効順序は、最適な順序にパイプライン化されています。つまり、履歴の順番は、実際のモジュール処理の順番ではありません。このパイプライン化によって、ユーザーは、順序を気にしないでモジュールを呼び出すことができます。一方、履歴とパイプラインの実効順序が異なるので、時として、混乱の原因になることがあります。
(P2)の典型は、パラメータを設定して、元に戻す場合です。直前の編集であれば、アンドゥーが使えますが、途中に他の編集が入ると、この方法は使えません。これに対しては、履歴スタックの圧縮機能が追加されています。
darktableの編集作業は、プログラミングのモジュール構成が理解できている人には、非常に分かり易いです。また、モジュールには、高い柔軟性があります。
2)スタイルファイル
XMPファイルの一部のモジュール名とパラメータの値は、スタイルファイルとして保存しておいて、後で読み込んで、再利用できます。
ここでワークフローが問題になります。
シーン参照ワークフローを標準にして、表示参照ワークフローは、非推奨になりました。それに、合わせて、非常に多くの既存のモジュールが非推奨になりました。シーン参照ワークフローのモジュールは、RGB色空間を使っています。
表示参照のワークフローのモジュールは、Lab色空間を使っています。表示参照のワークフローのモジュールは、Lab色空間のLとabが独立なので、モジュールを再分割できるという前提で開発されています。しかし、ダイナミックレンジが7EVを越えると、Labの独立の前提が崩れます。その結果、表示参照のワークフローでは、細分化されたモジュール間で、微調整を繰り返す必要があります。
シーン参照ワークフローのRGB色空間では、RGBは独立しています。
しかし、RGB3つセットで編集する必要があります。このため、モジュール数は減りますが、1つのモジュールは巨大化して複数のパラメータを含むことになります。
つまり、多数の小型モジュールを非推奨にして、少数の大型モジュールに置き換えています。その結果、非推奨モジュールの数が多くなっています。
シーン参照ワークフローが出る前に作成されたスタイスファイルは、基本的に非推奨モジュールを含んでいるので、非推奨のスタイルファイルになります。
3)非推奨スタイルファイルを避ける方法
PhotoshopやLightroomでは、膨大な種類のプリセットが出回っています。
darktableのスタイルファイルは非推奨になったので、推奨で、利用できるスタイルファイルは少数です。
これをどう判断するかですが、ポイントは3点です。
(P1)PhotoshopやLightroomのプリセットの多くは、無茶な変換をしていて、大きな画像劣化が起こります。darktableの設計思想は、画像劣化を最小限抑えることなので、無茶な変化は設計思想と相いれません。画像劣化が気にならないのであれば、darktableを使う必要はありません。
(P2)darktableは、シーン参照ワークフローのモジュールを作成する時点で、モジュール数とパラメータ数が減っています。なので、スタイスファイルの効果は限定です。スラーダーを1、2か所動かす方が、スタイルファイルを読み込むより簡単です。とはいえ、パラメータの多いモジュールも増えてきたので、プリセットに名前をつけるのは有効な方法です。
(P3)ワークフローと独立したLUT3Dを使う。
LUT3Dを使う方法は、2種類のワーフローからは独立しています。
なので、非推奨スタイルファイルのような注意は不用です。
とはいえ、LUT3D変換は、変換に伴うオーバーレンジには対応していません。
ですから、LUT3Dなら、画像劣化がおこらないとは言えません。
とはいえ、非推奨スタイルファイルを使うよりは、気が楽です。
筆者が良く使うのは、Stuart SowerbyさんのFuji Film Simulation Profilesの以下です。
Fuji XTrans III [3DL] – 3DL LUTs to be used in any software that supports them (Affinity / Luminar / On1 etc)
次のスタイルファイルは、ベースカーブを含むので使いません。
Fuji XTrans III [dtstyle] – Darktable profiles converted from my HaldCLUT originals by Andy Costanza of the Darktable community.
筆者の知識は、この2018年のレベルでとまっています。
最近は、フジフィルムの新しいカメラの色をLUT3Dで再現する話題が、頻出しています。
新しいフジフィルムのカメラは使ったことがありませんが、改良が進んでいるのかも知れません。
筆者が、フジフィルムのカメラに関心が薄い理由は、色合いの話は、Jpegの話で、RAWの話ではないからです。
富士フィルムのカメラがなくとも、フジフィルムを再現した新しいLUT3Dを使えば色が良くなるのかも知れません。
4)まとめ
プリセットを他の人に引き渡すには、スタイルファイルを使います。
これがポイントです。
今回のバージョンアップで、プリセットに、Velviaのようなフィルムの名前を付けることも可能になりました。今後は、スタイルファイルの普及が進むかも知れません。
P.S.
以下のファイルで、LUT3Dではなく、スタイルファイルで、カラールックアップテーブルを使っているものもあります。これは、サイトの選択が、不注意でした。カラールックアップテーブルは、よりは、LUT3Dの方が画像劣化が少ないと思います。
The Largest Collection of HaldClut/Luts brought together
SkinRetouchのみ推奨
スタイルファイルをLUT3Dに置き換えたもの