権力とアナウンス効果(Critical Thinkingの例題)

新しいJOCの代表が決まって、さっそく、オリンピックの無人化開催はしないという発言を行ったようです。

総理大臣も、オリンピックは、開催すると繰り返し発言しています。

しかし、こうしたアナウンスには、効果があるのでしょうか。

総理大臣は、政府(行政)のトップですから、国家公務員の人事権を持っています。ある意味では、この人事権が、権力の源泉になっています。総理大臣が、アナウンスした場合には、国家公務員は、オリンピックの開催に向けた努力をしないと、左遷されるリスクがあります。つまり、総理大臣のオリンピックを行うというアナウンスは、国家公務員に対しては絶大な効果があります。地方公務員には、総理大臣の人事権は及びませんが、補助金行政で、国家公務員とつながっているので、間接的なアナウンス効果が期待できます。

一方、公務員以外の国民は、オリンピックをするとアナウンスしても、アナウンスに納得できなければ、アナウンスの効果はありません。実際に、アンケートを見れば、オリンピックの開催が難しいという回答比率が高いので、アナウンスに納得している人の割合が低いことが確認できます。

コロナウィルスは、日本語が理解できませんから、アナウンス効果はゼロです。従って、アナウンスすることと、感染の拡大または、縮小とは直接の関係はありません。非常事態宣言のように、アナウンスを国民が聴いて、マスクをして、行動抑制すれば、アナウンスとコロナウィルスと感染拡大の間には、間接的な因果関係が成立します。しかし、間接的な因果が成立するためには、「オリンピックを実施するためには、このような行動をとることが必要であるから、協力して欲しい。」と、具体的な行動要請をしなければ、目に見えるような間接効果は期待できません。

このように考えると、格段の根拠なしにオリンピックの無人化開催はしないという発言をする意図は、理解できません。なぜなら、この発言をしても、公務員以外には、オリンピックの無人化開催に対する実効はゼロだからです。

見落としがあるのかもしれませんが、今のところ、オリンピックの無人化開催はしないと発言をする意図には次の2種類しか想定できません。

  • 周辺に国家公務員が多いために、アナウンスすれば、世の中が廻るという認知バイアスが生じている。マスコミもイエスマンだけに限定していますから、国家公務員に準ずるかもしれません。

  • 効果がないことはわかっているが、仮に、開催できない場合に、責任を取らされたくないので、開催に向けて努力したというアリバイ作りをしている。

もちろん、ワクチンの接種計画や、PCR検査の計画など、具体的なコロナウィルス対策を提示した上で、無人化開催はしないとアナウンスするのであれば、まったく問題はありません。今回は、3月に、解決策を提示するという条件付きのアナウンスですが、コロナウィルスが拡大して、既に、1年たちますから、その間にできなかったことを、1か月でできると言われても、普通の人は、信じられません。もちろん、格段のことをしなくとも、自然免疫で、集団免疫が獲得されて、コロナウィルス問題が、夏には跡形もなくなっている可能性もあります。第3の可能性として、その発言意図もあり得ますが、あまりに、発生確率が低い事象に依存したシナリオと思います。