イデオロギーの時代がくるのか

ミャンマーでは、反政府運動が止まりません。

香港では、反政府運動は抑え込まれています。

イデオロギーでは、経済問題が解決することはないと考えます。むしろ、次の公式があると言われます。

  1. 経済成長が順調<=>イデオロギーの締め付けは緩い

  2. 経済成長が不調<=>イデオロギーの締め付けが強い

つまり、経済が不調になる状況では、イデオロギーの締め付けが強くなります。

ここでのポイントは、イデオロギーの締め付けと経済状態はセットで考えるべきだということです。

香港でも、ミャンマーでも、マスコミは、反対運動を自由を求める正義の戦いのように、経済と切り離して報道しますが、その視点では、見えなくなるものがあります。

例えば、反政府運動は、均衡状態を保てなければ、最終的には、政権転覆か、圧政でつぶされるかのいずれかになります。経済状態が悪化してくると、政権側は、均衡状態を保てなくなると考え、圧政にでます。典型的な例は、北朝鮮に見られます。

同じ視点で見ると、中国が、香港の反政府勢力の抑え込みに動き出したのは、政権が、経済成長に自信を持てなくなったためと思われます。

実際、中国の経常黒字は、大幅に小さくなり、一帯一路におけるインフラ投資の主役である国有の国家開発銀行と中国輸出入銀行による融資額は、2016年の750億ドルから、2019年には39億ドルでまで減っています。これから見ると、中国の政権は、経済成長が急速に減速すると考え、その前に、手を打っているように見えます。

日本の場合には、表向きは、反政府勢力が投獄されるような極端なことは起こりませんが、お友達内閣ができたり、忖度したり、反抗的な公務員を左遷するという発言が出たりします。ここで、言いたいことは、そのような場合には、政府は、実のところ、経済成長が見込めないので、先手を打っているように見えるということです。経済成長に自信があれば、労力の多くをそちらに割くはずで、ちまちましたことはどうでもよくなっているはずだという考え方です。

このような「イデオロギーの締め付けに効果があるか」といえば、一定の効果はあります。それは、人間の脳は、与えられた刺激に順応する性質があるためです。また、周囲の人と同調する性質もあります。ただし、どこまで、情報を遮断できるか、イデオロギーを制御できるかは、状況次第です。

中国では、交通違反は監視カメラで撮影された場合には、違反者の写真と名前付きで、違反状況の動画が、公開の場の大きなスクリーンに映し出されて、さらし者にされるようです。極端な気もしますが、日本の村八分も、あまり変わりがないのかもしれません。このように、効果のある締め付けの手法もあります。

ここ数年は、世界中で、経済成長率の低下が起こり、民主主義国家が減って、独裁国家が増加する傾向が見られます。独裁国家になると、市民のアクティビティが減って、経済の停滞の原因になります。中国は、アリババに制裁金を科すようですが、これは、経済成長をより低下させる負のスパイラルになるでしょう。上記の公式が正しければ、経済が回復しない限り、民主主義国家の数の増加は難しいと思われます。

もっとも、公式は単なる経験則で、絶対的な法則ではありません。悲観論に陥る必要はないのかもしれません。アメリカのバイデン政権は、民主主義の復活に懸けているようです。成功を期待したいと思います。

とはいえ、10年前と比べれば、これからは、イデオロギーの時代に、進みつつあると言えそうです。

 

  • Scope and Findings: China’s Overseas Development Finance Database

https://www.bu.edu/gdp/2020/12/13/scope-and-findings-chinas-overseas-development-finance-database/