自己変容の難しさ~帰納法と演繹法をめぐる考察(13)

自己変容の難しさ

自己変容について、すこし先走って、わかりにくい内容を先に書いてしまったので、補足しておきます。

自己変容が難しいという事例を示しておきます。

自分の正しさを確認する

商品について、評価をしている記事は、雑誌やWEBであります。一般には、商品の評価記事(レビュー)は、商品を買う前に、読んで、どの商品にするかの選択に使われると思われています。ミシュランの星のついたレストランで食事をするような行動パターンです。このため、通販サイトには、サクラを使った捏造レビューがあふれていると言われます。

一方では、レビュー記事は、商品を買う前より、買った後でよく読まれるという調査もあります。自分が購入した同じ商品のレビューを見て、「自分は、この商品を買ってよかった。」と納得するパターンです。これは、自己変容とは、逆の自己肯定になります。実は、世の中は自己肯定にあふれています。ベストセラーや、参照数の多いWEBを作るには、自己肯定を基本にした方がよいと思われます。そして、こうしたライフスタイルになれると、自己変容は、非常に耐えがたいものになります。

フェイクでない情報の難しさ

匿名のサクラをつかったレビューは問題かもしれません。あるいは、SNS上の匿名のフェイクニュースも、問題かもしれません。しかし、匿名でないことが、問題でない訳ではありません。

例えば、このブログでは、デジカメ関連の記事を書いています。WEBを見ると、新製品が出るたびに、評価レポートがでます。しかしながら、記事は、製品の良い点だけを書いている提灯もち記事だけです。カメラの比較は、センサーの性能比較を行っている海外のサイトのデータを中心に、センサー中心で、レンズを無視して行っています。それ以外には、機種間の比較記事は、スペックだけです。実際の写真による機種間の性能比較はありません。

こうしたメーカーの異なる機種の比較は、日本では「暮らしの手帳」。米国では、「コンシューマー・レポート」でしかできないのかもしれません。しかし、まともな情報とは言えない状況であることは確かです。(注1)

よく言われることは、メーカーが技術を小出しにしているのではないかという疑惑です。デジカメの場合には、ほとんどがIC部品なので、量産効果がないとコストダウンできないので、価格の高い高級機でも、価格の安い入門機でも、ほとんどは同じICを使っています。つまり、価格に関係なく同じ性能が出せるのですが、そうすると高価な機材が売れなくなるので、安い機材では、搭載している性能を封印して、差をつけているという疑惑です。あるいは、デジカメは2年毎に、新機種がでますが、次の機種更新用に、性能改良を小出しにしているという疑惑です。これも、真実を隠しているという点では、フェィクと思われます。

一方、このブログでは、darktableというfreeのRAW現像ソフトを紹介しています。先のクリスマスに、このソフトはv3.2からv.3.4にバージョンアップしました。その時のコメントが次です。

  • 3.2以降、2146人がdarktable + rawspeedにコミットしています

  • 700のプルリクエストが処理されました

  • 116の問題がクローズされました

ここには、性能を小出しにしているという疑惑が入る余地はありません。残念ながら、デジカメの新製品の性能には、これだけの明確な主張はありません。したがって、新聞が書き立てるように、新しいメディアはけしからんという情報自体がフェィクなわけです。新聞は、広告料をおさめているおおきな顧客であるカメラメーカーに都合の悪い記事はかきません。また、NHKも同調しているのは、政治的な圧力のためでしょうか。

  • 5Gか6Gか

あるいは、新聞を見ていると、日本は5G技術に乗り遅れたので、1つ先の6G技術の開発をする計画であるという記事が出たことがあります。5Gの特許に占める日本メーカーの割合は5%以下といわれています。一方、5Gとは、通信規約だけでなく、5Gの通信を可能とするシステムを実装しなければなりません。データが少し古いので、更新の必要があるかもしれませんが、ピーター・ディアマンデス(2030年すべてが「加速」する世界に備えよ)によれば、次のような実装が考えられているということです。

  • グーグル:気球数千個

  • ワンウェッブ:衛星2000個

  • アマゾン:衛星3236個

  • スペースX:衛星12000個

どれが、本命になるかはわかりませんが、どれかが本命になった時点で、6Gを開発するという発表は悪い冗談です。5Gに乗り遅れた時点で、日本は、情報後進国になっていると思われます。

現在のエコシステムを維持しながら、自己変容することはできません。

組織の自己変容をする場合には、新組織を組み上げた方が、容易です。

ディアマンデスのいうような世界になれば、自己変容できない年更序列の組織は、生き残っている方が例外になると思われます。

ディアマンデスの著書については別のところで、述べたいと思います。

 

  

注1:

米国の場合には、時々、競争メーカーより性能がよいいくコマーシャルを出すことはあるようです。