darktable事始めー最新版version3.2.1用(9)

補足(3)ポートレート写真の補足(1)

人物写真の種類

ポートレート写真にはリストにあげたような種類がありますが、入門者が特殊な器具なしで撮影するのであれば、室内ポートレートか屋外ポートレートに限られると思います。ポートレート写真の対象には、女性、子供、男性があり、男性を除いて、柔らかな仕上がりが理想です。撮影時の課題ですが、ピントは目にあっていること、キャッチアイが入っていることが望ましいです。最近の瞳認識は精度が上がっているようですが、瞳認識がない機種でも、焦点のエリアは狭く設定した方が失敗が少ないと思われます。とはいえ、古い写真集をみると、スタジオ写真でもない限りは、完全に目に焦点のあっていない写真も多く見られます。その点では、瞳認識が出てきて、焦点の精度に対する要求のレベルが上がってしまいました。

ボケについては、スマホの場合には人物と背景を分離して、背景にのみぼかしフィルタをかける方法が一般的と思われます。darktableでも、人物のマスクを作れば同様な処理は可能です。一方では、入門用のレンズ交換式カメラにぼかしコントロール機能がついています。スマホと同じことができると思ったら、単なる絞りだったこともあります。紛らわしい名前はやめてほしいと思います。ボケが大きく注目されるようになったのは、今世紀になってからという話もあります。確かに、前世紀のポートレート写真集をみても、ボケが目立つ写真は多くはありません。ボケは手段であって、目的は主題の人物を目立たせることですから、露光や彩度を使ってもそれは可能です。ボケは写真とともに発明されたもので、絵画にはない表現です。露光は、トーンイコライザーで主題と周辺を簡単に変えられます。彩度はカラーバランスで変えられます。ポートレートの現像では、ともかく主題が引き立つように注意することが重要です。それを、露光と彩度で行う方法は、名画を見れば参考になります。画像編集による人工的なボケはそのあとでよいと思うので、今回は扱いません。また、人物は浮き上がらせる露光と彩度の作りかたは基本ですので、以下では扱いません。

ボケはf値で決まりますが、レンズの数値に現れない性能に、柔らかさと色乗りがあります。最近のレンズの性能は解像度で評価されるので、解像度の高いレンズが増えています。昔は銘レンズは長く使えるといわれていましたが、最近のレンズは、改良されるごとに、解像度が上がります。このため、解像度では、アダプターを付けて古いレンズを使う意義はなくなりました。解像度の高いレンズで撮影すると、くっきりとは写りますが、柔らかくはうつりません。通常の良いレンズが、ポートレートでは、悪いレンズにもなります。このため、各社が柔らかく写るポートレート用のレンズを、作っています。

darktableでポートレート画像を現像する時の目標は、ポートレート専用レンズ程はうまくいかないとは思いますが、画像を柔らかくすること、肌の色乗りをよくすることです。もちろん、ポートレート専用レンズを使った場合でも、同様の処理で、その長所をより引き出すことが可能です。

 

 

 

モジュールの選択

Guillaume Martyさんの基本現像では、強制的に自動実行されるモジュール群のあとで、次のモジュールを使うことを勧めていました。

  1. 自動レンズ補正

  2. クロップと回転

  3. 露光

  4. フィルミックRGB

  5. トーンイコライザ

  6. ローカルコントラスト

  7. カラーバランス

今回もポートレート写真で、使ってみる価値のあるモジュールやパラメータを紹介します。

モジュール単位の追加はコントラストイコライザーとlut 3Dです。

カラーバランス:カラーバランスは彩度をあげることに使われることが多いですが、肌を白く見る場合には、output saturationを写真1のように、100%より小さくする方法もあります。

ローカルコントラスト:ローカルコントラストを使う場合には、ポートレートでは、写真2のようにhighlightsとshadowsは0%かそれに近い値を用いると、絵が柔らかくなります。

トーンイコライザー:トーンイコライザーのマスクのパラメータ設定で画像の柔らかくすることができます。パラメータ設定の仕方がわからない場合には、写真3のように、プリセットのsoftを参考にしてください。

コントラストイコライザーコントラストイコライザーでも画像を柔らかくすることができます。これは、写真4のように、スタイルファイルのSkinRetouchを使うと便利です(注1)。

lut 3D:肌色の表現にlut 3Dのフィルムシミュレーションを使う方法があります。

(以下追記

カラーゾーン:プリセットにnatural skin toneがあります。効果は弱目です。)

注1:SkinRetouchはフランスのdarktableのサイト(下記に表示)にあるスタイルファイルで、コントラストイコライザーのマスクを使って、肌色の部分だけを柔らかくします。同じ、サイトにポートレート用の次のスタイルファイルがありますが、SkinRetouch以外は、ベースカーブまたはトーンカーブを使っているので、シーン参照ワークフローではお勧めできません。

Shanghai,SkinRetouch,The 300 Look (soft),The 300 Look (strong),Traitement Croisé#2,Warm Portrait,Wedding Day

 

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写真1 カラーバランス

 

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写真2 ローカルコントラスト

 

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写真3 トーンイコライザー

 

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写真4 コントラストイコライザー

 

 

  • SkinRetouch

https://darktable.fr/download/Styles/index.html

使用した写真は、「FREE RAW PHOTOS FOR EDITING」というサイトからダウンロードしたもので、特に、ライセンスの制限はないようです。

  • FREE RAW PHOTOS FOR EDITING

https://www.signatureedits.com/free-raw-photos/