補足(3)ポートレート写真の補足(1)
人物写真の種類
ボケについては、スマホの場合には人物と背景を分離して、背景にのみぼかしフィルタをかける方法が一般的と思われます。darktableでも、人物のマスクを作れば同様な処理は可能です。一方では、入門用のレンズ交換式カメラにぼかしコントロール機能がついています。スマホと同じことができると思ったら、単なる絞りだったこともあります。紛らわしい名前はやめてほしいと思います。ボケが大きく注目されるようになったのは、今世紀になってからという話もあります。確かに、前世紀のポートレート写真集をみても、ボケが目立つ写真は多くはありません。ボケは手段であって、目的は主題の人物を目立たせることですから、露光や彩度を使ってもそれは可能です。ボケは写真とともに発明されたもので、絵画にはない表現です。露光は、トーンイコライザーで主題と周辺を簡単に変えられます。彩度はカラーバランスで変えられます。ポートレートの現像では、ともかく主題が引き立つように注意することが重要です。それを、露光と彩度で行う方法は、名画を見れば参考になります。画像編集による人工的なボケはそのあとでよいと思うので、今回は扱いません。また、人物は浮き上がらせる露光と彩度の作りかたは基本ですので、以下では扱いません。
ボケはf値で決まりますが、レンズの数値に現れない性能に、柔らかさと色乗りがあります。最近のレンズの性能は解像度で評価されるので、解像度の高いレンズが増えています。昔は銘レンズは長く使えるといわれていましたが、最近のレンズは、改良されるごとに、解像度が上がります。このため、解像度では、アダプターを付けて古いレンズを使う意義はなくなりました。解像度の高いレンズで撮影すると、くっきりとは写りますが、柔らかくはうつりません。通常の良いレンズが、ポートレートでは、悪いレンズにもなります。このため、各社が柔らかく写るポートレート用のレンズを、作っています。
darktableでポートレート画像を現像する時の目標は、ポートレート専用レンズ程はうまくいかないとは思いますが、画像を柔らかくすること、肌の色乗りをよくすることです。もちろん、ポートレート専用レンズを使った場合でも、同様の処理で、その長所をより引き出すことが可能です。
モジュールの選択
Guillaume Martyさんの基本現像では、強制的に自動実行されるモジュール群のあとで、次のモジュールを使うことを勧めていました。
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自動レンズ補正
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クロップと回転
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露光
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フィルミックRGB
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トーンイコライザ
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ローカルコントラスト
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カラーバランス
今回もポートレート写真で、使ってみる価値のあるモジュールやパラメータを紹介します。
モジュール単位の追加はコントラストイコライザーとlut 3Dです。
カラーバランス:カラーバランスは彩度をあげることに使われることが多いですが、肌を白く見る場合には、output saturationを写真1のように、100%より小さくする方法もあります。
ローカルコントラスト:ローカルコントラストを使う場合には、ポートレートでは、写真2のようにhighlightsとshadowsは0%かそれに近い値を用いると、絵が柔らかくなります。
トーンイコライザー:トーンイコライザーのマスクのパラメータ設定で画像の柔らかくすることができます。パラメータ設定の仕方がわからない場合には、写真3のように、プリセットのsoftを参考にしてください。
コントラストイコライザー:コントラストイコライザーでも画像を柔らかくすることができます。これは、写真4のように、スタイルファイルのSkinRetouchを使うと便利です(注1)。
lut 3D:肌色の表現にlut 3Dのフィルムシミュレーションを使う方法があります。
(以下追記
カラーゾーン:プリセットにnatural skin toneがあります。効果は弱目です。)
注1:SkinRetouchはフランスのdarktableのサイト(下記に表示)にあるスタイルファイルで、コントラストイコライザーのマスクを使って、肌色の部分だけを柔らかくします。同じ、サイトにポートレート用の次のスタイルファイルがありますが、SkinRetouch以外は、ベースカーブまたはトーンカーブを使っているので、シーン参照ワークフローではお勧めできません。
Shanghai,SkinRetouch,The 300 Look (soft),The 300 Look (strong),Traitement Croisé#2,Warm Portrait,Wedding Day
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SkinRetouch
https://darktable.fr/download/Styles/index.html
使用した写真は、「FREE RAW PHOTOS FOR EDITING」というサイトからダウンロードしたもので、特に、ライセンスの制限はないようです。
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FREE RAW PHOTOS FOR EDITING
https://www.signatureedits.com/free-raw-photos/