コロナウィルス情報中毒と「雪ウサギと闇カラスの定理」~コロナウィルスのデータサイエンス(88)

雪ウサギと闇カラスの定理

「雪ウサギと闇カラスの定理」というのは、筆者が勝手に名前を付けて作った定理です。

白い雪の上の白ウサギはみえませんし、黒い闇の中の黒カラスもみえません。

ですので、写真の世界では、雪ウサギや闇カラスを撮影することはないだろうと考えて、露出は標準グレーにセットされます。標準グレーは、対数変換したときに、平均が、白黒半分ずつの時の露光です。対数変換は、人間の目の感度が、光量に対して、対数的に反応するという性質を表しています。

「雪ウサギと闇カラスの定理」というのは、対象物から得られるシグナルが、空間的に周辺と異なる場合に、初めて、認識できることを意味します。これを時間軸方向に展開すれば、刺激が認識できるのは、時間的シグナルの大きさが変化した時だけになります。シグナルが大きくても、変化しないと認識できません。

コロナウィルス情報中毒

今まで、コロナウィルスの情報が全くなかった時に、初めて、コロナウィルスのシグナルがインプットされれば、それは大きな刺激として認識されます。

しかし、毎日コロナウィルスのシグナルにさらされていると、シグナルによぼど、大きな変化がない限り、インプットに対する反応は低下していきます。最初に、武漢の感染者数や死亡者数が報告されたときには、「多数の犠牲者」と思います。次に、イタリアやスペインの感染者数や死亡者数が報告されたときには、「多数の犠牲者」と思います。さらに、米国の感染者数や死亡者数が報告されたときには、「多数の犠牲者」と思います。しかし、シグナルに対する反応はこの辺りで飽和してしまい、ブラジルやインドの感染者数や死亡者数をきいても、感覚的には、あまり「多数」とは感じなくなります。

同様な傾向は日本国内でのあります。感染者数、死亡者数、あるいは、行動制限のデータで似たようなシグナルを毎日聞かされているので、繰り返しによって、こうしたシグナルを脳が新しい刺激として、反応しなくなります。

テレビも、「コロナウィルス」を取り上げると視聴率があがるので、競って、特集番組を組みます。この時に、脳に与える刺激が大きい程、印象が強く、視聴率を稼げるので、被害を誇張する方向で番組を作成します。つまり、シグナルの量がいったん増えます。しかし、そのうちに脳はシグナルを刺激と受けとらなくなります。そうなると、コロナウィルス特集では、視聴率を稼げなくなります。現在は、ここまできていると思います。

リセットの可能性

このおなじようなシグナルの繰り返しによる生理反応の低下は、コロナ関係の記事を書いている筆者が書き手として感じている状況でにあります。書き手のシグナルを判断する感覚系が麻痺して、何を書くべきかの冷静な判断が出来なくなります。

コロナウィルス関係の情報は毎日大量に更新されていますので、記事を書くには、その中から、何が重要かを抽出する必要があります。考えられる手法は以下です。

  1. AIを使って、自動的にスコア評価します。

  2. ある種の動物的な感に頼り評価します。

  3. 解決に必要な手順がわかっている場合には、手順への適合性で評価します。

3.が出来ていることが望ましいのですが、今までは、視聴率稼ぎや、選挙での支持率稼ぎが優先されたため、合意形成可能な範囲ではできていません。そこで、2.になるのですが、コロナウイルス関係の情報シグナルに対する感覚が麻痺していると、まともな評価ができません

この症状は、筆者だけでなく、マスコミはもちろん、WHO、厚生労働省などの公的機関も見られます。

発信する情報は、以前の情報の繰り返しです。「PCR検査改善された、抗体検査が改善された、ワクチンの開発が進んでいる」などです。情報を受け取る側が繰り返しシグナルを刺激として受け取らなくなっていることは、「雪ウサギと闇カラスの定理」の応用ですが、情報の発信側も何を発信すべきかという優先順位の判断がほとんどできないという症状にかかっていると思われます。

リセットは可能でしょうか。

食味に対する趣向があります。外食では、塩味の強いもの、辛みの強いものが好まれます。激辛をあえて食べるひともいます。辛い物を食べ続けると、段々シグナルに対する反応が鈍って、より強いシグナルを求めるようになります。これを、リセットする方法は、軽い断食をして、そのあと、できるだけ、味の薄い食事から、やり直すことです。

この方法は、基本的には、薬物中毒の治療法と同じです。リセットには、原因となっているシグナルをいったん絶つ方法が必要と思われます。

言い換えますと、現在の社会は、コロナウイルス情報中毒にかかっていて、冷静な判断ができなくなっています。これは、情報の受け手だけでなく、発信側の問題でもあります。

もちろん、コロナウィルスに対する集団免疫が形成されて、被害がなくなれば、コロナウイルス情報中毒は自然になくなるでしょう。この方法は、リセットはせずに、自然治癒を待つという考え方です。

しかし、筆者は、困難ではあるが、リセットが必要だと考えます。その理由は以下です。

  • 集団免疫が形成されるまでには、時間がかかり、その間に、適切なコロナウィルス対策を判断が必要となる機会が多数あります。その場合に、判断力が落ちて、判断を誤ると被害が拡大します。これは、既に起こっていることでもあります。スウェーデンのような集団免疫政策をとるべきか、ロックダウン政策をとるべきか、明確は基準の説明はなく、冷静な判断ができない状態にあるように思われます。

  • コロナウィルス情報中毒は意図せずに生じた症状かもしれませんが、これを意図をもって行う手法は「洗脳」と呼ばれます。戦争が終わってみると、第2次世界大戦は、ベトナム戦争をなぜ防がなかった不思議な気がします。戦史は戦勝国の論理で書かれ、敗戦国が悪いというイデオロギーで描かれることが多いです。しかし、コロナウィルスが広がった現在をみれば、案外、情報中毒のリセットが出来ずに、判断を誤ったことが大きいのではないかと感じています。たとえば、未だ、多くの国では、コロナウィルスの死者数は、インフルエンザの死者数より少ないのですが、こうした発言は、パージや炎上の対象になりやすくなっています。この情報バイアスは、「雪ウサギと闇カラスの定理」では説明できませんが、リセットが出来れば、した方がよいです。