最悪の事態になりつつあるのかもしれない~コロナウィルスのデータサイエンス(49)

最悪の事態とは何か

一般に、コロナ禍においては、感染者数や死亡患者数が増えることが、最悪の事態と思われているかもしれません。しかし、筆者はそう考えてはいません。

筆者の考える最悪の事態は、政策の制御が効かなくなるアナーキーな状態になることです。

アナーキーになってしまう要因にはつぎのようなものがあります。

  1. 現状が把握できなくなる

  2. 政策手段がなくなる

  3. 食べていけない人の数が増える。

そしては、現在は、加速度的にこの3つのリスクが拡大しています。

以下に順を追って説明します。

1.現状が把握できなくなる

もし山に登っていて道に迷ったら、命の危険が生じます。これは、どちらに行くべきか判断できなくなるからです。現在位置が不明になることは、致命的なダメージを与えます。

国の行政機関は、通常、県や市町村に補助金を流していますので、依頼文書を出して、情報を集めます。国家公務員は、あつまった情報をみて、これで、現状把握ができたと思うことが多いのですが、集めた情報は99%バクが入っていて使いものになりません。こうした情報は、通常は予算要求に使われるだけでなので、合計のゼロの数があっていれば(桁があっていれば)、問題を引き起こすことは少ないので、バグのあるままで使われ続けています。筆者が確認できているバクをとる唯一の方法は情報を公開することです。こうすると、エラーを見つけた人から指摘が入りますので、バグとりをしていくと、次第に信頼できるデータになります。これは、IT系であれば、オープンソースでソフトウェアを開発する手法でもあります。

コロナウィルスのデータについて、(あまり多いので詳細な引用は控えますが、)次の問題点ができ決ました。

  • 県と、国のデータなど、ソースによるデータの差が大きく、信頼できない。そもそも、ファクスなどの紙媒体でのデータのやり取りのためかクロスチェックはなされていない。

    • 「都内の新型コロナウイルスの感染者数について、保健所から多数の報告漏れなどが見つかっている」

    • 厚労省はこれまで都道府県から報告を集計し、公表してた。感染者が急増した都道府県から詳しい情報が報告されず、実態と合わなくなっている」

  • PCR検査数が余りに少なく、統計的に信頼のできるデータが得られているとはいえない。

    • 「実際の感染者数、報告の何十倍かはわからず=尾身・専門家会議副座長」

つまり、現在位置が不明になっています。

感染者数についても、100人未満では、データ処理できないことは、分析をしたことのある人は体で覚えていると思います。

日本人の多くは、既に、弱毒タイプのコロナウィルスにかかって免疫をもっているという論文をかいた人もいるようですが、既に、米国ででは、サンプル調査で、免疫を持っている人の数を測定しているのですから、仮説を出すのでは、間に合わないとおもいます。

PCR検査については、医師だけでなく、歯科医師も可能にするようですが、韓国では、検査技師が主に行っていますし、医療崩壊を招きたくなければ、医師以外の人を投入しなければ間に合わないのは目に見えています。

データサイエンスでいえば、母集団の推定をするには、ランダムサンプリングか層別サンプリングのデータが必須です。研究デザインされていないデータでは、母集団の推定はできません。

既に集団免疫があるのであれば、行動制限政策は無用の長物で、経済を破壊しだけになります。これは致命的な政策ミスです。

ここにきて、データを軽視してきた付けが、吹き出しています。

2.政策手段がなくなる

行動制限をかけるなどの政策を行うためには次の方法があります。

  1. 法律に基づいて、逮捕、投獄、罰金を科す。

  2. 金銭のインセンティブで、行動変容を図る。

  3. 市民の良心に訴える。

  4. 行政指導をする。

なお、以前に説明しましたが、4は、補助金が流れている場合には、2.に、お金が流れていない場合には、3.になりますので、2.3.の特殊な場合とみなしてよいと思われます。

外国では、圧倒的に1.ですが、日本では、現在の法律では、1.はできないといわれています。1.ができない緊急事態宣言は、ブッラクユーモアとしか思われないのですが、この点は、置いて先に進みます。結局、2.か、3.かになります。

(2).金銭のインセンティブで、行動変容を図る場合

補正予算や2次補正予算で、おかねをばらまいていますが、効果は限定的です。

10万円くばるのに必要なお金は12兆円です。

日本のGDPは1000兆円くらいですから、仮に、10分の1がダメージを受けたとすれば、100兆円になります。

過去に、分割払いで大きなお金を投入したのは、直近では、東日本大震災の時で、復興特別税といいます。

これは、25年間で、1兆円弱の税収増になると予測されていますので、桁が小さく、参考になりません。

投入金額も5年間で、最大毎年数兆円レベルです。

お金を配って補償で、行動制限をかけることは、経済学的には無理です。

現在、業界がそれなりに従っているのは、金銭インセンティブでいえば補助金効果だと思います。

10万円もらっても、単身世帯であれば、2か月は持たないと思います。都市部では、1か月も無理でしょう。

お金を配るという検討が進んだ時に、お米券、野菜券を配る言う議論が出てきたことがあります。

これは、機会があれば、後援団体である業界にお金を流して、選挙対策をしたい政治家がいることを示しています。

補助金助成金が適切か否かは、関連業界の中の人間にしかわかりません。ある種のインサイダー取引が行われている可能性があります。国民に10万円配るというのも、口封じ対策かもしれません。

中国のコロナ政策が良いとは思いませんが、仮設病院の建設に対して、早急に予算措置がなされ、建設が進みました。日本では、未だ、ベッド数が確保できないといっています。これは、お金がコロナ対策ではなく、業界を潤すことに優先的に流れている可能性を示しています。

いずれにしても、企業活動の経済ダメージを経済的に補填することはできませんので、可能性のある経済政策は次に絞られると思います。

(3).市民の良心に訴える

 現在の行動制限が8割に達しないとは言え、それなりに機能しているのは、市民の良心、良識に訴える政策が機能しているからと思われます。ネガティブな表現をすれば、「草食系が多い」とか「村社会」であるということになります。

これが整理するためには次のような条件が想定されます。

  • 市民が政府を信頼している。

  • 経済的なダメージが、許容できる範囲内である

この条件は急速に毀損しつつあります。

3.食べていけない人の数が増える。

 経済活動が止まり、倒産が増えると食べていけない人の数が増えます。人間は生物なので、食べていけなくなれば、草食系が肉食系に変化します。非正規社員の問題など、問題を先送りしたつけが出てきています。実現可能な解法は、ベーシックインカムしかおもいつきません。食べていけないと、犯罪が増え、治安が悪化してしまいます。

 

政策手段の現状

非常事態宣言の解消については、既に、国の制御を外れています。米国は、州の予算と権限が強く、州ごとに独自の政策をしていますので、日本も、予算があれば地方自治体主導でもよいとは思われますが、これは未体験ゾーンです。この場合には、国の枠割は、自治体をまたぐ、課題に対応することになります。先ほど、ラジオのニュースから、「行動制限率より、自治体を超える人の移動の減少のほうが大きかったという」話が流れてきました。感染者のほとんどいない自治体では、行動制限をかけるより、人の移入、移出をチェックする方が有効です。しかし、4月12日には、全国に非常事態宣言を広げる理不尽な政策をしてしまいました。

非常事態宣言の解消については、分かりやすく説明するのであれば、常識的なコミュニケーションは

  • いつ、だれが、何を、何に基づいて判断する

を時系列で、項目ごとに明示することです。

実際には、

  • 非常時亭宣言は5月末まで延長する。

  • 14日に判断して、延長しないかしれない。

  • 「特定警戒都道府県」は延長するかもしれない。

  • 学校は、場合によって再開するかもしれない。

  • など............................................

とカオスになってしまいました。筆者の理解できる範囲を超えているので無視しています。

これは、話をしている人が、内容を咀嚼して自分の言葉で話していないことを意味します。

むかし、同じ話を繰り返すことを壊れたテーブレコーダと言いましたが、現在では、壊れたスマホになるのでしょうか。日本のマスコミは揚げ足取りをするので、墓穴を掘らない(辞職しない)方法として、壊れたテープレコーダになる訓練を受けた人が多数います。政治家の99%は、準備された作文を読むだけです。たまに、自分の言葉を使って、辞職に追い込まれる例はご存じと思います。

このように、現状は、加速度的に、政策制御不能ゾーンに突入しつつあります。

考えられるシナリオ

政策制御が不可能なった場合どうなるでしょう。

  • 集団免疫が既に獲得されていた場合:今までの政策はフェークだったので、普通の生活に戻りましょう。

  • 集団免疫が獲得されていない場合:コロナウィルスは制御不能になります。