非常事態宣言解消の先行事例を見る~コロナウィルスのデータサイエンス(50)

余談になりますが、12日の夜7時のNHKニュースをみていたら、「5月1日の専門家会議の実効再生産数は、4月10日が0.7」といっていました。あれ、「0.5」だったはずだけれどと思いました。また、ドイツでは感染者数が減っているのに、実効再生算数が増えているといっていました。タイムラグ扱いや、スムーザーのかけ方による変化はありますが、基本は、感染者数で、ベイズ更新をかけるはずなので、感染者数が減って、実効再生算数が増えることはないはずです。実効再生産数を悪者にしたいようです。

14日からの解除にも実効再生産数は使われないようです。

実効再生算数については、次回に詳しく論じたいと思います。

ここでは、、これから、14日に向けて、非常事態宣言の解消が話題の中心になると思われますので、その先行事例をさがしてみます。

先行事例の探索

現在、非常事態宣言に類するロックダウンなど(以下では非常事態宣言でまとめて説明します。)を部分的に解消している国には次のタイプが認められます。

  • 既に、感染が広まって、部分的に集団免疫が形成されつつある国

  • 非常事態宣言によって、感染経路が封鎖できたと推定されている国。この場合には、感染者数が少ない、感染の検査が進んでいる特徴があります。

感染者数の多い前者がニュースにはよく出てきますが、日本の参考にはなりそうにありません。

図1は東南アジアとオセアニアの100万人あたりの感染率と死亡率です。南アフリカはおまけです。

この地域の感染率と死亡率はEUほど高くはありません。感染をほぼ封じこめた、ベトナムと台湾、中国、ニュージーランドが低いのは当然して、それ以外の国も、あまり、大きな差はありません。

なお、このデータは5月9日のWIKIのデータですが、ベトナムなど一部の国のデータはそれより古い時期のデータが更新されていませんので、およその目安と考えてください。

 

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図1 東南アジアとオセアニアの感染率と死亡率

次に、最近の感染者数の変化に着目します。

Our World In Dataでアジアオセアニアの、感染者数の対数グラフをみると次のことがわかります。

(グラフ左下のSelect Countriesで表示する国をえらべます。)

  • 最近は増加が止まって、グラフが寝ている国:ベトナム、台湾、ニュージーランド、タイ、オーストラリア、マレーシア、韓国、中国

  • 最近も増加が止まらずに増え続けている国:シンガポールインドインドネシア、フィリピン

  • 最近も増加しているが速度が緩やかな国:日本

下線を引いた国は、検査数の多い国です。

人口当たりの検査数の多い国は、Our World In Dataによれば、5月9日時点で

1)デンマーク、2)イタリア、3)ニュージーランド、4)米国、5)カナダ、6)韓国、7)南アフリカ、8)インド、9)インドインドネシア

の順です。最後の2つは数字が小さいので無視してもよいかもしれません。

このようにみていくと、検査をあまりせずに、ウイルスの拡大がそれなりにとどまっている国に、タイとマレーシアがあります。以下のこの2か国を見ましょう。

タイ

4月3日から非常事態宣言が出され、5月3日に一部商業施設の営業制限などが緩和されています。

具体的には以下の措置が行われました。

  • 夜10時から早朝4時までの夜間外出の禁止

  • 陸路、海路、空路によるタイとの出入国管理措置

  • 政府による隔離・検疫措置

  • 国際航空便の出入国制限

  • 県をまたぐ必要性のない移動の自粛・延期

  • 最低限50%の在宅勤務

  • 大規模集会の禁止、人が多く集まる場所・感染リスクがある場所への立ち入り自粛

マレーシア

3月18日に、国民の外出や民間企業の活動を大幅に規制する活動制限令を導入した。

5月4日からは大半の経済活動の再開を認めるなど一部の規制を解除した

5月10日、州をまたいだ移動などを原則禁止する活動制限令の期限を4週間延長し、6月9日までとすると発表。

州をまたぐ移動を行う場合には事前に最寄りの警察署において許可を得る必要があるため,州をまたぐ移動の必要性が生じた場合には最寄りの警察署(Balai Polis)に相談する。

まとめ

こうしてみていくと、マレーシアでは、県(州)をまたぐ移動が大きく制限されていることがわかります。

タイについては、これでだけでは詳しいことはわかりません。

筆者は、最近はマレーシアにはいっていないので、状況はよくわかりませんが、タイには、2年おきくらいに行っています。タイには、めぼしい鉄道がないので、移動手段は飛行機か自動車になります。専用の自動車道路はなく、幹線国道が高速道路の代わりにもなっています。国道1号線を移動しているときもも、よく、警察の検問があります。ですから、日本に比べれば、県をまたぐ移動が厳格に管理されていると思われます。

感染拡大防止には、県をまたぐ移動の管理が大きな効果があると思います。

県をまたぐ移動は、まだ、制限が残っているように思われます。

日本でも、非常事態宣言が解除されても、県をまたぐ移動は管理されるべきであると思います。

次回は、この理由を考えてみたいと思います。

資料

タイ全土に夜間外出禁止令を発出、非常事態令に基づく措置第2弾

2020年04月03日 JETRO ビジネス短信

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/04/153b9420e9c358c6.html

タイ政府、非常事態措置の延長に伴う措置概要、出口戦略を発表

2020年05月07日 JETRO ビジネス短信

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/05/c2ef6075516547fe.html

マレーシア、活動制限令を延長 6月9日まで

シンガポール=中野貴司】マレーシアのムヒディン首相は10日、州をまたいだ移動などを原則禁止する活動制

ロイター

 

在マレーシア日本大使館

https://www.my.emb-japan.go.jp/itpr_ja/newinfo_20032020B.html

マレーシア、活動制限令を延長 6月9日まで 2020/5/10 17:02 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58921410Q0A510C2000000/

Total confirmed COVID-19 cases: how rapidly are they increasing?

https://ourworldindata.org/how-to-embed-charts

国・地域毎の2019年コロナウイルス感染症流行状況 wiki

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E3%83%BB%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E6%AF%8E%E3%81%AE2019%E5%B9%B4%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E6%B5%81%E8%A1%8C%E7%8A%B6%E6%B3%81