地域振興のための写真撮影と処理(1)(darktable3.0第87回)

シリーズのはじめに

筆者が、このブログをはじめた動機のひとつは、地方の観光ガイドがあまりにお粗末だと感じた点にあります。

日本では、特に地方では、人口が減っていて、農林水産業以外に、製造業がない地域では、地方活性化は観光頼みになっています。

観光には、オーバーツーリズムの問題もあり、顧客の人数が多ければよいというわけではありませんが、ともかくにも、その地域の魅力を発信して、地域外の人に価値を認めてもらうところからスタートする必要があります。

いまでは、どこの県や市町村にも、観光対応の行政窓口があります。また、どの市長村にも観光協会があります。これらの組織は、ほぼ100%観光パンフレットを作って配布しています。

  • 観光パンフレットの配布については、いくつかの場合には、次のような問題点があります。

  • データが数年に一度しか更新されていない。中には、廃業した食堂などが、データ更新されず、そのまま情報提供されていることがある。

  • 紙媒体中心で、外部からネットで情報の取得ができまない。印刷されたパンフレットのストックがなくなると、情報自体が手に入らなくなる。

  • スマホの位置情報などとリンクした動的な情報提供になっていない。

  • 言語化ができていない。

まだ、あるとは思いますが、及第点をあげられるのは、京都市など、大手だけで、小さな市町村にいくと、だいたい、問題多発になっています。

さて、回り道をしましたが、言いたいことは、パンフレットの不備ではなく、それ以前の掲載写真の問題です。

地方の市町村は財政が豊かでなく、名前の通ったような有名なカメラマンに写真撮影を依頼するだけの予算はとれません。また、カメラマンの方でも、首都圏であれば、交通費に伴う出費が小さいので、比較的安いコストで撮影を請け負えますが、地方での仕事は高くなってしまいます。

その結果、地方の観光パンフレットに載っている写真は壊滅的な状況です。観光に必要な写真は、次の2種類と思われます。

  • 風景写真(美しい自然や環境、文化財の魅力を伝えるもの):これは金太郎飴のようになっていて、新たに魅力を発見するといった視点が欠けていることが多いです。

  • 食事写真(食事や宿泊の魅力を使えるもの):これは、メニューが写っているだけで、食べたくなるような写真といえないことが多いです。

これらの写真を見て、「あなたなら、観光に行きたくなりますか」ときかれれば、「いいえ」と答えたくなるものがほとんどです。もちろん、誰かが、インスタグラムに、感度的な写真を投稿すれば、観光客が増えるかもしれません。しかし、現在は、自治体や、会社が、振興ビジネスにインスタグラムを使っている時代です。コンテンツを他人まかせにすることは推奨できません。

パンフレットに乗せる写真は、最大でも、A5(A4パンフレットの半分)くらいで、コンデジでも十分な場合が多いです。でも、とりあえず写っている写真ではだめで、魅力を伝えることが必要です。

地方では、人があまりいませんので、その方にいる人が自分で、写真を準備する必要があります。インスタグラマーはたまにしか地方にいきませんでの、決定的な瞬間が撮れることは少ないです。

そこで、ここでは、地方にいる人が、どうしたら、観光に有効な写真をとることができるか考えます。

そこで、以下では、darktableを使いながら、地方振興のための写真の撮影と編集の説明をします。

写真の撮り方の基本

写真はものを撮影しているのではなく、撮影している場の光を記録するものです。ものは、光の場のなかから、人間の脳が復元作業を行って描き出すものです。

撮影者の脳の働きとパンフレットを見る人の脳の働きはことなります。パンフレットを見る人は、99%は撮影者がみるのと同じように脳内で、光の場を復元することはないのです。見る人に良い印象を与える写真とは、見る人が光の場を復元する中で、感動的な発見がある写真になります。このときに、写真のもつテーマが問題になります。テーマのはっきりしない写真は感動を与えることができないのです。

例をあげて説明します。

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十和田湖

 

 

この写真は、十和田湖にいったときに、5分ほど時間がとれたので、撮影した写真です。

写真が、曇っていて、色乗りがよくないことは事実ですが、こうした表現の問題は、次回以降にdarktableを使ってある程度は回避できます。大きな問題は、それ以前にあります。

この写真には、湖と遊覧船が写っていますが、それだけです。

撮影した本人には、この写真を十和田湖でとったという記憶と画像を結びつけますが、そのリンクのない人にとっては、単に湖の写真にすぎません。

そもそも、この写真では、湖を撮りたかったのか、遊覧船を撮りたかったのかもはっきりしません。

つまり、この写真には、伝えたいテーマがないのです。

このようなテーマのない写真を使って、魅力を使えることはできません。

仮に写真のテーマを十和田湖にしたしましょう。

写真の中に「十和田湖」という看板でも入っていない限り、見た人は、写真が十和田湖であることを判別するkとはできません。

しかし、どのような湖として、十和田湖を使えたいのかを考えれば、あるべき画像は決まってみます。

例えば、水のきれいな、透明度の高い湖をいうイメージを理解してもらうには、そのようなことがわかる画像を作る必要があります。

とことが、地方の観光パンフレットには、このレベルの写真が満載なのです。撮影者とパンフレットを作成する地方の人は、写真をみれば、例えば、十和田湖が写っているから、これで良しと考えているのでしょうが、その地域の魅力を使える写真としては、不十分です。

この技術は、アートに属する部分があるので、どのような写真がよいかは一概にいえませんが、先進事例を参考するとよいでしょう。

例えば、タイの観光庁の日本語ページ(パンフレットもあります)と振興したい地方の観光パンフレットを、以上のような視点で、比較検討することをお勧めします。

タイ観光案内サイト

https://www.thailandtravel.or.jp/

これと、日本の観光庁のサイトの下にあるパンフレットを比較するのも、一つの研究方法です。

改善すべき点がすぐにわかります。

http://www.mlit.go.jp/kankocho/

ここには、観光自治体のリンクもあります。

http://www.mlit.go.jp/kankocho/kanko_links.html

くれぐれも、国内のレベルの低いパンフレットを基準に、隣町と、同じレベルのパンフレットを作らないように心がけることが重要です。