仮面のショパン

ショパンピアノ曲を時々聞いています。

 

レコード芸術などの音楽評論雑誌が廃刊になりましたが、基本的には、どのCDがお薦めという評価です。これは、ペンギンCDガイドもあり、日本だけの現象ではありません。

 

一方、英語版のウィキペディアをみると、演奏家の解釈について触れられています。

 

「演奏=解釈+技術」なので、技術がないと解釈を実現することが困難なことになります。

 

とはいえ、リストやラフマニノフのような技術的に難しい曲を除けば、技術が絶対的な障害にはなりません。

 

さて、疑問はショパンの曲です。

 

ショパンは、ワルツ、マズルカといった定型リズムの曲を書いています。

 

マズルカのリズムについては、ポーランドの秘術があると言われています。

 

著名な作曲家で、定型リズムの曲を書いている人は少数です。

 

ショパンがワルツのような定型リズムを採用する場合、リズムがきっちり繰り返し演奏されることを期待していたとは思われません。

 

つまり、定型リズムは仮面であって、本音は、楽譜に見えない変化にあると思われます。

 

そう考えると、リズムをどのように崩すか、あるいは、リズムとメロディーのバランスをどうとるかが問題になります。

 

筆者にとって、ショパンの解釈のスタンダードはノバイエスです。

 

ノバイエスの演奏は上手ではないかもしれませんが、解釈を考える上では、ノバイエスの演奏の意図は、極めて明確で、部分ごとに、演奏の解釈を変化させていることが手に取るようにわかります。

 

解釈とは何かが分らなくなったら、ノバイエスの演奏を聞くことにしています。

 

さて、解釈を調ベるには、You tubeで演奏の一部を聞いてみれば、十分です。

 

自由度の高い演奏をしている演奏家は少ないです。

 

圧倒的な自由度がある演奏家は、オールソンです。

 

それから、どのようなマジックがあるのかわかりませんが、ソコロフの演奏の響きは独特で、一部には、ドビッシーのようなトーンを聞くことができます。

 

ルービンシュタインは、典型的なリズムの崩しがあり、リズムとメロディのバランスも微妙に変化します。このあたりバランス感覚は絶妙ですが、自由な演奏には、聞こえません。

 

オールソンが草書であれば、楷書のようなショパンの演奏もあり、背筋が伸びている感じで、関心はしますが、正直に言えば、面白くはありません。繰り返しきけば、単調に聞こえてしまいます。

 

ポリーニは、楷書のような楽譜に忠実な演奏に聞こえますが、その中に変化を忍ばせていて、一筋なわではいかない演奏です。

 

リズムとバランスの崩し方には、伝統的な方法があり、グランドマナーの演奏家は、伝統的な崩し方をします。グランドマナーは解釈というよりは、習慣に近いと思います。最近の演奏は、グランドマナーをはずれた解釈にシフトしているので、あえて古い演奏を取り上げる必要はないと感じます。