「6月27日の米大統領選の討論会の報道」の「4)都知事選の論点」とすべき内容ですが、改訂をしないで、追加で書きます。
つぎのメタ質問を考えます。
「都知事選で、明確にすべき論点はなにか」
「複数の論点に、優先順位をつけるとしたら、どうすべきか」
今回は、筆者の見解です。
筆者は、日本経済が行き詰る原因は、リバタリアン(市場経済)を放棄した政治にあると考えています・
政治家は、「橋の哲学」を信条として、経済合理性を否定して、弱者救済を訴えます。
しかし、全ての弱者を共催する財源はありませんので、「弱者救済」とは、「補助金を受け取れるエリート弱者」と「補助金を受け取れないリアルな弱者」に分断されます。
エリート弱者は、政治献金の多い弱者です。
「橋の哲学」の弱者救済は、「補助金を受け取れるエリート弱者」を優先して、「補助金を受け取れないリアルな弱者」を切り捨てることで成立しています。
これは、筆者の仮説ですが、「全ての弱者を共催する財源はない」ことは、数学の真理です。
「橋の哲学」は、故美濃部都知事が、ファノンの著書から引用しています。
アルジェリア独立運動家のファノンの経済学は、レーニン主義です。
小倉健一氏は、東京都知事選の候補が、<右から左まで主要候補すべてが「学校給食費無償化」を掲げている>と批判しています。
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右から左まで主要候補すべてが「学校給食費無償化」を掲げている
それにしても、右から左まで主要候補すべてが「学校給食費無償化」を掲げている(中略)バラマキ選挙になってしまっている。かつて、維新の共同代表である吉村洋文大阪知事が「給食費無償化は共産党の主張だよ。ちょっとひどい。」(2019年3月18日、Xへの投稿)と批判していたが、まったくその通りだ。
(中略)
すでに貧困家庭は給食費を払う必要がない。そして、無償化(実態は税金)によって、サービスの質が低下するのはデータや過去の歴史が物語っているファクトだ。(中略)維新の吉村知事の「給食費無償化は共産党の主張だよ」という指摘は正しい(吉村氏はなぜか今になって給食費を全額税負担を本格実施させていっている)。
なんでもかんでも税金で無料にしたところで、現役世代がその支出を払わされる
なんでもかんでも税金で無料にしたところで、結局、現役世代がその支出を払わされるのである。給食費を税負担することが「次世代への投資」という政治家が増えてきたが、論理的(その税金を納めている多くは現役世代なのだから)にもありえない。子どもの給食もまずくなる。石丸候補にいたっては、安芸高田市でせっかく支出を絞ったのに、そこでできたお金をそっくりそのまま給食費に注ぎ込んでしまったわけだ。日本は、共産主義の国ではないのだから、自分の子どものごはんは自分で負担すべきだろう。
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<< 引用文献
超攻撃的スタイル蓮舫「とうとう3位墜落の危機」迫る石丸…右から左までバラマキ合戦の大炎上都知事選 2024/06/29 MINKABU 小倉健一
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小倉健一氏の説明では、「共産党の主張(給食費無償化)」は、一過性に見えます。
しかし、レーニン主義は、「橋の哲学」として日本の政治に組み込まれています。
小倉健一氏は、無償化で、給食の質が落ちると主張しています。
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無償化(実態は税金)によって、サービスの質が低下するのはあらゆるデータや過去の歴史が物語っているファクトだ。どうしてサービスの質が落ちるかについてはさまざまな要因がある。その一つは、自分たちで支払ったものについては、コストとパフォーマンスが把握しやすいが、公金から支出されれば、この給食費がいくらかかったのかが見えにくくなってしまう。
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無償化は、市場経済から中抜き経済への移行です。
市場経済から中抜き経済への移行が止まらない理由は、中抜き経済には、利権が発生するためです。これは、政治家と官僚の利益になります。
給食の無償化は、給食にかかる費用を家計から吸い上げて、自治体を通じて、業界に配分します。その結果、給食ビジネスという市場が消滅します。
給食の無償化は、社会主義政策になります。
小倉健一氏は、
<なんでもかんでも税金で無料にしたところで、現役世代がその支出を払わされる。(中略)給食費を税負担することが「次世代への投資」という政治家が増えてきたが、論理的(その税金を納めている多くは現役世代なのだから)にもありえない>
と言いますが、この表現は正確でありません。
加谷珪一氏は次のように説明しています。
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日本でも本格的なインフレが始まったことで、低金利が当たり前ではなくなっている。(中略)
利払い費を除いた収支がいくら黒字でも、金利上昇で利払い費が増加すれば、利払いのために国債を追加発行する必要に迫られる。(中略)
日本の国民がインフレという形の大増税を素直に受け入れるのであれば話は別だが、大増税を望まないのなら、プライマリーバランスに代わる新しい財政収支目標が必要である
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<< 引用文献
政府が「骨太の方針」で掲げる「プライマリーバランス黒字化」は、もはや意味を失ってしまった 20204/06/26 Newsweel 加谷珪一
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2024/06/post-284.php
>>
<なんでもかんでも税金で無料にしたところで、現役世代がその支出を払わされる>という発言には、収支が、現時点で完結するという前提があります。
小倉健一氏の論理は、東京都(自治体)の場合には、概ねあてはまります。
「橋の哲学」を実行した美濃部都政は、10年余りで、行き詰まりました。
しかし、その時代の日本経済には、競争力があったので、財政赤字から回復するころができました。
現在の日本経済の競争力を見ていると、今後、東京都が財政赤字になった場合に、黒字に転換する力があるとは思えません。
国レベルで実施された「橋の哲学」は、赤字国債の積み上げ(低金利)によって、円安をまねいています。
「プライマリーバランス黒字化」する以上に歳出を減らさないと、日本の国民がインフレという形で大増税を被ることになります。
つまり、「学校給食費無償化」は、子供をもつ有権者に、自分たちは、「エリート弱者」であるという印象を与えて、支持票の投票を促します。しかし、有権者の実態は、
「学校給食費無償化」のつけは、今後のインフレで払わされる可能性が高いと言えます。
小倉健一氏は、<給食費を税負担することが「次世代への投資」という政治家が増えてきた>と紹介していますが、この「次世代への投資」は、インフレという負の投資になっている可能性が高い訳です。
「橋の哲学」の破綻は、円安にあらわれています。
円安は、国の政策の課題であり、都知事選の課題でないという主張もあり得ます。
しかし、円安によって、実質賃金が半分になったら、生活困窮者が続出します。
実質賃金が半分になったら、そのことを無視した政策はできません。
都知事選は、政党色を薄めたステマ選挙であると主張する人もいます。
この点を考えれば、都知事選の第1の課題は、補助金を使わない所得減少問題の解決法になる必要があります。
フランスで30日、国民議会(下院、定数577)選挙の第1回投票が行われました。即日開票されました。
この原稿執筆時点では、まだ、結果が届いていませんが、事前調査では、マクロン大統領を支える与党連合は支持率20%前後で伸び悩み、下院第3勢力への後退が濃厚です。
フランスのマクロン大統領には、黄色い部ベスト運動など反対者も多くいますが、その政治は、フランス社会を変えてきました。
マクロン大統領の構造改革は大胆で、抵抗にあっていますが、まけていません。
今井佐緒里氏は、選挙の直前に、病欠の補償金を大幅に減らすという、国民を敵にまわすような提案をするから、マクロンの党は議席を減らしたと考えています。
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選挙後にすればいいものを。そういう事を選挙直前に平気でやるのが、マクロン政権の率直な良いところでもあり、傲慢に見えないでもない悪いところでもある。
フランスでは、病気の時は有給を使って休むことなどしない。有給は有給で労働者の休む権利だから別物。病欠が始まり、最初の数日は何も補償が出ない待ち時間がある。公務員だと2日めから、会社員だと3日。それ以降は、全額ではないが、国から補助金が出るのだ。この待ち時間を1週間にするという。
この費用が、2027年には172億ユーロに達すると言われる社会保障の大赤字の、半分弱を占めている。
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<< 引用文献
マクロンの解散総選挙の爆弾宣言のあと、フランス政局が革命時のように凄いことになっている 2024/06/12 今井佐緒里
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/045843b2bafdfe2f4ef903cbe557a583751f8a30
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アベノミクスの第3の矢が、まったく進まなかったことに比べれは、大きな違いです。
政治家が、ばら撒き政治しか出来ないのは、日本の特殊事情です。
マクロン氏は、今回の選挙で負けても、中期的に負けを取り返すことができるとかんがえているようです。
フランスでは、パリ市長選挙の争点が、「学校給食費無償化」のようなテーマになることは考えられません。