今回のテーマは、銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4 C の設計思想です。
このレンズは1万円程度で入手できるので、格安レンズになります。
WEBで見ると安い割には良く写ると書かれています。
MFで、コーティングは貧弱です。
しかし、その部分は、設計通りですので、弱点とは言えません。
写真1は、 銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4 C(APS-C)のMTF曲線です。
絞り開放で、コントラストを表す10本の線は、中央では、0.9ありますが、周囲に行くと劣化します。
解像度を表す30本の線は、中央でも0.6しかありません。周囲に行くと、急速に低下しています。
写真2は、CANON のEF-M32㎜F1.4(APS-C)のMTF曲線です。
絞り開放で、コントラストを表す10本の線は、中央では、0.95あります。コントラストを表す10本の線は、周囲に行っても10㎜までは、0.9以上あります。
解像度を表す30本の線は、中央では0.85あります。周囲に行っても8mmまでは、0.8あります。
EF-M32㎜F1.4は、コントラストと解像度が優れていることがわかります。
写真3は、LEICAの35㎜F1.4(フルサイズ)のMTF曲線です。
MTF曲線は、5本、10本、20本、40本を示しています。
絞り開放で、コントラストを表す10本の線は、中央では、0.9ありますが、周囲に行っても13㎜では、0.8を切ります。
解像度を表す30本の線は、書いてありませんが、20本と40本の中央であると推定します。
解像度を表す30本の線は、中央で0.65あります。周囲に行くと10mmでは、0.5を切っています。
銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4 Cを、CANON のEF-M32㎜F1.4のような日本のカメラメーカーのレンズと比較すると、コントラストと解像度の足りない価格なりの性能の悪いレンズになります。ただし、コントラストと解像度のの不足は、フィルム時代のレンズに比べれば、問題にならないレベルなので、しいて、コントラストと解像度を求めないのであれは、十分実用になるレンズという評価になります。
この評価には、銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4 Cの設計思想が、CANON のEF-M32㎜F1.4のような日本のカメラメーカーのレンズ性能に追いつくことを目標に開発されたという前提があります。
写真4は、銘匠光学 TTArtisan 50mm f/0.95(フルサイズ) のMTF曲線です。
このレンズの価格は12万円で。決して安価なレンズではありません。
しかし、開放の30本のMTF曲線の値は高くありません。
f/0.95のMTF曲線の性能の維持は困難です。
とはいえ、30本の曲線は、中央でも0.5しかありません。
レンズの性能は、MTF曲線だけではきまりません。
しかし、MTF曲線は、物理特性を示しているので、MTF曲線が極端に悪い場合には、基礎的な物理特性を満足していないことになります。
銘匠光学 TTArtisanは、30本の曲線を低く設計した可能性があります。
CANONは、10本のの最低ラインは、MTF曲線の値が、0.6以上であると言います。
30本の曲線の性能は、必須ではありません。
銘匠光学 TTArtisanは、七工匠 7Artisansのエンジニアが、ライカ互換のレンズを作りたくて、ドロップアウトしてつくった会社です。銘匠光学 TTArtisanの設計思想(理想のレンズ)は、ライカのレンズにあると思われます。
MTF曲線でみるライカのレンズの物理特性は、日本製のレンズに劣ります。(注1)日本製のレンズが優れているか、ライカのレンズが優れているかは、個人の判断によります。
ただし、はっきりしていることは、ライカのレンズを使えば、日本製のレンズではとれない写真が撮影できるという点です。この点がなければ、高価なライカのレンズを購入する人はいません。
MTF曲線でみる銘匠光学 TTArtisanのレンズの物理特性は、日本製のレンズに劣ります。
ただし、銘匠光学 TTArtisanのレンズは、日本製のレンズでは撮影できないような写真が撮れることを目標に設計されている可能性があります。
解像度を表す30本の線が、高くなると解像度があがるので、ボケが硬くなります。
ボケを重視するのであれば、解像度を犠牲にする設計もありえます。
写真5と写真6に、 銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4 CとCANON のEF-M32㎜F1.4で撮影した写真を載せました。
銘匠光学 TTArtisanで撮影した写真は、解像度が低いです。
とはいえ、ボケをみれば、どちらが良いかという評価は微妙です。
設計費が、レンズのコストに占める割合は高いので、販売価格とレンズの性能の間には、線形関係はありません。
想定するレンズの販売数を大きく取れれば、レンズの販売価格が抑えることが可能です。
とはいえ、価格を伏せて、レンズを評価できる自信のある目利きは多くないと思います。
筆者は、銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4 Cで撮影した写真が、CANON のEF-M32㎜F1.4で撮影した写真より優れているとは考えません。
しかし、銘匠光学 TTArtisan 35mm f/1.4 Cでは、CANON のEF-M32㎜F1.4では撮影できない写真を撮ることができます。
注1:
LEICAのレンズの一部は、コシナのOEMであるという噂もあります。