(年功型雇用の問題点を述べます)
1)経営判断
ロイター通信は2024年4月5日、米電気自動車(EV)大手テスラが、2025年に生産を始め、2・5万ドル(約380万円)ほどでの発売を目指していた新型の低価格車の開発を中止したと報じました。既に中国メーカーがさらに安いEVを量産しており、価格競争が激化していたことが原因と推定されています。
米ブルームバーグ通信は2024年2月277日、米IT大手のアップルが電気自動車(EV)「アップルカー」の開発中止を決めたと報じました。アップルは2014年頃から、完全自動運転システムを搭載したEVの開発に着手し、これまでに数十億ドル(数千億円)を投じてきました。
同様に、アメリカ企業を買収して、アメリカでの売り上げ増を計画している日本企業も多くあります。
経営を拡大する判断は、比較的単純です。
一方、開発中止のように、経営を縮小する判断は、より複雑です。
いつ撤退すべきかという判断は、将来の展望シナリオの変化に左右されます。
テスラが、新型の低価格車の開発を開始した時に比べて、競合する中国メーカーのEV生産の状況や、電池の入手量、価格などの状況が変化したと思われます。
アップルが「アップルカー」の開発中止を決めた理由には、テスラの技術開発の進展、競合する中国メーカーのEV生産の状況が影響していたはずです。
これらの要因は、複雑です。直感で判断することはできません。
想定される方法は、確率的なリスク指標を計算して、リスク指標がある閾値を越えた場合に、撤退の検討を行なっていると思われます。
野球の戦術にすら、セイバーメトリクスが用いられています。
経営判断に統計的手法が用いられているはずです。
一方、日本企業では、撤退に失敗した例がみられます。
日本企業でも、経営判断に統計的手法が用いられているのでしょうか。
経営判断に、データサイエンスの統計的な手法が用いられるために必要な条件は次の2つです。
第1に、経営幹部が、最低限のデータサイエンスのリテラシーを持っていることが必要です。
第2に、リスク指標のような統計量を計算できる必要があります。
第2の条件は、計算に必要なデータがあることとデータの独立性が高いことに分解できます。
この条件は、ジョブ型雇用の条件です。
ジョブが、ジョブディスクリプションに分解されていて、労働者の雇用が独立していれば、要素分解できますので、リスク指標のような統計量を計算できます。
年功型雇用では、ジョブ、雇用、給与の独立したデータがありませんので、統計量の計算ができません。
2)責任のとり方
国の認証を不正に取得していたダイハツ工業は、2024年4月8日、小型車事業について、トヨタが開発から認証まで責任を持ち、ダイハツがその委託を受け実際の開発を担う体制に変更すると発表しました。
自動車の性能試験の不正は、繰り返されています。不正に対する責任のとり方は、経済学の機会費用と相容れないレベルになっています。
その原因は、ジョブディスクリプションがないため、責任の所在が判別できないためです。
パーティ券問題も、ジョブディスクリプションがないので、責任の所在が判別できません。
3)履修主義
教育の目的は、学習というジョブをこなすことです。
ジョブをこなせば、学力が習得されます。
ジョブをこなさなければ、進級できない習得主義は、ジョブ型雇用に対応しています。
履修主義はポストついて座っていれば、進級できます。
これは、ポストついて座っていれば、給与がもらえる年功型雇用に対応しています。
つまり、日本の教育は、法度制度のミームを洗脳する教育になっています。
法度制度では、ポストの権威が、ジョブに優先します。
そこには、科学はありません。
4)法度制度のミーム
因果モデルで考えれば、問題の原因は、法度制度のミームにあります。
法度制度のミームを取り除く方法が課題です。