(経済学は本音を問題にします)
1)2つの前提
前回、説明しましたように、経済学では、市場原理と経済的に合理的な人間の2つの前提をおきます。
経済的に合理的な人間とは、人間の行動は利益を最大化するように選択されるということです。
2)政治倫理審査会
政治倫理審査会では、問題を指摘された議員が、関与を否定しました。
これは建前の発言です。
経済学では、「人間の行動は利益を最大化するように選択される」という本音を問題にします。
国会議員が、裏金を作ることは、「利益を最大化する」点で、経済合理性のある行動です。
問題を指摘された議員は、関与を否定しましたが、これは、自ら「利益を最大化しない」行動を選択したことになります。
これは、経済学の前提に反します。
仮に、国会議員の給与を全額返納している議員が、関与を否定するのであれば、「利益を最大化しない」行動を選択したという発言にも真実味があります。
しかし、日常、「利益を最大化する行動を選択」している議員が、裏金に関与しないことはあり得ません。
経済学でみれば、裏金問題を解決するには、裏金を作ることが、「利益を最大化する」行動でない条件を揃えることが必要です。
経済学が理解できていれば、関与した、関与しないの議論は、時間の無駄です。
裏金を作ることが、「利益を最大化する」行動でない条件を作ることは簡単です。
例えば、政治資金を管理する事務担当者が逮捕され有罪になった場合には、その年度の政党助成金を全額返納すれば十分です。
日本共産党は、政党助成金を受け取らず、制度の廃止を強く主張しています。
日本共産党が、「政治資金を管理する事務担当者が逮捕され有罪になった場合には、その年度の政党助成金を全額返納する」という法案を提案しないのは不思議に思われます。
経済合理性に反する法律には、実現可能性がありません。
3)損害保険会社の政策保有株
大手損害保険4社は、政策保有株の「ゼロ」にすると宣言しました。
大手損害保険4社は、政策保有株を持っている会社に今まで、天下りをしてきました。
不祥事に対しては、経営幹部が減給するといっています。
しかし、左遷やクビになるとはいっていません。
太平洋戦争では、12月8日の真珠湾攻撃に対して、12月17日には、ハワイの現地司令官であった海軍のキンメル氏と陸軍のショート氏は、調査委員会の調査結果が出るまでという条件で更迭されました。
一方、ミッドウェイ海戦では、作戦後、山本連合艦隊長官やその幕僚の責任は問われず、一航艦も長官南雲忠一、参謀長草鹿龍之介は一航艦の後継である第三艦隊の指揮をそのまま受け継ぎました。しかし、それ以外の一航艦の幕僚は全て降ろされ、また士官も転出させられました。
経営幹部が減給では、不正回避が、「利益を最大化する」行動にはなりません。
経済学の原則では、大手損害保険4社に関連した不正が今後も発生する確率は高いといえます。
政治倫理審査会では、会計事務担当者が有罪になり、国会議員は責任をとりません。
これは、ミッドウェイ海戦と同じ構図です。
ビッグモーター問題でも、顧客の自動車を壊して、修理代金を保険会社に請求していたと言われています。
これは器物破損の犯罪ですが、取り締まられていません。
ビッグモーターの社員も、「利益を最大化する」行動をとったと考えられます。
4)自動車メーカーの検査不正
自動車メーカーの検査不正についても、経営陣は謝罪するという建前の対応に終始しています。
経済学では、不正を行なった社員は、「利益を最大化する」行動をとった結果と考えられます。
経済学では、不正が、「利益を最大化する」行動である限り、不正は再発すると考えます。
5)まとめ
経済学では、「利益を最大化する」行動という本音を問題にします。
建前の議論は、時間の無駄です。
政党は、経済成長を実現して、賃金をあげるといいます。
政党は、DXを進め、SDGsを実現するといいます。
これは、建前です。
利権を使って、中抜き経済で、キャッシュバックを受けることが、「利益を最大化する」行動になっている限り、本音はこちらにあります。
経済的合成性(本音)を欠いた建前の目標は永久に実現することはありません。