(半導体ビジネスについて考えます)
1)半導体の話
ソニーグループ傘下で、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」を手がけるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は2024年2月27日、世界で約900人の人員を削減すると発表しました。
米NVIDIA(エヌビディア)が、2024年2月21日に発表した同年1月期の決算は、売上高が前年同期比2.3倍の609億米ドル(約9兆1573億円、1米ドル=150円)、営業利益が同7倍の330億米ドル(約4兆9622億円)となりました。
NVIDIAの時価総額は約1.67兆米ドル(約251兆1338億円、2024年2月22日時点)と米Amazon. com(アマゾン・ドット・コム)に匹敵しています。
プレイステーションが1994年に出てきた時には、画像のベクトル描画速度がセールスポイントでした。
プレイステーションはCGワークステーションの仕様を縮小したような設計になっており、3Dゲームで最高の性能が発揮されるように作られました。
プレイステーションの500万円クラスのCGワークステーションの描画速度を実現していました。
NVIDEAは、PCの画像処理チップです。これは、PCの拡張画像ボードとして提供され並列処理を可能にします。
Intelも、マルチコアのCPUを作っています。スマホのCPUは、更に、多くの分散処理に対応しています。
しかし、画像処理を並列で行う場合には、コアの数は、1000個を越えます。各段の並列処理が必要になります。
NVIDEAは、当初、チップをPCの拡張ボードに載せて販売していました。
そこでは、ゲーム開発者向けのライブラリーも公開されていました。
NVIDEAは、最初は、ゲームオタクむけの拡張ボードのメーカーでした。
拡張ボードはそれなりに売れて、価格が下がり、更に売れるという正の循環に入ります。
劇的な並列処理能力が注目され、数値計算などのIT分野では、必須のツールになります。
NVIDEAの拡張ボードは、ゲーム用のボードとしては高価ですが、数値計算をするツールとしてはとても安価でした。
これは、CGワークステーションで、ソニーのプレイステーションのCGチップが使えるような状態です。
PCで、プレイステーションのCGチップが使えれば、500万円クラスのCGワークステーションの価格は、50万円以下になります。
これが、AI開発チームが競って、NDIVEAの半導体を購入している理由です。
Google等が公開しているAIのライブラリも、PCに、NDIVEAのボードが入っていることを前提としています。
筆者は、ブログの写真は、darktableで現像していますが、darktableの一部の高性能モジュールは、NDIVEAのボードが必須になっています。最近では、Intelも画像の並列処理半導体を提供していて、消費電力が少ないので、筆者のノートパソコンには、Intelも画像の並列処理半導体が使われています。darktableは、Intelの画像の並列処理半導体にも対応していますが、パフォーマンスが落ちます。
2)マーケットの俯瞰
ソニーが、プレイステーションのCGチップを、PC用のボードで提供していれば、現状は大きく変わっていたと思われます。
最新の情報は確認できていないので、間違いがあるかも知れませんが、富士通もカメラの画像処理チップを提供しています。この画像処理チップも並列処理ができます。しかし、富士通は、画像処理チップをPCの拡張ボードに載せて販売しませんでした。
2023年3月のデジタルカメラ総出荷台数は58万2,527台でした。
レンズ1体型126,535台を除けば、44万台で、1年で、約500万台の市場です。
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、PCの2024年の世界需要は前年比0.4%増の2億3800万台になる見込みです。
タブレットの2023年通期の出荷台数は1億2850万台で、2011年以来でもっとも少ない数字でした。
PCの市場は、カメラの市場の50倍くらいあります。
プレイステーションの2023年度販売台数の見通しは2,100万台前後でした。
2023年の世界のスマートフォン出荷台数は11.7億台です。
ソフトウェアと半導体の価格は、台数によって決まります。
オーダーを整理すれば、以下になります。
スマートフォン(12億)>PC(2億)>タブレット(1億)>プレイステーション(2000万)>カメラ(500万)
タブレットの販売台数は、PCより少ないですが、OSはスマートフォンと共通なので、ソフトウェアとハードウェアに高い互換性があります。
これから、プレイステーションとカメラは、時間の問題でなくなることがわかります。
カメラは、「レンズ、レンズ制御、画像センサー、画像処理IC、画像処理ソフト」で出来ています。
スマホのカメラは、「レンズ制御」と「画像処理」で、単体のカメラを超えています。
「レンズ」と「画像センサー」は、かさばるので、スマートフォン内臓では、性能が落ちます。
この部分をスマートフォンの外部に持ってくることも出来ますが。現時点では、高速の標準バスがありません。
最近のデジタルカメラでは、動画を外部記憶装置に保存できる機種も出てきています。
RAWの動画を保存する場合には、外部のレコーダーを使います。
つまり、高速のバスが使われ始めています。
現時点のバスは、データを流し込むだけで、制御ができませんが、インテリジェントな高速バスが標準化するのは、時間の問題です。
NVIDEAは、並列処理画像ボードのディファクトスタンダードになりました。
次は、スマートフォンか、PCの高速の標準バスのディファクトスタンダードが主戦場になるように思われます。
PCのインタフェースの方が、公開性が高いので、台数は少ないですが、PCが先行するかも知れません。