MTF曲線の旅(2)ボケとF値

F値の論点を整理して置きます。出典は、英語版のWikipediaです。

 

まずは、絞りに関係する経験則を説明します。

晴れ16ルール(Sunny 16 rule)

写真における F 値の使用例は、晴れ 16 ルールです。

 

  晴れた日には、f/16 の絞りとフィルムの ISO 速度の逆数に最も近いシャッター速度を使用すると、ほぼ正しい露出が得られます。

たとえば、ISO 200 フィルム、絞り f/16、シャッター速度1/200 秒を使用します。

 

f/8そしてそこにいてください(f/8 and be there)

 

「f/8そしてそこにいてください」は、最高のテクニックを使用することを心配しすぎるのではなく、写真を撮る機会を捉えることの重要性を示すために写真家によってよく使われる表現です。

 

技術面でのシンプルさは、その場にいて準備ができていることと同じです。ここでは複雑な写真テクニックは必要ありません。ほとんどの被写体に十分な被写界深度を備えた基本的な設定 (ƒ/8) だけです。そして、適切な場所、適切な時間に「そこにいて」、周囲の環境に注意を払い、レンズの前に広がる完璧な瞬間を撮影する準備ができています。

— リッチ・アンダーウッド

 

写真では ƒ/8 は汎用絞りであると考えられています (2009 年に雑誌編集者のリチャード・ストーリーは「決して失敗しない」とコメントしています)。近くで写真を撮るか遠くで写真を撮るかというフィールドでは、絞りを ƒ/8 に設定し (露光のために十分な光が入りますが、写真が漂白されるほどではありません)、レンズを過焦点距離に設定すると、鮮明に焦点が合った深度が得られます。 ƒ/8 により、ほとんどの日中の状況で十分な被写界深度とレンズ速度が得られ、良好で鮮明な露出が得られます。

 

ボケの始まり

以上のように、絞りの関心は、被写界深度の確保と適正露光にありました。

 

「f/8そしてそこにいてください」は、プログラムモードよりも、絞り優先モードで、f/8を使う方が、被写界深度不足になるリスクが小さいという主張とも思われます。

 

ボケが英語になったのは、編集者だったマイク ジョンストンが、1997 年 5 月号と 6 月号にボケに関する 3 つの論文を依頼してからです。

 

浅い被写界深度(背景ボケ)は、低予算の映画制作者が高価な小道具を必要とする場所を隠すために使用する手段として、2000 年代から 2010 年代にかけてより一般的になりました。

2008年に出たCanon EOS 5D Mark II(2100万画素)は、この目的に広く使われました。

 

1999 年に、Minolta /Sony STF 135 mm f/2.8 [T4.5] (STF はスムーズ トランス フォーカスの略) が発売されます。このレンズは、アポダイゼーションフィルターを使用して開口部のエッジを柔らかくすることで、徐々に円が薄くなる滑らかな焦点のぼかされた領域を得ます。

 

アポダイゼーションフィルターを使用したレンズは、2014 年に富士フイルムが、Fujinon XF 56mm F1.2 R APD を、2017年にソニーSony FE 100 mm F2.8 STF GM OSSを発売して、選択が拡がっています。

 

2016年、Apple Inc.は「ポートレートモード」(ボケ味のような効果)で写真を撮影できるiPhone 7 Plusを発売しました。 Samsung のGalaxy Note 8 にも同様の効果があります。これらの携帯電話は両方とも、デュアル カメラを使用してエッジを検出し、画像の「深度マップ」を作成します。携帯電話はそれを使用して、写真の焦点が合っていない部分をぼかします。Google Pixelなどの他の携帯電話は、深度マップの作成に 1 台のカメラと機械学習のみを使用します。

 

このようにボケの製品化は、2014年以降に集中していいます。

 

最近改良されているボケの実現方法には、アポダイゼーションフィルター(NDフィルター)をつかうハードウェア方式と、マルチショットを自動編集するソフトウェア方式があります。

 

筆者は、ソフトウェア方式しか生き残らないと考えます。

 

写真1は、犬とバラの写真です。

 

第1の主題は、犬で、第2の主題は、バラです。

 

このシーンの場合、絞りを絞れば、後方のバラにも焦点が合います。

 

しかし、その場合には、次の問題点があります。

 

第1に、犬のバラの2つの主題のウェイトが同じになってしまいます。

 

できれば、犬の方が、バラより、クリアに目に入るようにしたいです。

 

第2に、絞れば、線が硬くなります。

 

ここでは、F1.4の柔らかい線を重視して、RAW現像でも、シャープネスはかけていません。

 

第3に、バラの葉といったバラの花以外の映したくないものもクリアに見えてしまいます。

 

要するに、犬とバラだけに焦点があうこと、線が柔らかいこと、犬とバラの間では、犬の方がよりクリアに映ることが希望です。

 

これは、ソフトウェアのボケ処理では可能ですが、ハードウェアのボケ処理では不可能です。

 

bingの画像作成を使ってみると、こうした複数焦点、複数ライティングをいとも簡単に実現していることがわかります。

 

もちろん、不自然な画像が多いですが、決まった時には、カメラマンは勝負ができません。

 

写真1

 

 

レンズ速度(lens speed)

 

レンズ速度とは、写真レンズの最大開口径、または最小F 値を指します。

 

薄暗い中での写真撮影、長い望遠レンズでの安定性、特にポートレート写真やスポーツ写真やフォトジャーナリズムにおける被写界深度とボケの制御には、速いレンズ速度が望ましくなります。

 

単焦点」(固定焦点距離) レンズは一般にズーム レンズよりも高速です。

 

35mm フィルム カメラやフルフレーム デジタル カメラでは、最速のレンズは通常50mm 付近の「標準レンズ」の範囲にあります。

 

ここでは、比較的安価で高品質の明るいレンズがいくつか入手可能です。たとえば、キヤノンEF50mmf/1.8 IIまたはニコンAFニッコール50mmf/1.8D は非常に安価ですが、非常に高速で光学的に高く評価されています。

 

特に「標準」焦点距離以外では、レンズの速度もレンズの価格や品質と相関する傾向があります。これは、最大口径が大きいレンズほど、設計、製造精度、特殊コーティング、ガラスの品質に関して細心の注意を払う必要があるためです。開口部が広い場合、球面収差がより顕著になるため、補正する必要があります。したがって、より高速な望遠および広角のレトロフォーカス設計は、はるかに高価になる傾向があります。

 

次回に、非常に高速で光学的に高く評価されているキヤノンEF50mmf/1.8 IIまたはニコンAFニッコール50mmf/1.8DのMFT曲線を見ることにします。