悪の帝国の世界観

1)悪の帝国



ウィキペディア(英語版)は、「悪の帝国」を次のように説明しています。

悪の帝国(Evil empire)とは、物語の主な敵対 者が、世界を支配したり、特定のグループを征服したりすることを目的とした、通常は邪悪な皇帝または皇后によって統治される技術的に進んだ国家である推理小説の比喩(speculative fiction trope)です。彼らは、彼らと戦うために彼らの狡猾さや地下レジスタンスの助けを利用する、より共通の起源を持つ英雄( a hero from more common origins)によって反対されます。

 

有名な例には「スター・ウォーズ」の銀河帝国や「デューン」の銀河帝国が挙げられます。



空想的な悪の帝国は通常、テクノロジーと機械化を多用し、自然との共存を拒否し、代わりに自然を破壊または搾取します。これは多くの場合、世界的な超大国の怠慢によって引き起こされた現代の環境問題の比喩です。

 

「悪の帝国」の概念は、ロナルド・レーガンによって「スター・ウォーズ」から流用され、1983年の悪の帝国演説でソ連を説明するために使用されました。

 

「悪の帝国」には、明確な反対語はありませんが、「善良な国」になると思われます。他の代替案としては、「情け深い共和国(a benevolent republic)」、「徳の高い民主主義(a virtuous democracy.)」が候補になります。

 

要するに、悪の帝国の世界観は、世界は、「悪の帝国(技術的に進んだ国家)」と「善良な国(自然との共生)」から出来ていて、最後には、「善良な国」が勝つというシナリオです。

 

太平洋戦争のときには、「悪の帝国=鬼畜米英(きちくべいえい)」でした。

 

しかし、シナリオは実現せず、「善良な国」である日本は、敗戦しました。

 

戦争の勝敗は、信念の正しさとは関係がありません。

 

戦争の勝敗は、武力の大きさで決まります。

 

「悪の帝国」の「悪の」には、科学的な意味はありません。

 

「悪の」という表現には、自分は善悪の判断がつくという自負があります。

 

その自負が、「悪の帝国」を正当化して、特攻と人権無視を生み出しています。

 

善悪に関わらず、科学的に、人命の損失(=評価関数)を最少化する合理的な作戦を採用していれば、特攻は起きませんでした。

 

これが、アメリカとイギリスがとった方法です。

 

さて、ウクライナ戦争でも、マスコミは、「ロシア=悪の帝国」という報道をしています。

 

この報道は、太平洋戦争の時の「鬼畜米英」を「鬼畜ロシア」に置き換えたものです。

 

ウクライナ戦争で、どちらが勝つかは、戦力で決まります。

 

戦力は、武器と兵力と防御できまります。

 

人口統計がないので、正確な状況は不明ですが、推定された人口統計から考えれば、ウクライナの兵力は、ほぼ枯渇しています。

 

武器も不足しています。イスラエルハマスの紛争で、武器の不足が、大きくなりました。

 

アメリカは、ベトナムでも、アフガニスタンでも、負けています。

 

アメリカは、ベトナムアフガニスタンには、膨大な武器と兵力をつぎ込んでも、勝てませんでした。

 

これは、防御は攻撃より有利になるためです。

 

ロシアは、2014年に、ウクライナの一部のドンパス地方を占領しました。

 

ロシアは、ドンパス地域では、ベトナムアフガニスタンと同じように防御戦ができます。

 

ウクライナが、ドンバス地域を取り戻す可能性は、極めて低いです。

 

2)悪の帝国の2重構造

 

悪の帝国のシナリオには、エビデンスがありません。このシナリオは、科学的に間違った仮説です。

 

間違いの原因を、GISのレイヤー概念を使って説明します。

 

ロシアとウクライナの地図(主題図)を考えてみます。

 

この地図には、ロシアとウクライナの国境を示すレイヤーがあります。

さらに、戦力を示すレイヤーと正義のレイヤーがあります。

 

戦力を示すレイヤーでは、ロシアの方が、ウクライナより、濃い色で塗られています。

 

正義を示すレイヤーでは、ウクライナの方が、ロシアより、濃い色で塗られています。

 

この2つのレイヤーは、独立しています。

 

戦争の勝敗は、戦力のレイヤーで決まり、正義のレイヤーは関係しません。

 

つまり、悪の帝国には、戦力のレイヤーと正義のレイヤーの2重構造があります。

 

戦力のレイヤーを見て戦争をしていれば、特攻は起こりません。

 

特攻を命令する人、特攻に志願する人には、正義のレイヤーが見えていますが、戦力のレイヤーが見えていなかったことになります。

 

ここで、太平洋戦争を例に、悪の帝国の2重構造を考えてみます。

 

日本に住んでいる人(=日本人)には、正義のレイヤーが見えていますが、戦力のレイヤーが見えていませんでした。正義のレイヤーが、戦力のレイヤーを優先していました。



アメリカに住んでいる人(=アメリカ人)には、戦力のレイヤーが見えていて、正義のレイヤーは、重要でないように見えていました。戦力のレイヤーが、正義のレイヤーを優先していました。



戦力のレイヤーと正義のレイヤーは、独立していますが、対象とする国では、戦力と正義のどちらを優先しているかという優先度を表示するレイヤー(優先度レイヤー)を追加することができます。

 

これを使えば、世界を感情(正義)が優先するエリアと科学(戦力)が優先するエリアに塗りわけることができます。

 

科学的には、雨乞いをしても雨が降ることはありません。

 

雨乞いは、世界を感情で見る視点です。

 

感情を科学に優先するエリアの住民に、雨乞いは無駄だといっても、理解されることはありません。

 

これは、一見すると、あり得ないように思われます。

 

しかし、太平洋戦争では、ありえない特攻が大規模に行なわれました。

 

乃木希典児玉源太郎東郷平八郎は、神社のご神体になっています。

 

宗教は、世界を感情で見る視点です。つまり、日本の軍隊は、世界を感情で見る視点に組み込まれていきました。

 

3)書店にて

 

ネットでの書籍の販売が増えて、リアルの書店の店舗は減っていますが、書店も、販売されている書籍によって世界を感情が優先するエリアと科学が優先するエリアに塗りわけることができます。

 

明らかに、科学が優先するエリアは、マイノリティです。

 

これは、日本の社会が、科学ではなく、感情によって動いていることを示しています。