日本の一番のSDGs問題

(SDGsの最大の課題を知っていますか)

 

1)SDGsの基本

 

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

 

SDGsは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。

 

国連の文書の正式名称は「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」です。

 

日本では、2016年の安倍内閣で、「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」設けられています。

 

安倍内閣では、「国際保健の推進」、「難民問題への支援」、「女性の輝く社会」の実現の3課題に、出資しています。




SDGsは持続可能性の概念です。

 

SDGsは、課題に対して出資することではありません。

 

問題を解決することが目的であって、出資が解決に寄与しなければ、方法を変えるべきです。

 

「Transforming Our World」というタイトルは、方法を変える必要性を意味しています。

 

「持続可能」は数学の微分概念に対応します。

 

「持続可能」とは、微係数がマイナスにならないことに対応します。

 

日本の政府の財政と可処分所得は、持続可能ではありません。

 

国債は増え続けています。

 

社会保険料はあがり続けています。

 

可処分所得は減り続けています。

 

年金は下がり続けています。

 

これは、持続可能でないだけでなく、世代間の公平を欠き、法の元の平等に反します。

 

高齢者の方が得票率が高いので、政治家には、高齢者を優先したいモチベーションがあります。

 

だからといって、法の元の平等を無視してよい理由にはなりません。

 

年齢階級別のジニ係数の検討はありますが、世代間のジニ係数は検討されていません。

 

世代間のジニ係数の計算には、ジニ係数の拡張が必要ですが、その必要性を感じない研究者は、ジニ係数の計算ができるだけで、ジニ係数を計算する目的が理解できていないと思われます。

 

ここで問題にしているのは、国債の額、社会保険料率、可処分所得の額、年金の額ではありません。

 

変化率(微係数)です。

 

いったい、いつになったら、国債の増加は止まるのでしょうか。

 

いったい、いつになったら、社会保険料の増加は止まるのでしょうか。

 

いったい、いつになったら、可処分所得の減少は止まるのでしょうか。

 

いったい、いつになったら、年金額の減少は止まるのでしょうか。

 

ボブ・ディランの「風にふかれて」のように、答えを風に聞いてみるわけにはいきません。

 

出来るだけ、早急に、持続可能な世界に戻る必要があります。

 

2)医療の問題

 

医療費は上がり続けています。

 

財務省は、医療費を引き下がる交渉をしています。

 

医師会は、当然、反対しています。

 

しかし、そこには、持続可能な医療や医療支出とは何かという議論はありません。

 

可処分所得の中で、医療費の割合が増加し続けることは、持続可能ではありません。

 

持続可能でない日本経済が破綻した場合、アメリカのように、お金がないので、医療保険に入れず、医院で治療を受けられない人が続出します。

 

Open AIのアルトマン氏は、生成AIが、医師にかわって治療することで、この問題を回避するつもりでいます。

 

医師会は、生成AIのよる医療行為を、医師の失業の原因になるとして反対しています。

しかし、日本経済が破綻して、お金がないので、医院で治療を受けられない人が続出した時には、生成AIのよる医療を禁止することは、人権問題になって、出来なくなると思われます。

 

持続可能な医療や医療支出とは何かは、重要なテーマです。

 

個人病院の治療の多くは、生成AIで代替可能です。

 

一方、大病院のような高度医療ができる個人病院は多くありません。

 

その結果、患者は大病院に集中しています。

 

つまり、病院の間でも、持続可能性に赤ランプがついています。

 

3)まとめ

 

問題点は2つに整理できます。

 

第1に、年金も含めて、可処分所得の持続可能性がなくなっています。

 

その結果、先進国の中で、一人あたりGDPのランキングが下がり続けています。

 

これに対して、年金の切り下げや、増税は、持続可能ではありません。

 

日本のSDGsの最大の課題は、以下にして、可処分所得の減少を止めて、持続可能な経済に戻すかという点にあります。

 

リチャード・カッツ氏は、次の様に指摘しています。

 

2005年から2019年まで、日本の製造業では、労働者1人あたりの生産高は25%上昇したが、報酬(給与プラス福利厚生)は1%の上昇という、ほとんど上がっていないに等しく、労働者は生産高の向上の恩恵を受けられていない。それに対して、韓国の生産高は57%上昇し、労働者の収入も52%上昇した。

 

その結果、2005年の時点では、製造業に限らず、あらゆる業界の韓国の労働者の年収は日本と比較して12%低かったが、2020年には9%高くなっていた(この変化は、日本で低賃金の非正規雇用の人が増えたことが原因ではない。韓国も同じ状況だからだ)。

 

生活水準の向上を伴わない競争力は、本当の競争力ではないのだ。

 

第2に、医療費の問題に見るように、持続可能性が、議論の判断基準になっていません。

 

ある政治学者は、日本では、声が大きい方の政策が採択されるといいます。

 

これは、SDGsを完全に無視しています。

 

日本は、国連に、分担金をそれなりに払っているので、我慢しているけれど、本音は、SDGsでは、日本は、付き合いたくない国だと思われている可能性が高いです。

 

引用文献

 

円安・低成長「日本」とウォン高・高成長「韓国」の差  2022/07/09 東洋経済 リチャード・カッツ

https://toyokeizai.net/articles/-/509838?page=1